迷宮壊しは、全ての始まり
第25話 成長の迷宮〈修復〉2
──移動ありのゴブマジリーダー
【完全封鎖】の話によると、第十層で倒す予定だった、ゴブリンキングは近距離武器持ちのゴブマジリーダーと言っていたが、今目の前にいる奴は武器を持っていないだけでほぼキングに相当している。
俺は一度、腕力にモノを言わせた攻撃を受けたから分かるがとてもマジシャンをやっているような魔物には思えなかった。
そんな奴が現在、俺たちを敵として捉えている。
「コア、出し惜しみは止めておく」
「そうした方が良さそうね。私はサポート?」
俺が頷くとコアは分かったわ、と了承してくれた。
前方からは火属性魔法を展開しながら大きな足音を立ててこちらに向かって来る緑の巨体。
「コア、魔法を相殺!」
それだけ言って、スキルを発動する。
「〈完全解析〉[干渉]オペレート」
足を地面に打ち付け、そこから脳内に展開される現階層の構造。
奴は直進しかしてこない。速度は先の階層のゴブリンリーダーと同等。故に、同じような作を実行する。
「コア、3セカ後、魔法相殺! 〈完全解析〉[分解]オペレート」
予定通りにコアは実行に移す。
「水の精よ、我に纏い、汝を示せ《水属演舞》[水の衝撃]!」
ゴブマジリーダーが展開する魔法は先に言った通り火属性で、幅一メルくらいの大きな火球であった。
そこにコアは分厚い板の形をとった水を勢いよく押し当て、火球を霧散させる。
そして、魔法の相殺に足を止め掛けたゴブマジリーダーの足元に地盤落ちが行使される。
だが、奴はそれを感知したのか後ろに大きなジャンプをし、落とし穴を躱した。
「なッ!?」
「うそっ!?」
俺達も驚き、慌てて距離を取る。
「想定外だ」
「魔法を使えるからかしら? 周囲の変化に敏感になってるのかもしれないわ」
確かに魔法使いは、環境の変化に敏感になると攻略者の界隈どころか一般的にも知られる事実だ。
となると、コイツは厄介だ。
「何か他の策はないか?」
俺の声にコアも思案を始める。
「あっ、こんなのはどうかしら?──」
コアの策に俺は目を見開く。
「すごいアイデアだ。流石コアだ」
「ふふっ褒めてもいいよ」
たまに見せるコアの上目遣いと砕けた口調。
こんな状況下だからってどうした。
可愛いものがあれば、愛でるのが鉄則!!
ということで俺はコアの頭を優しく撫でる。
「グギャーギャキャッ!!」
撫でられることでさらに可愛くなるコアに自制が効かなくなりつつもヤツの声に現実に戻される。
「おっと、じゃあコアの策に転じようか」
「あっ……」
俺がコアの頭から手を離すと、コアは少し寂しそうな瞳を浮かべる。
「チッ、邪魔しやがって。上等よ! 潰してあげるわ!」
遠距離から飛んできた無数の火球を水の鞭でことごとく弾き返す。
いやぁ〜、アハハ……
すごい毒を吐くことで……
まぁ、愛されている証拠として今は心にしまっておこう。
「じゃあ策を執行しよう。〈完全解析〉[干渉][探知]オペレート」
ヤツの現在位置を干渉した脳内構造図に転写する。ヤツは前回とは違ってランダムの動きを開始する。
コアの策がなければ俺は今慌てていただろうが、今はその心配は皆無だ。
──「逃げることの出来ない袋小路にするなんてどう?」
その通りだ。避けられるのなら避けられないものに変えればいい。
だから俺は道をつくる。
ただの道ではない、死が確定する道を。
「〈完全解析〉[分解]オペレート」
──さぁ、始めよう、お前が入る道は、どんな行動を取ろうとも等しく死だ。
[分解]の行使により、地が震える。すると同時にゴブマジリーダーの両側から崩れるように深い溝が展開される。
それも長く、時には交わるように。
そうして出来たのは、深い溝で出来たフロア全体を目一杯に使った迷える道筋。そう所謂──『迷路』だ。
「コア頼む」
「了解」
そしてその溝、一つの工夫が施される。
それは迷路となる道筋に高く展開される揺らぐ赤い壁。
コアの《火属演舞》である。
これでヤツは決まられた道しか辿ることが出来なくなった。
これがただの一直線の道では、前後の動きで攻撃を避けられるかもしれない。
だが、あえて入り組ませたこの迷路ではそんな動きをとることは不可能である。
俺は腰に携えた空絶輪を手に取る。
「さぁ、道を辿って俺の前にこい。コア、少し長くなるだろうが維持を頑張ってくれ」
「えぇ分かってるわ。だから今度は……さっき以上に愛でてくれると嬉しいわ」
「了解だ!」
そんな可愛い要望なら、喜んで受けよう。てか、拒否する奴いないだろ!
