クラス転移はts付きで

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四十八話~微妙な慰め程心を抉る物はない~


 アルスから解放され、ボクは机に置いてあったクッキーを頬張っていた。アルスは今、ラムに説教されていた。

「まあ、僕達もあそこで暴れたのは悪いと思ってるし、ライムだって思ってる……」
「あれのどこが反省してるっていうんだ! あんなの絶対反省していないじゃん!」

 んふふ、喚いてて、良い気味だよぉ。ん~、それよりもお菓子美味しいなぁ。

空間転移テレポート

 ボクが更にクッキーを取ろうとすると、何故か、アルスの横に正座していた。何を言っているのか分からないと思うが、俺にも何が起こったのか、全く見当がつかねぇ。

「ライム? 君も暴れまわってたけど、全く反省してないよね?」
「ん!? は、反省してるよ? 何を言っているのかな?」

 そして何故かボクまでラムにしかられていた。意味が分からないよ!

「君のせいでどれだけの被害があの店に出てと思っているんだい?」

 やはり、張ったりは効かず、呆れた目でボクを見ていた。だけどさ? ボクだけが悪い訳じゃないでしょ? 途中、何処かの誰かに威圧されてたし、最後の方は、と言うかボク自身は魔法なんて一発も打ってないんだけど?

「……君が実行犯だよ?」
「そうだよ、どっちかっていうと、私が叱る相手はラムなんだよ?」

 ボクがラムにそう言い掛けると、場の空気に流され、て、居るわけではないけど、アルスも同じ様に言っていた。これで二対一、形勢逆転だ。

「い、今はアルスの話をしているんだよ! それは関係ないじゃないか!」
「い、いや、それだったらボクm――」
「うるさい!」

 どうやらボク達の的確な指摘に、図星を突かれたようで、慌てふためいていた。ラムの目論見はボク達を叱っておいて、自分だけ逃げようってことだと思うけど、そうはさせない!

「アルスはボクだけに被害を与えたけど、ラムの場合はあそこにいた数十人に被害を与えてたじゃないか、罪の大きさはラムの方が大きいよ?」
「うぅ、そ、そうだけどぉ。罪をしたのはアルスと僕で一、一、だよぉ」

 まあ、数で言えば同じだけどさぁ、……あれ? それじゃあ、ボクは零なんじゃないの? どういうことなの?

「じゃあ、ボクは?」
「「……」」

 ……あれ? ボクって今キレて良いよね? だって無関係なボクが説教されてるんでしょ? ボクがそんなことを心の奥で思っていると、ラムが急に頭をあげ、ボクの目を見ないようにして「じゃあ、お会い子ってことでね」と、言う風に閉め始めた。しかもアルスもボクに目を合わせずに「それは良いね!」と言う風に賛同していた。

「あのさ? それじゃあ、ボクは怒られ損じゃないの?」
「よし、じゃあ、元の場所に帰してあげるね。また今度ね」

 どうやらアルスは一人で逃げる気らしく、ボク達を帰そうとした。勿論、抵抗したかったけど、抵抗の仕方が分からなかったから、ボクは意識を失いつつあった。そして最後に言った言葉は、

「「一人逃げするなぁ! 今度あったら覚悟しとけぇぇ!」」

 と言うラムと同じことを叫んでいた。



 ボクが目を覚ますと、そこはアルスに連れていかれた時の所だった。

「な、なんださっきの力は!?」

 どうやら、他の人達からはアルスは見えていなかったようで、唯一何かあったことに気付いたのは、アルスが作った結界に包まれたおっさんだけだった。

「あぁ、その今ごろだけど、悪いのはコウタだからね?」
「はっ! また言い訳か! そんな手には――」
「お、オーナー、その」

 ボクが言い訳、と言うか真実を言うと、おっさん達数十名はボクを嘘つきと罵ってきた。
 しかし、その罵りはコウタの発言で途切れた。

「こ、今回の事はライム側の方が圧倒的に正義です。どっちかっていうと、オーナー達が暴力を働いた犯罪者です」

 流石にコウタの発言はしっかりと聞くようで、コウタの発言に対して質問をする人などが現れた。因みにどういう物かと言うと「ま、まさか洗脳されたのか!?」とか「女の子を苛める方が犯罪者に決まっている!」等と言うことを言っていた。……だからボクは女じゃなかったのか、って言うことを激しく主張したいんだけど?

「こ、コウタ? どういうことだ?」

 流石におっさんは常識人のようでしっかりと詳細を聞いていた。

「えっとですね? いつも自分とライムはこういうことを言い合っているんですけど、それを勘違いしたオーナーが急に暴力を振るったので、普通にムショ行きです」
「そうだよ? だからボクが衛兵の人に言えば君達がどうなるかは考えなくてもわかるよね?」

 ボクが更に追い討ちを掛けると、おっさん達は青ざめ、ボクの事を見ていた。そんなに衛兵ってヤバイのかな? 知っている人が、親切なツンデレの使えねぇ白の人しか知らないし、分からないよ。

「そ、そのすまなかった。今回は許してもらえないか?」

 そうすると、全員を代表しておっさんが頭を下げ、謝ってきた。ボク自身はまだ、弄り足りないから、ここで拒否しようかn――

(やあ、今日は良い日だね、ああ、でもそんな日に君を躾なきゃいけないと思うと鬱になってくるよ)

 ボクはそんなことを思い掛けると、ラムの不穏な言葉により遮られた。勿論、ボクはラムに躾られた事はないけど、そしてペットでもないんだけど、今は絶対に逆らっちゃいけないと、ボクの小動物的な生存本能が訴えかけていた。

「だ、ダイジョウブデスヨー、怪我してないんでー」

 ボクの生存本能は、人間なのに何故か優れていて、この訴えかけに一度、逆らったことがあったが、その時は普通に死にかけた。……社会的にだけど。

「ただ、そもそもボクは女なんだけど! その点はしっかりと謝って!」
「「え」」

 どうやらこの世界で、と言うか、おっさん達の女の基準は胸の大きさらしく、皆、ボクの胸を凝視していた。因みに、コウタは少しい大きめの胸だ。……普通に泣いてやろうか? この世の理不尽と下衆な野郎共に。

「ライム、ドンマイ」

 そしてカシモトの慰めが地味にボクの心を抉った。

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