えっ!?俺運命変えちゃった?~十三番目の円卓の騎士~

ノベルバユーザー150902

頼まれました


「レイナ教官報告したいことがあるのですがお時間宜しいでしょうか?」
「今忙しいので後にしてくれますか?」
「つれないなぁー上等なワインを持ってきたっていうのに。少し休憩にしないか?」
「はぁー分かったわよ。そこ片づけるから待ってて」

 レイナは書類が散乱しているテーブルを片付け、棚からワイングラスを二つ取り出しすとカイルに手渡した。
 そのワイングラスに持ってきたワインを注ぎ込み返した。

「これ美味しいわね」
「だろう僕のお気に入りなんだよね」
「で、いきなりこんなワイン持ってきてどういう風の吹き回し?」
「同じ釜の飯を食った仲だろ、昔話に話を咲かせちゃ悪いのかよ」
「まぁそんな仲だって言うならなにも相談せずに2年前革命時の全ての手柄を私に押し付けて魔獣戦線に参加するって出ていったのはどういうことか説明してくれるかな」
「すまない。革命時の影響で魔力が完全に無くなった過去の僕はアーサー王が造り上げる新たな時代には不必要かと思ってな。それなら必要とされる人間に譲るべきだと思ったんだ」
「でも貴方のことだから魔力が無くてもそれ相応の地位を与えられたんじゃないの?」
「剣の腕が買われ剣術学院の理事を勤めないかと打診もあったよ。でもね当時の僕のプライドがそれを許さなかったんだ。魔力を完全に失った只の剣士そんな男にこの世界は容赦なく理不尽に襲いかかってくるのだろうといつの間にかそんな考えに支配され僕は死地を求めるようになった」
「その結果が魔獣戦線?」
「そうだよ。でもそこは地獄のようだったまだその時はアーサー王が新設した魔獣戦線は出来たばかりで物資は少なく人材も足りなく余り機能していたとは言い難かった。それなのにそこで暮らす民達は魔獣や魔物に怯えながらも必死に今を生き抜こうとしていた。そんな民衆を見ていると死のうとしたことは馬鹿げた考えだったと思い知らされ、あの地獄に食らいついているうちにいつしか『魔獣殺し』なんて異名がついたってわけさ」

 じっくり話を聞いていたレイナの目から自然と涙が零れ落ち彼女はそれを着ていた上着で拭いとったがどんどん溢れてきて止まることを知らないようだった。

「ごめんなさい、貴方が苦しんでいたのに私は……貴方に何もしてやれなかった。それどころか貴方の行動に深い憤りのようなものを感じていたなんてひどい女ね私わ」
「誤解しないでくれ。あの2年間があったから今こうして僕はここにいる。君の隣にいるんだよ」
「ありがとうカイル、願わくば私ももう一度貴方と一緒に戦いたいと思っていたもの」
「今度は君の2年間を教えてくれないか?」
「いいわ、教えてあげる」

 この夜、時折レイナの教官室からは普段はお堅いことで有名なレイナの笑い声が聞こえたのを砦で警備の仕事にあたっていた騎士の幾人かが確認しており翌日誰が彼女をわらかしていたのかが騎士団内で話題になっていたのはレイナの知り得ぬところであった。



「料理長彼は何を作っているんですか?」
「分からない。全く検討もつかない」

 俺は砦の厨房を借りてうどんを作っていた。

「出来た」

 うどんが完成すると、今まで気になり厨房の端っこから俺の作業をじっと覗いてみていたスタッフ達が我先に見たいという勢いで群がってきた。

「一口味見しても宜しいですか?」
「こちらをどうぞ厨房を使わせて頂いたお礼です」

 この言葉に裏は無いのだがうどんを作っている最中の料理人からの食べたいと訴えている目線が気になってしまい予定した量よりも大量に拵える結果となった。
 料理長が一口麺を口に入れると器にまだある麺を口の中へと流れ込むようにかきいれあっというまに器は空となった。

「とても美味しい、どこでこの料理を学んだのですか?」

 もちろん元いた世界で習いました。なんて口が裂けても絶対言えない

「独学ですかね誰も見たこと無いような食べ物は何かないか研究していくうちに完成した一品です」
「それは凄い!他にはどのようなものがあるんですか?」
「色々ありますがすみません料理長、料理を仲間に届けに行きたいのですが宜しいでしょうか」
「これは失礼しました。試食させていただいたお礼に後片付けは私共で致します」
「本当ですかありがとうございます」

 そして俺は料理の運搬に使う専用の台車を借り受け皆がいる部屋へと向かった。

「でもなんでまだ研修生がいるんですかね。てっきりニシャラに飲みに行ってるもんだと思っていましたよ」
「魔物討伐に行って魔獣と遭遇したチームがあったろ、彼はそのチームの一員なんだとさ。そんでチームメイトが一人部屋の外に一歩も出ようとせず閉じ籠ってるそうだから元気をだして欲しくて料理を作りに来たって厨房を使うときに言っていたぞ」