待つこと10ミニュ、ヤツはようやく最後の角を曲がり終えようとしていた。
「よし、来たな〈完全解析〉[分解]オペレート」
[分解]により、ヤツのバックスペースを塞ぐ。すると唐突な地形変化にゴブマジリーダー困惑をする。
それを見逃さずに、開けた溝にコアの火が展開される。
「これでチェックだ[分解]オペレート」
変化が起こると感知し、後ろを見たゴブマジリーダーはその背後が火の壁になっていたことに一瞬隙ができた。
そこに最後の[分解]を行使した。
やつの足元が崩れていく。足元の変化にヤツもようやく気づき躱そうとするが、それは無駄な足掻きである。
ようやくヤツの足止めに成功したのだ。
「コア、お疲れ様。魔法を解いていいぞ」
「ふぅー、袋小路作戦完了ね」
コアは、精神的にも参ったのかお尻を地に落として座り込んだ。
「ここからは、俺が締める」
俺は、ヤツの落ちた穴に近づく。
ヤツは今なお、穴から登ろうと足掻いていた。
「〈完全解析〉[最適解]対象:前方敵の弱点、オペレート」
──────────
弱点部位:尾骶骨右──、上方──
──────────
正確な数値が割り出される。
目の前にあるは、動きの取れない的、目標に一寸の狂いなし。
「速攻で楽にしてやる。《風属性付与》」
手に持つ空絶輪を回し始める。
最大限の速度になった空絶輪を体を捻ってしなりを加え、その最速の刃を解き放つ。
ビシュッ
それは、ヤツの弱点に当たるとスッと体の内部に入り込む、背中から入った空絶輪がやがて腹部から抜けてくると下に投げたにも関わらず穴の上にいる俺の手元へと戻ってくる。
穴の内部にいるゴブマジリーダーは壁に顔をぶつけ、すべての機能が停止したのか膝立ちとなり動きを止めた。
「完遂」
それを見届けた俺は、その穴に背を向けるとそう呟く。
ここで俺の残念思想が爆発する。
──今の俺カッコよくね!? 決め言葉も決まったわッ!!
そんな俺を見たコアの一言
「アディー君……顔が気持ち悪いよ」
俺の予定では、涼しい顔をしていたはずが、どうやら顔が公開NG並に変形していたらしい。
…………無念。
けれど、自分の魔法に名前を付ける少年チックなコアには、最後の決め言葉は大ありだったらしく、その点に関しては最高の笑顔でサムズアップをしてくれた。
…………今後も使ってこ!!
閑話休題
「なぁ、コア。ゴブリンキングって上がってこないんだな」
「私もてっきり上がってくるものだと思ってたけど」
はっきり言って、休憩できるのはありがたい。
ほかの小物達はどうやら俺たちを抜けて上層へと上って行ったようだ。だから現在、魔物1体たりともこの空間にはいなかった。
「アイツらには迷惑かけるな」
「アディー君、これからキングを倒すんだから平等と思う事にしません?」
「そうだな」
数の暴力を受ける【完全封鎖】
この暴力を受ける俺とコア
……うん、平等だ
それにて結論として、ゴブリンキングについての考察を始める。
「コアは、動かないゴブリンキングについてどう思う?」
「もしかしたら、何かを守っているんじゃないかしら」
「守る、か……けど魔物にそんなに知識があるとは思えん」
けれどもしかしたら、先にも感じたように何らかの命令を受けているのだとすると、自然的な事故ではなく人為的な事故なのかもしれない。
「何かがおかしいのは間違いないな」
俺の呟きにコアも首肯とともに同意の意を示す。
「ここから先に原因は必ずある。気を引き締めていくぞ」
「一緒に街を救おうね!」
コアの声に勿論だ、と答え座って休んでいた腰を上げ隣にいたコアの手を引っ張り立ち上げた。
「ここから向こうは、キングのみだと思う。第10層まで急ごう」
「了解よ!!」
俺達は、この地最後の戦場へと向かう。
【完全封鎖】の話によると、第十層で倒す予定だった、ゴブリンキングは近距離武器持ちのゴブマジリーダーと言っていたが、今目の前にいる奴は武器を持っていないだけでほぼキングに相当している。
俺は一度、腕力にモノを言わせた攻撃を受けたから分かるがとてもマジシャンをやっているような魔物には思えなかった。
