努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

四十九話 瑞希の弱点は脇腹だった

今俺達はラーメンリァーメンを食べ終わったので、次に何をするのか相談していた。だが瑞希が一言も喋らない。顔を真っ赤にして固まっているのだ。
何があったのだろうか?と考えながら瑞希に声をかけたり、前後に揺すったりしているが反応が全くない。

んー、どうしたものか。瑞希がいなければ次の予定を決めることが出来ないのにな。あ、そういえば瑞希はこそばしが苦手だった。今も変わっていないならば反応があるかもしれない。取り敢えず俺は瑞希の脇腹辺りをこそばしてみる。

「...きゃっ!?」

俺の手が瑞希の脇腹に触れた瞬間、可愛らしい叫び声をあげながら勢いよく飛び上がった。よし、効果があったようだ。それに瑞希の弱点も変わっていないと分かった。これが一石二鳥というものか。

「いきなり何するの!?」

「瑞希に全く反応がないから、こそばしたら戻ってくるかな?と思って」

俺がそう言うと、頬を膨らませながらむーと言っている。可愛い。やばい、可愛すぎて死にそう。まあ、こんな馬鹿な考えはさておき次の予定だ。

「さて、どこ行きますか」

「お城」

瑞希は即答した。その瞬間エリスの顔が見るからに変わる。瑞希が答えてからエリスの顔が変わるまでの所要時間、約0.1秒だ。さすがの反応速度。
と、そんなことよりも、なぜ城なのだろうか。まだまだ日はくれていないのに。

「城に戻るのはいいんだが、何か用事でもあるのか?」

「え?なんで?」

瑞希が首を傾げる。更に瑞希は何言ってるの?みたいな目で俺を見ている。そんな瑞希の目に怯まず俺は理由を説明する。

「まだこんな時間なのに城に戻るって言うから、何か用事でもあるのかな?と思って」

「お城に戻りたいのは疲れたからだよ。特に用事はないよ」

「そっか、じゃあ戻るか」

俺がそう言うと、隣にいたエリスが顔を勢いよく左右に降り始める。そんなに城には行きたくないのか。たしかに平民からしてみれば、王様の住んでいる城に行くなんて恐れ多いのかもしれない。というか、恐れ多いのだろう。

だが、エリスはただの平民ではない。というか、聞いた話によるとエリスはそこら辺の貴族よりは上の立場にあるらしい。なので国王様にあっても別に問題は無いのだ。

だが問題がないからと言って、会うのが緊張しないという訳では無いらしい。国王様と会っている時は常に緊張しておかないといけないからしんどいそうだ。それなら国王様に会いたくないのも分からないでもない。ということで、エリスはは別の場所に行くそうなので一旦ここでお別れだ。

そして、俺達はエリスと別れた後城へと向かった。城では適当にくつろいで、適当にご飯食べて、エーレンと喋って、適当に寝ただけなので話は省くことにする。

だが一つだけいつもと違うことがあった。それは俺が寝てしばらくしてからのことだった。俺が深い眠りについているとき、外から叫び声が聞こえた。俺はその声で一度目を覚ました。

「何の声だ?」

独り言を呟いただけなので誰かが返事をしてくれる訳では無い。お世話係エーレンはどうしたんだ?と思う人がいるかもしれないが、俺が無理やり寝かした。何でも俺が無理やり寝かせなければ睡眠時間が1時間とかになっていたらしい。それは体を壊す危険が大いにあるので、強制的にでも寝てもらったのだ。ということで俺は現状を把握できないわけなので寝ようと思う。

扉の外は何やら騒がしい。勇者様が!?や、召喚の間に!?など様々な叫び声が聞こえてくる。勇者様とは瑞希のことかもしれないが、瑞希は危険になることがないので、心配しないで寝ても大丈夫だろう。
俺はそんなことを半分眠りかけの脳で考えてから、眠りについた。



次の朝、俺は着替えてから部屋を出る。
するとそこにはなにか複雑な顔をしたエーレンが立っていた。

「どうしたんだ?」

「リョウタ様...、勇者様がーーー2人召喚されました」

「は?」

意味がわからなさすぎて思わず声が漏れた。勇者が2人召喚された。それは俺にとってかなり最悪な報告だ。なぜかと言うと、もう一度勇者を召喚するということは今の勇者に不満があるということだ。つまり最悪の場合、今の勇者を邪魔だからと殺される可能性がある。

まあないと思うが、というよりあったらこまる。だがまた2人召喚されたというのは事実だ。嘘をつく意味もないのだし。じゃあ瑞希が思ったより弱かったのだろうか?いや、そんなことは無いはずだ。護衛兼アドバイス役を引き受けた時に、瑞希はこの国で強い騎士を倒したということと、もう一つ強い魔物を倒したということを聞いた。

