貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第16話 小さな一歩


 何かがあるわけでもなく無事?に朝を迎えることが出来た。

 一つだけ気になることがあったが...
 昨日の夜。

 交代で見張りをするということがあったのだが、望んでなくても必然的にアイリスと一緒になる時間があるということだ。

 人間に恨みを持っている少女。詳しい事情は無理には聞かないことにしている。

 誰だって隠したい秘密の1つや2つぐらいあるだろう。
 それに、アイリスの問題は時間をかけて解決していくしかないのが現状だ。
 ノアみたいな存在が近くに居るから、まだ俺への態度も優しい方だと思う。


 まぁ、俺の見張りの時間は最後にしてもらった。
 ノアは反対していたが、女の子を一番辛い時間に置くのは許せなかったので何とか聞いてもらった。

 ノアには

 「分かった。でも無理はしないでね」

 と言われた。
 心配してくれる人? が居るのは本当に嬉しい事だ。



 最初の見張りはノアだった。
 ノアが居なくなってから、すごく気まずい空気が流れる。

 「えーっと。俺は順番が来るまで寝てるから、何かあったら読んでくれ」

 気まずい空気に負けて逃げようとすると、アイリスが口を開いた。

 「あ、あの......えっと僕は人間が嫌いです。大嫌いです」

 「お、おう」

 心にグサッと槍が刺さるようなダメージをくらう。女の子に言われるとダメージがでかい言葉だ。

 「怖いです。また、あんな目にあうかもしれないと、考えてしまうんです」

 アイリスは震えている。俺、人間と話すだけでも辛い記憶が蘇る。
 それほどまでに、強く、深く残る傷。
 ...落ち着くまでは、しばらく関わらない方がいいかな?

 「でも、あなたが僕を助けてくれたってノアさんから聞きました。それに、その時の反動で二日間も寝てたって」

 「そうだな」

 「なんで、なんでてすか?僕の為に命を張って...」

 「助けたかった。それだけだ」

 「へ?」

 「目の前に助けるべき人がいる。そして、俺には助けられる程の力がある。なら答えは一つしか無いだろ」

 「他人のために自分の命を投げ捨てるなんて馬鹿げてる」

 「誰かを助けられるなら、俺は自分の命を賭ける。例えそれで、死ぬことになっても、俺は後悔はしない」

 「!!なんで、そこまで...」

 「誰かが苦しむ世界は間違ってる。そう思うんだ。みんなが笑って幸せに暮らせる、そんな世界が見たいんだ。俺がやっていることは、世界を変えられる程の大きなものじゃない。だけど、少しずつでも変えていきたい。目に入るものを助ける。俺には、そんな事しか出来ないけどな」

 「...そう、ですか。あなたは、他の人間とは違うみたいですね。あなたの夢は、僕は好きですよ。あなたなら、もしかしたら...」

 「まぁ、ゆっくり時間をかけて解決すればいいさ」

 ここから後は、アイリスが考えて行動する。自由に生きればいい。
 さて、今度こそ寝るかな。

 「ま、待って。あ、あの、その、まだお礼を言ってなかった」

 「お礼?」

 「ありがとう。僕を助けてくれて。僕は、ユ...ユウとなら大丈夫みたい。僕は、ユウを少し信じてみる事にするよ」

 「いきなり呼び捨てか...それに、少しって...まぁ、いいか」

 少しはアイリスとの距離が近くなった気がする。
 少しでも、大きな一歩だ。


 すると、

 「アイリスちゃん。交代してくれる?」

 ノアが帰って来た。

 「は、はい。今行きます」

 走っていくアイリスを見て思う。
 例え、小さくても、一歩踏み出す勇気がある。少しでも前に進んで行けばいつかは届く。
 今は、見守ってやろう。その背中が大きく成長するまで。


 「ユ~ウ~。随分アイリスちゃんと仲良くなったんだね~。私が見てないときに何をしてたのかな~」

 あー、これはヤバイやつだ。笑ってるけど顔が笑ってない。
 何を言っても駄目だなこれは。

 「アイリスちゃんのあんなに嬉しそうな顔。始めて見たよ。...羨ましい」

 「え?何だって?」

 「何でもない。でも、良かった。ずっと考え込んでいたみたいだったから」

 「そうか」

 「これからもアイリスちゃんと仲良くしてあげてね」

 「もちろんだ」

 「...私ともっと仲良くしてもいいんだよ」

 ドキッとする。そうゆうことは、あまり言わないでくれると助かるのだが...俺の心臓が持ちそうに無いから。

 「はいはい、もう俺は寝るからな」

 「構ってくれないなら、襲っちゃうぞ~」

 「ははは、冗談はやめてくれ」

 「ふふっ。お休みなさい」

 「あぁ、お休み」

 そして、眠りについたのだが。
 本当に俺の布団に入ってきたりして眠れなかった。
 美少女にからかわれるのは、なんと言うか複雑な気持ちになる。
 嬉しいには嬉しいけど、今は、本当に眠いので迷惑だ。


 そんな事をしていると

 「交代お願いしま......えっと...」

 交代に来たアイリスに見られる。
 あー、完全に誤解されたな。

 「そ、そういうのは....その」

 プシューーっと、アイリスの頭がオーバーヒートした音がした。
 そして、そのまま倒れてしまった。

 あれ?このままだと誤解が解けないじゃないか。
 あ、終わったな。明日から気まずくなるな。

 「ユウ、私はアイリスちゃんを運んでるから。見張りをお願い」

 「はぁー、分かった」




 と、こんな風な事があった。

 今の状態は言わなくても分かるだろうが...避けられている。
 ノアも一緒になって楽しんでいるのだが...

 くそっ、いつか仕返ししてやるからな。



 そして、今日も街を目指して歩き始める。

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