クラス転移はts付きで

lime

十八話~勘違い程迷惑な物はない~

「ライムー、今日は何を食べるの?」 
 
 今は、朝食を食べに食堂に来ていた。 
 食堂と言っても、ボク達の中で料理が出来る人が当番制で代わったりしながら作っているので、そこまで仰々しい物ではない。
 ただ、最近は料理を作る人が本気を出しすぎてしまい、メニューが常時二十種類くらいある。
 
「え? ボクは――」 
「うん? 今何て言ったのかな? あと、心の中でも一人称は変えてね」 
 
 あ、そっか、今一人称を私にしてるんだったっけ? いや、でも、その、今食堂には何人かいるよ、その、流石に恥ずかしいんだけど。うぅ、でも言わないといけないんだよねぇ? ただボ……私は寝ぼけてシンノスケに抱き着いただけなんだけどなぁ。 
 
「何でもないよ、いつも通りオムライスを食べるから」 
「いーちーにーん称はー? なんで言わないのー? 面白くないよー? お説教にもなってないんだけどー?」 

 ボクが一人称を言わずに会話をすると、カシモトが頬を膨らましていて、「私は今、ふてくされているんですー」と言う事が伝わってきた。

「だ、だってぇ、恥ずかしいんだもん。しょうがないじゃん、言わなくてもいい方法が有るんだからそれをしようするでしょ? しかもなんで私って言わないといけないの? ぼ……ただ寝惚けてシンノスケに抱き着いちゃっただけじゃん」 
「圧倒的に私のほうが不公平じゃん! なんでシンノスケに抱かれるのは良くて、私に抱かれるのは嫌なのよ!」 
 
 ボクがカシモトが決めた、一人称を一日私にする事以前の、寝惚けてやったことを怒ったことに対して不満を言うと、カシモトは意味不明なことを言い出した。
 そもそも、心女の体男に抱き付かれるよりも心男の体女に抱き付かれる方が良いんだもん。柔らかいし。
 
 それにですね? 好きな人から「抱き着いてきて!」とかって言われて、抱き着けるような行為をできるほどの精神はお持ちしていないのですよ? そんなことしたら、茹蛸みたいに顔を赤くしちゃうよ? カシモトからしたら可愛いんだと思うけど、ボ……私は滅茶苦茶恥ずかしいよ! 
 
「またあいつ等が夫婦喧嘩し始めたよ、今回はだかれ、る?」 
「お、おい、まさか、今回はライムが浮気をしたからなのか!? どうして昨日まであんなに仲睦まじかった二人がこんな風に」 
 
 どうやら、ボク達の会話を聞いていた人達は抱かれると聞いて、抱き付かれる、と言うよりもそう言う行為の方が頭に浮かんだらしく、少し騒がしくなっていた。

「むーっ! だって、言うけどカシモトよりもシンノスケの方が抱かれてて気持ちいいんだもん! そのことに文句言うならシンノスケより上手くなってからにしてくれないかなぁ?」  
「し、シンノスケの方が抱かれていて気持ちいい、だと、ま、まさか! あいつ!」 
「ライムっていう黒髪美少女が、一見清楚そうに見えるシンノスケに寝取られるって、すげぇ羨ましいシチュエーションじゃねえか! って違う、シンノスケは何をしてんだ! 誰か! シンノスケをひっ捕らえろ!」 
「「「おう!」」」 
 
 ボクが言ったことを完全に誤解したらしく、皆はシンノスケがボクを寝取ったと思い違い、シンノスケの居る部屋へと走っていった。……ぼ、ボクは悪くないもんね! きっと、ボクを生け贄にした罰なんだよ! うん、きっとそうだ!

「ライムは私のことが嫌いなの! それははっきり言ってもらえない!」 
「いや、あの、その、えっと、あの、き、嫌いではないと思いますよ、うん」 
 
 騒がしかった人達が居なくなった途端、カシモトが急に、ボクがカシモトの事を好きなのかを質問してきた。
 ……か、カシモトさんッ! ボクはそう言うことが苦手っていつもいってるじゃん! そもそも、「好きです! 付き合ってください!」って言えるのなら既に、恋人か、振られてるかのどっちかになってるよ!
 
「だから! そういう煮え切らない態度じゃ分からないっつってんの! しっかり言えよ!」 
「ふぇ、あぅ、そのカシモトの事、好きだからね? 落ち着いて? ね? 私がこういう話が苦ってって伝えたことあったよね?」 
 
 ふぇえ、こ、怖いよぉ、で、でもフェルさん絶対零度エターナルフロスト状態よりは怖くないから大丈夫だよ、多分 
 
「あ゛あ? 聞こえねぇんだよ! もっと大きな声でしゃべれ! それでも元男か? まあ、もとから殆ど女だったが」 
「ボクは! 君のことが! 好きです! 恋愛対象的に!」 
 
 し~ん 
 
 ボクが大きな声で言うと、思った以上に大きな声が出たのか、食堂中から視線が集まった。ボクにその事を言わせたカシモトは、頬を弛ませ、いかにも「ライムって馬鹿可愛いなぁ♪ まあそれが良いんだけど♪」っていう目線をニヤニヤしながら送ってきた。 
 
「うぅ、は、謀ったなぁ! ボクの純粋な心ピュアハートを傷つけて! 何がしたいっていうんだよ! 君のせいでボクが君のことが好きって事が色んな人に知られちゃったじゃん!」 
「他の奴から手を出されなくなるんだからいいだろ、まあ、手ぇ出したやつが居たら社会的に抹殺したやるけど」 
 
 うぅ、良くないよぉ、絶対全員に広まっちゃうじゃん! 本当にどうしてくれるのさ! あと、怖いよ! 別にそんな心配しなくていいからね!? カシモトの恋人モノであるボクの体に触れさせるとでも思ってるのかな? 
 
「えっ? ライムがカシモトのことが好きなのってかなり前から分かってたことだよね? 相思相愛の馬鹿カップルだったでしょ?」 
「まあ、そのことは置いておいて、シンノスケはどうだった?」 
「ああ、なんかカシモトに対してのラブレター書いてた」 
「そうかそうか、ラブ……っ! な、何だと! まさかこれは、ドロドロの三角関係魔の三角形なのか!?」 
 
 
「はあ、ライム、一人称」 
「ま、まだ続けるの? ぼ、ボクは、精神的にかなり疲れたんだけど」 
「まあ、ボクっ娘も可愛いんだけど、ふつう状態でもかわいいかな? って思っただけだから、まあ、頑張れ」 
「ちょ! そこは、「もういいよ、頑張ったなライム」ってほめるべき場所でしょ!? ちょ、頭撫でるな! ふんっ! まあ、まだ私で頑張ってみるかな。って、ニヤニヤするなー! 別に私は頭を撫でられたから許したわけじゃないからねっ!」

 バカみたいな話をしていると、フェルさんに召集をかけられた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品