貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

その後のお話し 2


 バキッバキッと何かが崩れる音がして目が覚めた。
 壁に空いている少しの隙間から外を見ると...赤い世界が広がっていた。



 魔物だ...何故か分かった。



 薄暗い部屋からすぐに出る。
 そして、両親の姿を探す。

 「お父さん、お母さん」

 出来る限りの声で叫ぶ。

 「ノア!!...大丈夫。すぐに解決するから」

 そう言って抱き締めてくれるお母さんは少し震えていた。



 結果的に魔物は、倒されて火もすぐに消された。
 だけど、住んでいる家は燃えてしまった。

 もう、隠れることが出来ない。

 すでに、村の人には見つかってしまっている。

 逃げられない。


 人が集まってくる。
 周りから、「どうして吸血鬼が」「こいつが村を...」「なんで今まで隠していた!!」「化け物だ」「村が危険になったのは...」「消えろ!化け物!」

 そんな声が聞こえる。
 人からこんな目で見られたのは初めてだった。人間は、こんな恐い目で人を見ることができるの?

 恐怖、憎悪、色々な感情がぶつかってくる。


 そこに、一人の年寄りが現れる。
 白髪が生えていて、杖を付いて歩いている。
 だけど、その目には強い感情が籠っていた。

 「今回の災害は、この化け物が村にいたからじゃ、だから災いがこの村に降りかかった。この化け物は、村で殺す」

 「待って下さい、村長。この子は何も...」

 「黙れ!!居るだけで災いが起こったんじゃ、村の者も何名か殺された。この決定は覆らない。こんな化け物なんかが村に居るからいけないんじゃ」


 そう言って行ってしまった。



 この後、何度も私の両親は、村長に言ったけど取り合ってくれなかった。



 そして、私は今日殺される。
 焼けた家が目にはいる。
 魔物に荒らされた大地が見える。

 そして、目の前に剣を持った村の人が構えている。

 「嫌、いやいやいやいやいやいやーーー」

 恐怖で頭がおかしくなる。押し潰されそうになる。
 体が震えて止まらない。

 助けて...誰か、助けてよ。

 無慈悲にも剣が降り下ろされる。
 私の体に剣がなぞる感覚がある。

 嫌な感覚が体を通り抜ける。

 「はっ、がっ、いっ痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 血が溢れだして、私の体を真っ赤に染める。
 足元には、血だまりができ、体の力が抜けていく。
 
 でも、吸血鬼の再生能力なのかすぐに痛みは引いていく。
 傷がすぐに治り、元通りの姿に戻る。

 でも...

 「こ、この化け物がーーー」

 剣を持った村の人が何度も私の体を刺す。
 胸を貫かれ、足を切られ。

 口の中に血の味が広がっていく。

 「痛い痛い、もう、やめて。痛い痛い痛い、なんで...」

 何分、何時間、と続いたように感じた。
 もう、痛みを感じないぐらいに麻痺していた。

 たすけて...たすけてよ....ユウ

 「はぁはぁ、化け物が」

 「もういい、何度やっても無駄なようじゃ。この化け物は封印するのじゃ、あの森まで連れていけ」

 「わ、分かりました」

 そんな声が聞こえて私の意識は消えた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ここは、どこ? 森の中?何でこんなところに居るんだろ?早く村に戻らないと。お父さんとお母さんが心配しちゃう。

 知らない森の中に来てしまった。早く出ないと。

 しばらく歩いていると、遺跡?みたいなところに着いてしまった何だろうここ?

 綺麗に石が並べられていて、神秘的な雰囲気のある場所だった。

 少し調べていると...


    ドスン...ドスン...


 そんな音がした。
 地震?この世界で地震ってあるのかな?


     ドスン...ドスン...


 違う、これは何かの足音?