そんな奴が現在、俺たちを敵として捉えている。
「コア、出し惜しみは止めておく」
「そうした方が良さそうね。私はサポート?」
俺が頷くとコアは分かったわ、と了承してくれた。
前方からは火属性魔法を展開しながら大きな足音を立ててこちらに向かって来る緑の巨体。
「コア、魔法を相殺!」
それだけ言って、スキルを発動する。
「〈完全解析〉[干渉]オペレート」
足を地面に打ち付け、そこから脳内に展開される現階層の構造。
奴は直進しかしてこない。速度は先の階層のゴブリンリーダーと同等。故に、同じような作を実行する。
「コア、3セカ後、魔法相殺! 〈完全解析〉[分解]オペレート」
予定通りにコアは実行に移す。
「水の精よ、我に纏い、汝を示せ《水属演舞》[水の衝撃]!」
ゴブマジリーダーが展開する魔法は先に言った通り火属性で、幅一メルくらいの大きな火球であった。
そこにコアは分厚い板の形をとった水を勢いよく押し当て、火球を霧散させる。
そして、魔法の相殺に足を止め掛けたゴブマジリーダーの足元に地盤落ちが行使される。
だが、奴はそれを感知したのか後ろに大きなジャンプをし、落とし穴を躱した。
「なッ!?」
「うそっ!?」
俺達も驚き、慌てて距離を取る。
「想定外だ」
「魔法を使えるからかしら? 周囲の変化に敏感になってるのかもしれないわ」
確かに魔法使いは、環境の変化に敏感になると攻略者の界隈どころか一般的にも知られる事実だ。
となると、コイツは厄介だ。
「何か他の策はないか?」
俺の声にコアも思案を始める。
「あっ、こんなのはどうかしら?──」
コアの策に俺は目を見開く。
「すごいアイデアだ。流石コアだ」
「ふふっ褒めてもいいよ」
たまに見せるコアの上目遣いと砕けた口調。
こんな状況下だからってどうした。
可愛いものがあれば、愛でるのが鉄則!!
ということで俺はコアの頭を優しく撫でる。
「グギャーギャキャッ!!」
撫でられることでさらに可愛くなるコアに自制が効かなくなりつつもヤツの声に現実に戻される。
「おっと、じゃあコアの策に転じようか」
「あっ……」
俺がコアの頭から手を離すと、コアは少し寂しそうな瞳を浮かべる。
「チッ、邪魔しやがって。上等よ! 潰してあげるわ!」
遠距離から飛んできた無数の火球を水の鞭でことごとく弾き返す。
いやぁ〜、アハハ……
すごい毒を吐くことで……
まぁ、愛されている証拠として今は心にしまっておこう。
「じゃあ策を執行しよう。〈完全解析〉[干渉][探知]オペレート」
ヤツの現在位置を干渉した脳内構造図に転写する。ヤツは前回とは違ってランダムの動きを開始する。
コアの策がなければ俺は今慌てていただろうが、今はその心配は皆無だ。
──「逃げることの出来ない袋小路にするなんてどう?」
その通りだ。避けられるのなら避けられないものに変えればいい。
だから俺は道をつくる。
ただの道ではない、死が確定する道を。
「〈完全解析〉[分解]オペレート」
──さぁ、始めよう、お前が入る道は、どんな行動を取ろうとも等しく死だ。
[分解]の行使により、地が震える。すると同時にゴブマジリーダーの両側から崩れるように深い溝が展開される。
それも長く、時には交わるように。
そうして出来たのは、深い溝で出来たフロア全体を目一杯に使った迷える道筋。そう所謂──『迷路』だ。
「コア頼む」
「了解」
そしてその溝、一つの工夫が施される。
それは迷路となる道筋に高く展開される揺らぐ赤い壁。
コアの《火属演舞》である。
これでヤツは決まられた道しか辿ることが出来なくなった。
これがただの一直線の道では、前後の動きで攻撃を避けられるかもしれない。
だが、あえて入り組ませたこの迷路ではそんな動きをとることは不可能である。
俺は腰に携えた空絶輪を手に取る。
「さぁ、道を辿って俺の前にこい。コア、少し長くなるだろうが維持を頑張ってくれ」
「えぇ分かってるわ。だから今度は……さっき以上に愛でてくれると嬉しいわ」
「了解だ!」
そんな可愛い要望なら、喜んで受けよう。てか、拒否する奴いないだろ!
