貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第10話 宿屋での出来事

 結果から言うと、宿屋には泊まることが出来た。それは、リューナさんこと受付の人が教えてくれたからだ。
 最後には、

 「あなた達が、野宿したと聞いたら、ギルドマスターが怒りそうですから」

 と、少し不思議なことを言っていたが。
 取り敢えずいい人で良かった。

 受付の人のオススメの店なだけあって...いい店...だった。店の店員が普通なら。



 少し時間を遡る。


 受付の人に紹介してもらった宿屋まで来た。見た目は普通の宿屋。ゲームで出てくるような見た目のまんまだった。

 「意外としっかりしてそうだな」

 「うん、これなら安心かも。じゃあユウ。行こう」

 「ああ」

 ギィィーっと少し重い扉を開けると。

 「いらっしゃいませ。こんな遅くに珍しいですね。旅の方ですか?...可愛い彼女さんですね」

 と、しっかりとした態度で俺達を迎えてくれる人...子供が居た。

 「旅の人とは違うかな。それより、まだ部屋は空いてる?」

 あえて、聞こえなかった振りをする。俺の後ろの吸血鬼は、「彼女...ふふっ」と嬉しそうに笑っているが...無視だ。

 「えーっと今は、部屋がひとつしか空いてないんですそれでもいいなら」

 ...どうするか。そう考えていると...

 「私は、いいよ。...ユウと二人なら」

 「....それじゃあ、その部屋に泊まります」

 「それでは、案内します」

 その女の子に付いていくと、二階にある一般的な部屋に着いた。
 見た目も中身も普通の一人・・部屋。

 この中で二人で生活しなければならない。
 ...他に部屋が無いなら仕方ないか。

 「私は戻ります。それでは...お楽しみ下さい!!」

 「「...えっ?」」

 俺とノアの疑問の声が被る。

 パタン、とドアが閉まる。


 ...なんか変な空気になってしまった。

 すると、ノアが俺の近くに来た。そして、耳元で囁く。

 「我慢...しなくてもいいんだよ」

 「何言ってんだ、ノア。そんな事...」

 「周りに人は居ないよ...だから、大丈夫」

 ドクッドクッと心臓の鼓動が速くなる。

 「ここなら、血を吸っても大丈夫だから」

 「え?」

 「え?」

 俺とノアは同じ反応をする。
 あぁ、血の話だったのか。そう思うとなんか虚しくなった。

 「あれだけの力を使ったから疲れてるかなと思ったんだけど」

 確かに体は重く、辛い。実際、今すぐにでもベットに飛び込んで眠りたい。
 それに、力を解放してから、 喉が渇いてしかたない。それは、水をどれだけ飲んでも治らなかった。

 森の中の時よりは弱いけど、血を吸いたいとそう思っていた。

 「よく、分かったな」

 「ふふん、私はユウ考えていることなら、だいたい分かるもん」

 目の前で動いているこの生物は、本当に可愛いな。

 「私は...心の準備...出来てる」

 そう言ってノアは、首筋を出す。
 前は勢いでやってしまったけど、普通の状態でやると思うと...なんか緊張する。

 躊躇いながらも、その綺麗な首筋に噛みつく。

 「んっ」

 ノアは、ピクッと反応する。
 歯が肌に刺さっていき、血が溢れ出す。


    ゴクン


 体温の残っている血が喉を通っていくのが分かる。さっきまで感じていた喉の渇きが消える。
 体全体に広がっていって、気だるさや疲れが吹っ飛ぶ。

 「んっ...はっ...あっ...」

 傷口を舐めて刺激すると血が出てくる。
 もっと、もっと血を飲みたい。



   コンコンコン
 不意に部屋の扉が開く。

 「失礼します。水を...失礼しましたー」

 「あ、待ってこれは...」


  バタン


 絶対に誤解されたなこれは。

 「はぁ...はぁ...ユウ、もう大丈夫なの?」

 「色々大丈夫じゃないけど、大丈夫だよ」

 「?そう、良かった♪」

 そう言って寄りかかってくる。

 「ありがとう、助かった」

 「うん」

 感謝の意味も込めてノアの頭を撫でる。

 しばらくすると、スゥースゥーと小さい寝息が聞こえてきた。
 今日は色々あったから疲れたんだろうか?寝顔を見ていると俺も眠くなってきた。


 ノアをベットに移動させて、俺は床で寝ようと準備する。

 そんな時、

 「ユウ...私を見つけてくれて...ありがとう」

 ベットの方を見てもノアは寝ている。なんだ、寝言か。
 ...さて、俺も寝るとするか。

 「おやすみ、ノア」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 意識が浮き上がってくる。

 「もう、朝か」

 何かいい夢を見てた気がするが忘れてしまった。まぁいいか。
 ベットの方を見ると、まだ寝ているノアが居た。
 銀色の綺麗な髪、細い手足、白い肌、少しだけ見えるかわいい八重歯。

 その寝顔を見ていると、ゆっくりと目が開く。

 「おはよう、ノア」

 「...ん、ユウ、おはよう」

 ノアは、まだ眠たそうに目を擦っている。そしてまた、寝ようとしている。

 「ほら、起きろ。取り敢えず今日は、ギルドに行くぞ」

 「ん~、吸血鬼は朝に弱いの~」


 そんな平和なやり取りをして、準備ができてから下の階に降りた。
 すると、昨日の女の子がいて目があってしまった。

 「えっと...昨日はお楽しみでしたね」

 そうだ、勘違いしたままだった。

 「あれは、誤解なんだ」

 「さすがに、本当にやるとは思っていなかったのでビックリしましたよ、居なくなった瞬間に手を出すなんて...」

 あーなんか面倒臭くなってきた。
 よし、このまま誤解させたままこの宿を出よう。そしてもうここには来ないことにする。

 「えーっと、俺は用事があるのでもう行くことにします」

 1日の代金を払い、この宿屋から出行こうとして気付く。

 あれ?この宿屋の中で他の人とは会わなかった。
 おかしくないか?部屋を借りるときには、空いてる部屋がひとつしか無いと言われて泊まった筈なのに、他の人が居ない。

 取り敢えず聞いてみるか

 「そういえば、何で他の客が居ないんだ?」

 「それは、他の客が居ないからですよ。なにいってるんですか」

 「...は?ちょっと説明してくれるかな?」

 なんか、意味わかん無い事を言っているのだが。

 「だから、この宿屋にはあなた達しか居ないからですよ」

 ...は?

 「若い男女が宿屋に泊まるんですよ!!だから、私が気を使ってあげたんですよ。私って親切だから」

 あっ、駄目だこいつ。人の話を聞かないタイプだ。
 早くここから出よう。迅速に。

 「お気遣いありがとうございました。ここには、今後一切関わりません。それでは」

 俺は、満面の笑顔でそう言って宿屋から出た。

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