貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第9話 転生者の力

 色々とあってギルドの地下一階、闘技場に来ていた。

 「さて、覚悟はできてるか?キサラギ・ユウ」

 「そっちこそ、大丈夫か?」

 この街のギルドマスター、見た目は子供だが『転生者』。どんなチートを持っているか分からない状態だ。相手も同じ状態だが。

 「それでは、両者共離れてください。」

 今回の試合を監視してくれる受付の人。その合図で始まる。

 「相手を殺すことを禁止として、戦闘不能になるか、どちらかが負けを認めるまでというルールです。それでは......始め!!」

 さて、楽しい試合の始まりだ。
 力を解放する。

 「キサラギ・ユウ。お前は、データではランクEでレベル10だったそうだが」

 「そうだが」

 「それじゃあ私があまりにも優位過ぎるので、私の能力の一部を教えてやろう」

 「なかなか自信があるみたいだな」

 「弱ければギルドマスターなんかになれないからな。そして、私の能力は『相手の能力を無効化する』と言うものだ。魔法でも何でも撃ってみろ私には効かないからな」

 そう言って俺の目の前まで迫る。俺はその攻撃を本気・・でかわす。

 「...ちょっとその能力はやばいな」

 割と本当にやばい。『能力の無効化』と言うことは、つまり、俺の能力『ステータス調整』が消えるということだ。
 無効化された瞬間にいつも抑えている力が解放される。100%の力を使わないといけない状態になってしまう。

 それはまずい。ものすごくまずい。

 「ほう、ランクEなのによく避けられたな。素早さだけステータスが高いのか?でも、逃げてるだけじゃ私に勝てないぞ」

 「くそっ」

 相手の能力の発動条件が分からない今、触られるのはまずい。そう判断して、魔法を撃ってみる。

 『フレア』

 盗賊に使ったものより一回り小さい炎の塊を出す。

 「えっ!?『フレア』はそんなに大きくないはず。...でも使った魔法に嘘は無い。どういうこと」

 炎の塊をギルドマスターに向けて放つ。まず、本当に能力の無効化が出来るかを調べないと。

 「くらえ」

 「無駄だ私には効かない」

 ギルドマスターが触れた《・・・》瞬間に消えた。

 つまり、触らないと発動しない能力。

 そして、もうひとつ。

 「休んでる暇は無いぞ、ギルドマスター」

 俺は、さっきの『フレア』を10個出す。

 「これならどうだ」

 「ほう、数で押しきる...か。悪くないな、だけどそれは、相手が私以外の時だけだ」

 10個全ての『フレア』が消される。
 ギルドマスターは余裕そうにこちらに歩いていくる。

 「なかなかやるじゃないか。魔法の威力も高い。素早さも高い。お前、ステータスの『偽装』でもしていたのか?」

 「いや、『偽装』のスキルはあいにく持ってないんだ」

 「ふっ、本当みたいだな。どうだ、負けを認めるか?お前は強い。だけど私との相性が悪かったな」

 「だけどまだ、諦める気は無いんだよな」

 「...そうか、じゃあ少し眠っていろ」

 「っ!!」

 さっきよりも明らかに早いスピードで向かってきた為、反応が遅れた。

 やばい

 「私の能力は、二つだけじゃないんだよ」

 ギルドマスターの拳が俺の腹に触れる。

   瞬間

 力があり得ないほど沸きだす。世界が遅くなって見える。

 ...だけど


   バキッバキ

 腹の辺りでどこかで聞いた音がした。


 ギルドマスターの腕の肘から先がぐちゃぐちゃになっている。

 「はっ....ぐっ...っ...」

    バタッ

 痛みによってか、ギルドマスターは気を失って倒れた。

 「...しょ、勝負あり。今すぐに治療します、ギルドマスター」

 受付の人が魔法を使うとすぐに、ギルドマスターの腕が直ってきた。細かい傷が消え、折れた骨が治り、もとに戻る。

 「はぁ、はぁ、また...またあの時と同じ...」

 頭が回らない。あの時の光景がフラッシュバックする。

 ...人に能力を...使ってしまった。

 手が震える。

 ...こんな力があるから....

 背中に誰かが抱きつく感覚があった。

 「ユウ、大丈夫だから」

 「ノア...でも」

 「私は気にしない」

 「はぁー.....ふー、ノアありがとう、少し落ち着いた」

 「んっ」

 不思議と手の震えも止まっている。
 倒れていたギルドマスターの方を見ると、もう完全に治っていた。

 「私は、負けたみたいだな。お前がどんな能力を使ったのか分からない。でも、負けた。それは認める」

 「さっきは悪かった。右手はもう大丈夫なのか?」

 「リューナは回復魔法のエキスパートだからな」

 そう言って受付の人を見る。
 この人リューナって名前なんだ。

 「本当にごめん。あんなことをするつもりじゃなかったんだ」

 謝らないといけない、そうしないと何かが崩れそうだから。

 「そ、そんなに謝らないでくれ。本当にそう思っていることは分かっている。それに、私の実力が足りなかった。いや、私は能力に頼りすぎていた。それをお前は気づかせてくれた。ありがとう」

 彼女は笑っていた。その笑顔は、今までのギルドマスターとしての顔ではなく、年相応の無邪気な笑顔だった。

 「そんな可愛い顔も出来るんだな」

 「?、キサラギ・ユウ何か言ったか?」

 「何でもないぞ」

 「...嘘だな」

 あ、忘れてた。嘘が分かる能力があったんだった。

 「何て言ったんだ?私に教えろ。もちろん、誤魔化そうとしても無駄だからな」

 はぁー仕方ない、本当の事を話すか。

 「えーっと、そんな可愛い顔も出来るんだなって言ったんだ」

 「またそんな嘘を...嘘じゃない...えっ!!そ、そんな事」

 「どうした?顔が赤いぞ」

 そう言って近づいてみると。

 「だ、大丈夫だ何でもない。それでは、私は仕事に戻る。...そうだ、何か困ったことがあったら言ってくれ力になる。勝負に負けたからな」

 「あぁ、ありがとう」

 ギルドマスターは上の階に戻っていった。


 「さてと、それじゃあ行くか。ノア」

 「うん」



 あ、まずは宿屋を探さないと...もう外が暗くなってきてるんだが...今日はベットで寝れるのか?

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