その魔物は召喚されてから4日ほどだった頃に瑞希が戦ってみたいと言って、無理やり戦った魔物だ。その時は最後までみんなは止めていたいが、瑞希が何故か無理を通してでも戦いたかったらしいので、やむなく戦わせたらしい。その代わりに使える限りの全戦力を瑞希の護衛につけたそうだ。
そして瑞希は大量の護衛の中、その魔物を瞬殺したらしい。過去の勇者はその魔物を倒すのに1ヶ月かかったそうだ。しかもかなり厳しい戦いだったらしい。流石は瑞希だ。

そんなことを成し遂げた瑞希がいらない子なわけがない。ではなぜ呼んだのだろうか?それが疑問でならない。

「何で勇者をまた呼んだんだ?」

「その説明は国王様が直接するそうなので、国王様のところに向かいましょう」

エーレンはそう言って俺に背中を向けて歩き出した。俺もそれについて行く。しばらく歩くと食堂に着いた。俺はそこを通り過ぎると思っていたが、エーレンは食堂の前で止まった。

「皆様ここに居られますので、どうぞお入りください」

そう言って食堂の扉を開ける。みんなということは、国王様、王女様、瑞希だろう。
俺はエーレンが開けてくれた扉から中に入ると、予想外の人物がいた。

靉麗あいり霧月むつき姉!?」

この言い方で1人は確実にわかると思うが、部屋の中にはこの世界には居ないはずの俺の姉と妹がいたのだ。もちろん妹は靉麗だ。

だが、信じられないな。この二人が勇者だとするなら、なぜこの2人なのだろうか。幾ら何でも身近な人すぎるのではないか。だがこれは現実だ。頬を抓ってもしっかりと痛みがある。俺は頭の整理が出来ずにあたふたしていると、瑞希から声が掛かる。

「取り敢えず座ったら?」

俺はその言葉に従い取り敢えず座った。だが頭の整理ができていないのでどちらにせよあたふたしているのに変わりはない。
そんな様子を見ていた瑞希が俺に、ゆっくり深呼吸、吸ってー吐くー、と言ってきたのでそれに合わせて深呼吸をする。すると少し落ち着いた。タイミングを見計らっていた国王様が、俺が落ち着いたところで口を開いた。

「アイリ殿とムツキ殿はリョウタ殿の兄弟らしいな。なら慌てても仕方ないな。取り敢えず、なぜこの2人がここにいるかを説明しようと思う」

国王様はそこで一度言葉を切って俺達を見てからまた話出した。


「最初に言っておくが、この2人は2回目の召喚で呼び出した訳では無い」

「どういう事ですか?」

「そもそも、勇者を召喚する魔法は20年に1度しか使えないのだ」

「じゃあなんで2人が召喚されたんですか?」

俺がそう尋ねると、んーと唸りながら考える素振りを見せる国王様。少ししてからこれは推測だが、と言って話し始める。

「リョウタ殿は勇者の特権スキルを持っていなかった。つまりは勇者ではなかったのだ」

「え?」

俺は思わず声を出してしまった。今までは弱かったけど一応は勇者で瑞希と一緒だと思っていたのにそれを否定されてしまった。俺は勇者でしかなかったのだろうか。
だが国王様は取り敢えず聞いてくれと言って説明を続ける。

「我々が元々召喚しようとしていた勇者は2人、だが今までは1人しかいなかった。そして今回は2人目が召喚されたのだろう。
つまり今回召喚されたどちらが勇者でどちらかが、勇者ではないという可能性がある」

確かにその可能性はあるかもしれない。
俺も少し不思議に思っていたんだ。勇者召喚されて勇者の特権を持っていない。偶偶そうなっただけかもと気にしていなかったのだが、やはり俺は勇者では無かったのか。

まあそんなことはどうでもいい(どうでも良くない)、俺の姉か妹が俺と同じで巻き込まれただけなのだ。俺は巻き込まれたとは思っていないが、傍らから見れば巻き込まれている、と思われるだろう。だが、俺もかなり弱いステータスだったが別に城を追い出された訳でもないので、巻き込まれたのがどちらであろうと一応は安心できる。

話を元に戻そう。俺達が召喚されて、瑞希だけが勇者だった。そして今回時間差で召喚されて、どちらかが勇者ということだ。
こうして考えると時間差で召喚なんてあるのだろうかと思う。俺はその事について国王様に聞いてみると、文献にはそんなこと書かれていなかったと言っていた。しかも合計4人召喚されたなんてことも書いていなかったらしい。
つまり今回が異例というわけだ。何もわからないということだ。わからないことを考えても仕方ないので、こういう現実ということで受け入れておこうと思う。

俺が色々と考えている間に、靉麗と霧月姉はこの世界の説明を少し受けたあと、ステータスに関する説明を受けていた。そして2人はその説明を受けた後で、とてもワクワクした顔でステータスと言っていた。


この後、靉麗と霧月姉にステータスを見せてもらったが、俺の異常すぎるステータスのせいで全く驚けなかったのだった───。

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