貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第17話 代償


 普通に道を歩いているだけでも、魔物というものは出てくる。
 とは言っても、スライムみたいな弱い魔物をポツポツと見かけるだけ...暇だな。

 昨日の事もあって、アイリスからはちょっと距離を離されている。

 アイリスから

 「近づかないで下さい。そ、その、ノアさんみたいに可愛くて小さい子が好きなんですよね。僕の身の危険を感じるので離れてください」

 とか言われた。
 昨日の事を訂正しようとしても、どんどん離れていってしまうので仕方なく、ノアに頼んでおいた....はずなんだが。

 さらに悪化した。
 アイリスがノアの近くから離れなくなった。これでは、どうすることもできない。

 心が折れそうです。


 そんな何でもないような平和な時間が続く。

 しばらくして、建物が見えてくる。
 そこは、街というよりは村に近い。そんな規模の建物が見えた。

 「今日は、あそこに泊まっていくことにしよう」

 「はーい」

 「...さぁノアさん早く行きましょう」

 「ノア、アイリスにも『偽装』のスキルを使ってやってくれ。そうじゃないとアイリスが大変だからな」

 「ふふっ。分かってるよ。アイリスちゃん、ユウはやっぱり優しいよね~」

 「......」

 アイリスはなんか複雑な顔をしているが、まぁいいか。


 そして、その村に踏み入れる。

 遠くから見ておかしいと思っていたが...

 「ねぇ、ユウ。これって...」

 俺達が見た光景。それは、誰もいない村。
 人が住んでいた後はあるのに誰もいない。

 そう、たぶんこれは。

 「私の村と同じ...魔物の襲撃」

 「そうだな...しかも、建物が傷ついてない所を見ると、相当力の強い魔物」

 人が抵抗できないほどの力の強さ。人だけが居なくなったこの村を見てそう思う。

 昔の事を思い出したのか、ノアは少し震えている。

 「大丈夫だ。ノアはもう一人じゃないんだから」

 いつものように頭を撫でて落ち着かせる。

 「うん、ありがとう。もう大丈夫。それにユウも落ち着いてね」

 「...分かってる」

 本当は、心を読む能力があるんじゃないかと疑ってしまうぐらいノアは、俺の考えていることが分かるようだ。

 だけど、見捨てることが出来ない。
 まだ、生きてる人がいるかもしれない。助けを求めている人がいるかもしれない。そう思うと、今すぐにでも動きたい。

 だけど、今は落ち着こう。
 情報を集めるのが先か...

 そんな事を考えていると、アイリスが

 「...僕は、分かる。これは、僕と同じ魔族がやった事だ」

 「...何でそんなことが分かったんだ?」

 何か心当たりがあるのだろうか?

 「僕と同じような魔力を感じたんだ...それに、昔...いや何でもない」

 「アイリスと同じ...か」

 「でも...僕は、信じたくない。だけど、確かめなくちゃならないと思う。例え、どんな真実でも」

 よし、それだけの覚悟かあれば大丈夫だろう。

 「ある程度の方向なら分かるので、僕についてきてください」

 「あぁ、分かった。だけど、無理はするなよ」

 「...やっぱり優しいですね...」


 さて、行くとしようか。

 例えそこにどんな事があったとしても、どんなに強い魔物が居たとしても、俺は....




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 アイリスについていくと、洞窟についた。
 森の中の薄暗い洞窟。明らかに人が近づかないような雰囲気のある所。

 「ここから...この先に居ると思います。気を付けて下さい」

 洞窟の中に入る。
 不気味にも長く続く一本道。薄暗く、先がよく見えない。

 注意しながらも、先に進んでいく。


 そして、あり得ない光景が目に入る。


 人の形をした何かが何かを食べている。
 何か......それは、人だった。

 グチャ、グチャ、グチャ

 俺は、何をしているのか理解できずに立ち尽くしていた。
 嫌な音が耳に入る。
 だけど、動かない。体が、心が、この光景を拒絶している。

 グチャ、グチャ......


 「はぁ....はぁ...」

 心が壊れそうになる。

 「...ウ...ユウ!!しっかりして」

 聞き慣れたいつもの声が頭に響く。

 「...ノア」

 「早く、アレを止めないと」

 「......」

 うまく考えが纏まらない。
 人が目の前で死んだ...俺は、助けられなかった。
 俺の力が足りなかったから...助けられなかった?俺のせいで死んだ?俺が、俺が、殺した?

 「はぁ...俺の...あぁぁぁぁぁ」


 全てを壊す。体が動く限り。

 魔物を全力で殴る。殴る。殴る。
 形すらなくなっても、殴る。殴り続ける。



 『何の為の力なんだ?人を守るための力じゃ無かったのか?そう誓ったんじゃ無かったのか?』

 誰かの声が頭に響く。

 「うるさい。黙れ」

 『何も守れないじゃないか。お前の大切な人も守れない」

 「やめろ」

 「ユウ!!しっかりして!!」

 背中に何かの感覚が来る。

 「やめろ」

 俺は、それを振り払った。
 そして、少し遅れて気が付く。

 あれ?俺は今なにを?

 血塗れになった自分の手を見る。そして...俺が何かを振り払った方向を見る。


 「は...あ...ノア...」


 そして、見付ける。

 大切な人の.....守るべき人の無惨な姿を...

「貴方に贈る世界の最後に」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く