努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

七十三話 俺は少し変わったのだった

悪龍を倒し終えたと分かり、外へ出てきたエリスは俺の元へと走ってきた。

「リョウタ、どうやってあの悪龍を倒したの!?」

どうやってって、ファイアーボールを当てたんだが、見てなかったのだろうか?

「ファイアーボールを悪龍に当てただけだが?」

「そんなので倒せるわけないでしょ!?」

えー、本当の事言ったのに。というか本当に見ていなかったんだな。

「見てたらわかっただろ?」

「わからなかったから聞いてるの!」

エリスの声が一々うるさい。まあ、悪龍を倒したことに興奮しているのだろう。それはさておき、見ててわからなかったとはどういう事だろうか。俺は瑞希のほうをちらっと見る。すると、自分も一緒だとでも言うように首を振った。

仕方ない、実演するか。と思い、手のひらを空の方へ突き出し、ファイアーボールを出現させたところでなぜ見えなかったのかわかった。

「そう言えば、俺のファイアボール速すぎて見えないんだったわ」

さっき悪龍にファイアーボールを打った時に説明したはずなのに、すっかり忘れていた。というか、敵には見えなくて味方には見えてるみたいな勝手な解釈があった。

ということで、今ファイアーボールを打っても瑞希達には見えないだろう。仕方ないのでどうやって倒したかの説明は諦めてもらう。

「エリス、どうやって倒したかはファイアーボールで、としか言えない」

「そっか...」

あからさまに落ち込むエリスを見て俺は、本当にファイアーボールなんだがなと心の中で呟いた。



悪龍を倒し終えた数十分後、俺達は悪龍によって出た死人の名前をギルドへ報告するために街を出た。街の方は、魔物は全部倒し終えているのでもう大丈夫だ。


ギルドにつくとギルド長がすぐに俺達のところへ来たので、詳しく説明をする。
悪龍を倒した、と言う言ったら確実に面倒ごとになるであろう話題だが、今回ばかりは仕方がないので、俺はすべて正直に話した。
その話を聞いてギルド長は信じられない、と言ってきたので闘技場に移動して悪龍を取り出すと口を大きく開け、固まってしまった。

「本当に悪龍が倒されているとは...死体を見ても信じ難いな」

これはギルド長が放心状態から復活してはじめに発した言葉だ。死体を見ても信じられない、それほどまでに悪龍とは強い存在なのだ。ここで、一度は諦めたがまた思ってしまう。悪龍の話は隠しておけばよかった、と。これは面倒の予感しかしない。今更言っても何にもならないが。

その後も魔人の話、冒険者が死んでしまった話など、色々な話をした。そして気づけば1時間半近くの時間が過ぎていた。
今回の話は、ギルド長だけでは片付けられないので明後日にでも話をしよう、ということで今日の話は終わった。


そして今は宿屋でベッドに寝転がっている。体力的には全然疲れていないのだが、精神的に少し疲れた。自分から面倒事になりそうなことを話したからだろう。

そう言えば、悪龍を倒した時にレベルアップしたが、今回はもう見なくていいだろう。確かレベルは5000ぐらいにはなっていたはずだ。もうそろそろレベルアップしなくてもいいのにな、と今日の悪龍の戦闘を思い出しながら思う。完全にオーバーキルだったからな。ただのファイアーボールで。

俺は、異世界バトルの面白さがなくなったので少しがっかりするのだった───。

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