クラス転移はts付きで

lime

祝、三十話! ~厨二的なもの程格好いい物はない~


 ハイドリヒさんについていくと、そこは第三訓練場ではなく、第八訓練場だった。……呆けちゃったのかな?

「ハイドリヒさん? ここ第八訓練場ですよ? 第三訓練場に行くんじゃないんですか?」

 ボクがハイドリヒさんへ質問をすると、ハイドリヒさんは不敵な笑みを浮かべながらボクの方を向いた。

「ねぇ、貴女って機械種でしょ?」
「……キ、キカイシュッテナンナノデスカー? ボクハソンナモノハシリマセンヨー、ウンゼッタイシラナイヨー」

 ハイドリヒさんはボクの正体に気付いてしまったらしく、それを捕まえるために第八訓練場に来たのかな? まあ、ボクのかんぺきな嘘でばれないと思うけど。

(か、完璧? 完璧という言葉の意味を君は知っているかい? 欠点がない事だよ? 君の嘘はいま時ではない、昭和の漫画に出てきそうなレベルの嘘だよ?)

 何かラムが言っている気がするけど、多分それは気のせいだ。

「機械種って言うのはもう絶滅しているはずなのだけれど、現実に存在するのなら、色々の国がどれだけの金を積んで国に呼び込もうとするのかは分かるよね?」

 そういう風にふざけていると、急にハイドリヒさんが何故か機械種についての価値を語りだした。すると、何故か何人かからの視線を感じた。何故?

「この王国の貴女への待遇は想定の十倍近く酷かったわ。普通、機械種ほどの能力を持つものが一人でも居たら、それには王族並みの対応をするはずなのよ? それなのにこの王国は、中級貴族並みの扱いをして居るのよ? だからね? 国を移ってみない? 例えば……」
「例えばってどこなんですか? そもそも、ボクはこの国にはもう重要な人達が出来てしまっているので、この国を移るって言うのは余りしたくないですね」

 どうやらこの国のボクに対しての扱いを疑問視しているようで、ボクの所属する国を変えることを進めてきた。だが、その目は少し黒色に濁っていて、余り信用しようとは思えなかった。

「そうね、ならその重要な人達に危害が加わりそうになり、それを助けるためには他の国に行かないとならない、と言う状況になったらどうするつもりなのかな?」
「は、ハイドリヒさん? 何を言ってるんです――」

 パチンッ。

 ハイドリヒさんが指打ちをすると、二人の人が縄に締められたカシモトを運んできた。カシモトは目隠しをされ、猿轡? 着けていた。

「なっ、何をするつもりなんですか!? カシモトを縛って!」
「貴女が素直に私たちに着いてくれば良かったのにね。ああ、改めて自己紹介させてもらうよ。私は、ルビー・フォン・ハイドリヒ、この愚王が統治している国に革命を起こすために帝国に魂を売った公爵よ!」

 どうやら、ハイドリヒさんは、第一騎士団長の様に帝国と繋がっているらしく、ボクを帝国の兵力にするために勧誘をした来たらしい。

「そして貴女が断るのならこの恋人さんを傷付けてしまうが、良いのかい?」

 そしてカシモトはボクを帝国側に引き連れるための身代りとして、捕まえたらしい。

(こんなことをされて黙っているボクではない! カシモトを捕まえて、さらにはボクを脅すとか、なんと言う鬼畜生、だがボクはまだ種族的に圧倒的に有利だ。だから、ラム! 本当に頼んだ! 出来ればカシモトには傷ひとつ着けて欲しくないが、カシモトの命が優先だ!)
(うわぁ、滅茶苦茶暑くなってるじゃん、まあ、僕も好きな人がナイフをつき出されている状態は、とても不愉快だよ、だからこの学園が崩壊するくらいは頑張るよ!)
(よし! ラム! 交代準備できてるよね? 本気を出していいからね? 負けたらカシモトと永遠に別れないといけなくなるからね! 絶対に殺してでも勝ってね!)
(分かってるよ! そのままこの星を崩壊させないくらいには頑張ってくるから!)

 ボクの行動権、意思決定権をラムに移すと、ボクの髪の毛が少しずつ短くなった。そして、いつの間にか机だけが有る部屋に居た。……もしかしてここが心の中的なところなのかな?

「ハイドリヒさん、貴女が帝国のスパイとは驚きました。しかし、僕の彼女を身代わりに脅されて彼氏として、友人として! 黙っている訳にはいかないんですよ! だから覚悟してください!」

 ハイドリヒさんはボク? 僕? が声を荒げ、怒鳴り散らしたことに驚いたのか、一瞬怯んでいた。しかし、すぐに立て直した

「ふん、貴様は愚かだ、自分の一番大切なものを、世界一救い用のないこの国のために無くしてしまうなんて、何て愚かなんだ」
「愚かなのは貴女だ」

 ラムがそういうと、急に机しかなかったところに、液晶が現れた。

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 『機械仕掛けの天使』の解放条件を達成しました。
 これより、機械仕掛けの天使を解放します。

 機械仕掛けの天使、を解放したので、自動的に種族が、人型(人族)機械種から、天使型機械種、(オリジナル)に進化しました。

 断罪者、を解放しました。

 眷属召喚、召還、を解放しました。

 分身、を解放しました。

 神法、を解放しました。

 神罰、を解放しました。

 天使召喚、召還、を解放しました。

 終末戦争ハルマゲドン、を解放しました。

 災害カタストロフィー、を解放しました。

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 どうやら、ラムが本気を出したようで、色々と解放した様だった。カシモトを救うためならなんだってしていいが……終末戦争ハルマゲドンは不味くないか? この星全員と心中と同じレベルなんじゃないかな?

「『機械仕掛けの天使』」

 ラムがそう唱えると、ボクの背中に巨大な鉄の翼が生えてきた。ただ、鉄なので重量的に飛ぶと言うことはできないが。

「はっ、そんな見かけ倒しの翼で我々が騙されるとでも? やはり所詮はモンスターか、人間のような形をとったところで、結局は意味がないのだよ」
「神の意思に従わないものへ、神界からの罰を! 聖槍ロンギヌス!」

 ラムがそう唱えると、空から光る棒状の物体が多数、降ってきた。その数は百を軽く越えているような数だった。

(ちょっとごめん、MPが無くなってるから交代して)
(今なの!? いいタイミングだったのに、雰囲気がぶち壊しだよ! まあ、良いけどね)

 そうすると、すこしづつ、髪の毛が伸び、ボクは真っ暗な部屋から外へ出た。

「き、貴様は、まさか、天使だとでも言うのか!? まさか! 世界を崩壊へと導いた機械種が天使になるわけがぁぁぁッ!」

 流石にあの数の槍は避けられずに当たってしまう。しかも、槍が結界に触れた瞬間、結界は壊れ、そのまま、ハイドリヒさんは死んでしまった。……あれ? ボクってこのままじゃ、殺人者じゃないの?

「な、なんだこれはぁぁ!」
「ぐぎゃぁぁ!」

 やがて槍が降り終ると、そこに残ったのは「むごむごーッ! むー!」と可愛らしく騒いでいるカシモトだけで、第八訓練場の有った場所は大穴が空き、なにもなかった。

「カシモトー、目隠しとか外して欲しい?」

 ボクがそう答えるとカシモトはぶんぶんと、勢いよく首を縦に振っており、ヘッドバンキングしているようだった。

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