待つこと10ミニュ、ヤツはようやく最後の角を曲がり終えようとしていた。
「よし、来たな〈完全解析〉[分解]オペレート」
[分解]により、ヤツのバックスペースを塞ぐ。すると唐突な地形変化にゴブマジリーダー困惑をする。
それを見逃さずに、開けた溝にコアの火が展開される。
「これでチェックだ[分解]オペレート」
変化が起こると感知し、後ろを見たゴブマジリーダーはその背後が火の壁になっていたことに一瞬隙ができた。
そこに最後の[分解]を行使した。
やつの足元が崩れていく。足元の変化にヤツもようやく気づき躱そうとするが、それは無駄な足掻きである。
ようやくヤツの足止めに成功したのだ。
「コア、お疲れ様。魔法を解いていいぞ」
「ふぅー、袋小路作戦完了ね」
コアは、精神的にも参ったのかお尻を地に落として座り込んだ。
「ここからは、俺が締める」
俺は、ヤツの落ちた穴に近づく。
ヤツは今なお、穴から登ろうと足掻いていた。
「〈完全解析〉[最適解]対象:前方敵の弱点、オペレート」
──────────
弱点部位:尾骶骨右──、上方──
──────────
正確な数値が割り出される。
目の前にあるは、動きの取れない的、目標に一寸の狂いなし。
「速攻で楽にしてやる。《風属性付与》」
手に持つ空絶輪を回し始める。
最大限の速度になった空絶輪を体を捻ってしなりを加え、その最速の刃を解き放つ。
ビシュッ
それは、ヤツの弱点に当たるとスッと体の内部に入り込む、背中から入った空絶輪がやがて腹部から抜けてくると下に投げたにも関わらず穴の上にいる俺の手元へと戻ってくる。
穴の内部にいるゴブマジリーダーは壁に顔をぶつけ、すべての機能が停止したのか膝立ちとなり動きを止めた。
「完遂」
それを見届けた俺は、その穴に背を向けるとそう呟く。
ここで俺の残念思想が爆発する。
──今の俺カッコよくね!? 決め言葉も決まったわッ!!
そんな俺を見たコアの一言
「アディー君……顔が気持ち悪いよ」
俺の予定では、涼しい顔をしていたはずが、どうやら顔が公開NG並に変形していたらしい。
…………無念。
けれど、自分の魔法に名前を付ける少年チックなコアには、最後の決め言葉は大ありだったらしく、その点に関しては最高の笑顔でサムズアップをしてくれた。
…………今後も使ってこ!!
閑話休題
「なぁ、コア。ゴブリンキングって上がってこないんだな」
「私もてっきり上がってくるものだと思ってたけど」
はっきり言って、休憩できるのはありがたい。
ほかの小物達はどうやら俺たちを抜けて上層へと上って行ったようだ。だから現在、魔物1体たりともこの空間にはいなかった。
「アイツらには迷惑かけるな」
「アディー君、これからキングを倒すんだから平等と思う事にしません?」
「そうだな」
数の暴力を受ける【完全封鎖】
この暴力を受ける俺とコア
……うん、平等だ
それにて結論として、ゴブリンキングについての考察を始める。
「コアは、動かないゴブリンキングについてどう思う?」
「もしかしたら、何かを守っているんじゃないかしら」
「守る、か……けど魔物にそんなに知識があるとは思えん」
けれどもしかしたら、先にも感じたように何らかの命令を受けているのだとすると、自然的な事故ではなく人為的な事故なのかもしれない。
「何かがおかしいのは間違いないな」
俺の呟きにコアも首肯とともに同意の意を示す。
「ここから先に原因は必ずある。気を引き締めていくぞ」
「一緒に街を救おうね!」
コアの声に勿論だ、と答え座って休んでいた腰を上げ隣にいたコアの手を引っ張り立ち上げた。
「ここから向こうは、キングのみだと思う。第10層まで急ごう」
「了解よ!!」
俺達は、この地最後の戦場へと向かう。
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