努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

七十五話 魔王は気まぐれだった

迷宮へ行くには必ず宿、もしくは野宿をしなければならない。それは、迷宮へ行くには3日かかるからだ。
そして今、日が沈みかけている。このまま野宿をしてもいいが、瑞希がいるので出来れば宿に泊まりたいな、と思いながら外を眺めていると、進行方向より少し右側に石壁に囲まれた街のようなものが見えてきた。

「なぁエリス、あれって街か?」

「そうだね」

「じゃあその街の宿に今日は止まるか」

俺の言葉を聞いたエリスはわかった、と返事をして街の方へ向かって馬車を走らせ始めた。適当な宿に泊まり、その日はご飯を食べて寝た。



「逃げろー!」

「きゃーー!」

いつかも聞いたような叫び声が寝ている俺の耳に届いた。なんとか起きようとするが、眠気に負けてしまい寝てしまった。



「起きてよ!」

そう叫びながら俺のお腹は殴られた。

「な、なんだ?」

いきなり殴られたことに少し動揺しながらも起き上がると、目の前にはエリスがいた。

「なんだ?じゃないよ!魔族がこの街に攻めてきたの!」

「魔族が?」

「そう、魔族の大群が!今は瑞希が戦いに行ってるの。早く行かないと」

瑞希が戦ってると聞いた俺はすぐに準備を始めた。幾ら瑞希とはいっても、大群と言われては心配で仕方ないのだ。

「よしエリス!いくぞ!」

準備を終えた俺はエリスにそう言いながらすぐに宿を出たのだった。



「魔王様、報告がございます」

魔族のひとりが魔王の元に膝をついてそう述べた。

「なんだ?」

「勇者が現れたようです」

「そうか。それで倒せたのか?」

「いえ、それが…」

部下は事実が言いづらいのか、少し顔を伏せた。

「早く言え」

「部下が次々に殺されていきます」

「そうか」

魔王は予想していたのか、特に反応はない。

「仕方がない。そろそろ私も行くか」

「え?」

魔族は予想をしていなかった返答が帰ってきてとても困惑している。そもそも、今いる場所がおかしいのだ。魔王様は普通魔王城にいるべきなのに、今は街にいる。何を考えているのだろうか?魔王様曰く、暇だから勇者を殺しに行くということらしいが。

ただ部下は何を考えているのだろう、と思ってはいるものの、魔王様が負けることは絶対にないと思っているので気まぐれだな、と困っているだけだったのだ。

だが、この魔王の選択は間違っていた。
確かに魔王は強い、だからある程度は気まぐれに行動しても大丈夫だろう。ただ今回ばかりは完全なミスだ。
何故なら、自称平均的がいるからだ。

こうして、魔族は自滅の道へと進んでいくのだった───。

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