 


 あの時魔獣から逃げたという事実が心に傷を植え付けたのかメルトは部屋から一歩も出ようとすることはなく、シャーリン達の説得も全く効果は無かった。

「メルト起きろ、昨日から何も食べてないだろ食事用意したから食べろ」
「いらないほっといて」
「一口だけでもいいからさ、何も食べないと体を壊すことになるんだぞ」
「分かった食べる」

「これなんて料理?」
「うどんだ。あっさりしていて食べて落ち着くだろ」
「うん……………………。考えたんだけど私準騎士になる資格ないよ。あの時だってジー君は途中で引き返したのに私はそれを引き留めようとしたけど出来なかったすぐに連れ戻すべきだったのに怖いと思ってしまって足が固まってしまった。そんなのが円卓の騎士団にいるのなんて間違っているもの」
「それは違うよ、メルト。俺は魔獣と戦ったことがあるし誰もが初めてあの場面に遭遇したら恐怖していたことだろう。それに君はあの恐怖を知ることが出来たならば次は立ち向かうことが出来る。君と会ってまだ二週間ぐらいしか経ってないけど俺はそう思うんだ」
「励ましてくれてありがとうジー君」

 メルトは元気を取り戻し、テーブルを囲み残りの皆にもうどんを振る舞い食べさせた。うどんはやはり人気を博し用意していた分はあっという間に完売した。

「不思議に思ったんだかよぉージークお前の魔力量ってどの位あるんだ?カイルさんのもとに戻って行く時に使った身体強化の魔法と聞いたところでは魔獣を爆散させるほどの魔法の二つを使い全然平気みたいだし魔術師の才能があるだろお前なのに何で剣士の道を選んだんだ?」
「平均的な魔力量しかないぞ俺」
「嘘だろジーク身体強化の魔法感覚的だけど3倍は行使していただろ。相当量の魔力を要する魔法を使うのに平均的な魔力量しか持たないなんて嘘誰も信じない」

 魔法学院の主席が言うのだから間違いないんだろう。
 ミハール余計な質問するんじゃねーよと思ったがいつかは話すことになるのなら早めに越したことはないだろうと決意した

「凡人でもやりようではいくらでも魔力量は上げられるぞ」
「そんなことはあり得ない。個人が持つ魔力量は産まれた時に決まっているんだぞ、そこから上げるのは絶対に不可能だ」
「すまんすまん言い方が悪かった。魔力量を上げるって言っても要は魔力の質の向上それと魔力使用量の効率化をするだけだ、従来の魔法を使う際無駄に魔力を消耗してしまっているんだ。つまり簡単に説明するなら1つの魔法に20魔力を使用するとする、しかし魔力の質が上質なものだと10魔力で済んでしまう、さらに魔法の効率化ができれば1魔力だけで充分になるってわけさこの原理を使えば魔力量が低くてもどうにか魔法を放つだけの魔力を獲得出来る寸法ってこと」
「なるほど確かにその考えは正しい。だがそう簡単に可能なのか?」
「シルバ達が望むならいくらでも付き合うぜ」

 魔獣騒動から更に二週間が経過した。


円卓の間
「マニラ公国について説明をしたいとエルテーミス帝国から使者が送られるそうです。では次にパーシヴァル卿お願いします」
「ガハラ砦近郊で起きた魔獣に関する最終報告になります」

 今回の事案を纏めたパーシヴァル卿が説明をし始めた。

「クラスは人災ニアと判断しました」
人災ニアか…。しかしこのところ国内での魔獣発生率が多く感じないか?」

 魔族には3パターンに分類されるが、その他に驚異判定というものがある。人災ニア業災ゴア天災カタストロフだ。

「その通りですトリスタン卿。国内発生数は半年以内で計七体これは例年ではあり得ないことです」
「つまり魔瘴気クォーツが国内に大量に流れ込んで来ているということなのかそれなら早急に対応するべきだな」
「それは違うよトリスタン」

 円卓の騎士の中でも古参の騎士であるトリスタンを呼び捨てにした男が席を立った。

「マーリン」
「貴様珍しく会議に参加したと思ったら何が言いたい」
「そんな刺々しい言葉で責めるのはやめて欲しいよ。僕傷つくよそれだから参加するの嫌だったんだよ」
「すまんなマーリン、お前が調査した内容を教えてくれ」
「分かりました我が王よ。私は魔獣戦線に向かい調べましたがトリスタン卿が指摘したようなことはありませんでした。それよりも興味深かったのは魔獣が発生した森の方です。これは私の考えですが森の事件は人為的なもののような気がします」
「マーリン本当かそれは!」
「まだ確定したわけではありませんがもし事実なら大変なことになります」


 

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