    ドスンドスン


 そして、見上げると岩の塊ゴーレムがいた。腕を振り上げているソレを見た。

 「え?」

    ドカァァァァァン


 私は、それに潰された。何度も何度も。


 しばらくして意識が戻る。
 そして少しの間、忘れていた記憶も戻ってきた。

 「う...どうして?どうしてなの?...私が、私が化け物だから?」

 問いかけても答えは、帰ってこない。


 「ユウ...ユウ、私をいつもみたいに助けてよ。ここから、私を、助けて...よ...ユウ...」

 虚しく響くだけの声が森の中に消えていく...







 ...どれぐらい泣いていたのだろうか?何もする気になれない。ぼーっと時間が過ぎていく。


 「ユウ....そうだ、ユウが居る。この世界で会うことが出来るはず」


 生きる希望が持てる。意味がある。
 私は、ユウに会える世界に転生したんだ。絶対に会える。そう思うとなんだかやる気が出てきた。

 よし、ユウに会うまで頑張ろう。












 そう思えていた、最初までは....

 あの決意から10年がたった。
 誰も、誰もこの森に来なかった。
 いつもと変わらない景色。

 ただただ時間が過ぎていく。
 でもまだ、頑張れた。

 毎日、ユウが助けに来てくれる想像をしながら、その時を待っていた。







 あの決意から50年がたった...
 心に焦りが生まれて来る。
 時間の感覚もおかしくなってくる。

 誰も、誰も来ない。このまま私は、一生この森から出られないのだろうか?
 怖い、怖いよ。助けて...
 ユウ...早く来て...








 あの決意から100年がたった。
 もう、諦めていた。100年もたった、100年もたってしまった。人間ならもう生きられないだろう。


 ユウに出会うことができる世界...今まで考えないようにしていたことが頭を埋め尽くす。



 もし、私がこの森から出たときに、出会うかもしれない。ユウの死体と......そんな事を考えて泣いてしまう。



 最近は、そんな事をばかりだ。夢でもその事を見てしまう。

 私は今日も、森の中でうずくまる。




 この森から出たくない....









   ドカァァァァァン





 遠くでそんな音がした。
 この森では、時々あることだけど、今日は何となく音のする方へ歩いていくことにした。


 しばらくすると、前の方から人間の匂いがした。
 近くの木に隠れて通りすぎるのを待つことにした。

 人間が近くまで近づいてきている。




    あれ?



 何かを感じてその人間をよく見てみると...




 記憶の奥底に眠っている、あのユウと同じ....



 何故か、涙が溢れてくる。体が熱く、熱くなってくる。

 「ユウ...ユウ、」

 今すぐにでも飛び出して抱き付きたい。

 私、私は、逢坂紗也だと伝えたい。

 やっと会えた。
 溢れだすこの気持ちを伝えたい。

 なんかいっぱい言いたいことがありすぎて混乱してきた。
 そんな事を考えていると、ユウの前にスライムが出てきていた。
 あっ、あのスライムは、危ない。そう思って飛び出そうとしたけど遅かった。スライムはユウに見えない速度でぶつかっていた。
 目をそらしてしまう。

 その時、

 「ぴぎゅ」

 「ぴぎゅ」

 と間の抜けた声がした。

 「もう、やめて下さい...スライムさん」

 とそんな声も聞こえた。声を出して笑いそうになった。けと心の中で何とか押さえる。
 スライムに謝る人なんて普通はいないのに。
 すると、今度は深呼吸をし始めた。どうやら真剣な様子で。



 「ステータスオープン!!」



 今度は、ちょっと耐えられそうに無いかも知れない。

 「....うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 悶絶しているユウを見て吹き出してしまう。

 「...ぷっ...くふふっ...」

 「誰だ?」

 そして、ユウが私を見つける。


 それが、この世界でのユウとの出会いだった。







 まぁそれからは色々あったけど、まだ本当の名前は、見せて上げないことにした。


 本当の私を、見つけてくれるまで...




 「そうだ、君の名前は?」

 「...ノア、私は、ノアって言うの」

 「これからよろしく...ノア」

 「よろしくね...ユウ」



 私は、今までで最高の笑顔で答えた。


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