努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

四十三話 瑞希にはバレバレだった

俺達は馬車を止めて、城の中に入っていく。エリスは挙動不審になっているが、この世界の人間にとっては仕方の無いことだろう。地球でいうと、日本の戦時中に天皇と会う様なものだろう。まあ、日本の天皇とは少し違うのだが。別にこの国では国王を神としては扱っていないしな。

そんなことは置いておくとして、先程からエリスが死にそうなぐらい呼吸が荒い。

「エリス、大丈夫か?」

「ちょっと死にそう...」

エリスは死にそうと言いながら笑顔になっていない笑顔を浮かべた。国王に会うというのはそれだけ難しいということだろう。女王様はかなり簡単に会えそうだけどな。
とそんなことを考えていると城の中を案内してくれていた瑞希がいきなり止まった。

「国王様のいる部屋についたよ」

「え...」

エリスの顔が緊張を通り越して、もはや絶望しているような顔に見える。

「エリス、そんなに緊張するとストレスで死ぬぞ?」

「緊張せずにはいられないの!普通は!」

まあ、そうだろうな。俺達は異世界人だからわからないけど。そんな会話をしていると瑞希が指を一本立ててしーっ、と言った。そして俺達が静かになったところで、扉をノックする。すると中から久しぶりの国王様の声が響いた。

「誰だ」

「瑞希です。友人も連れてきていますが、大丈夫でしょうか?」

「ミズキ殿か。ミズキ殿のご友人なら入っても大丈夫だ」

そんな簡単に許可を取れるのかよ、とも思ったがそれだけ瑞希に信頼性があるということなので喜んでおこう。

瑞希のお陰で許可が取れたので、失礼します、と言って部屋の中へ入る。すると国王様は俺を見た瞬間、おぉと言って俺の方に近づいてきた。

「久しぶりだな。あまり時間は経ってないが、元気そうで何よりだ」

「お久しぶりです。国王様に頂いた資金のお陰でしっかりと生きてます」

「城を出たからといって、そんなに畏まらなくても良いぞ。今まで通りで」

「分かりました」

「うむ、それで今日は何の用で城に来たんだ?」

国王様は不思議そうに俺に聞いてくる。
確かに城を出て一ヶ月しか経ってないのに、戻ってきたら不思議だろう。しかも瑞希と。ただ俺はなぜ城に来たのかよく分かっていないので、瑞希に説明しろと言う視線を向ける。すると瑞希はその視線の意味に気づいたのか、説明を始めた。

「先日冒険者ギルドに護衛兼アドバイス役を派遣してほしいと言う依頼を出しましたよね」

「ああ」

「その依頼を受けたのが涼太と後ろにいるエリスさんです」

瑞希はそう言って、エリスを指さす。指された側はといえば、あたふたと取り乱している。あのエリスにしては珍しい。女王様の時はこんなこと無かったのにな。
そんなエリスを国王様は見て納得したように頷いた。

「なるほど、エリス殿か。確かにこの依頼にピッタリだな。この依頼は強くて信頼度があるものだしな。しかし、リョウタ殿は信頼はあるものの、強いかどうかと言うと...」

「確かにそう思いますよね。私もそう思いました。でも涼太の戦闘を見たんですけど、多分私より強いと思います」

瑞希がそう言うと国王様は目を見開いて驚いた。まあそういう反応するよな。召喚された当時すごい弱かったからな。

「すまんが冒険者ランクを聞いて良いか?」

「Aですよ」

「ほ、ほんとうか!」

国王様の表情からは信じられない、と思っているのが見て取れる。国王様からの信頼度は失いたくないので、信じてもらうために仕方なく、冒険者カードを出して国王様に見せた。

「どうやって、この短時間でそこまで冒険者ランクを上げたんだ?」

ガンッ、と机に手をつき乗り出しながら俺に質問してきたが、とても答えずらい。正直に、キマイラ15体倒しました、なんて言ったら面倒くさいことになるだろう。
だがてきとうに誤魔化そうとしたら、瑞希に一瞬でバレてしまう。なので俺は曖昧な答えを返すことにした。

「なんか魔物をいっぱい討伐してたらなれました」

「そんな簡単になれるランクじゃないはずなんだが」

「たまたまですよ」

俺がそう言うと国王様は首を傾げた。
そして、国王様はエリスの方を向いた。
それはやめろ。王女様の件でどれだけホイホイ喋ったか。国王様だったらもっと話すだろう。

「エリス殿からみて、リョウタは強いか?」

「はい、私よりも遥かに強いです」

エリスはキッパリとそう言った。
俺は内心いらんこと言うな、と思いながらエリスを睨む。まあ、そんなことで止まるエリスではない。この国は国王によって成り立っている。つまり、この国の民のほとんどは国王の言うことが最優先事項となっており、俺の睨みつけなど全く気にならないのだ。先程から何度も言っているが、それだけ国王様はすごい存在だという事だ。

まあ国王様優先というのが悪いとは思わないが、やはり俺の情報を漏らさないでほしい。日本出身としてはプライバシーの権利が欲しいところだ。俺がこんなことを考えている間にも、国王様はエリスに質問をし続けている。そして、国王様は何個か質問した後に、これで最後なんだが...と言って、最後の質問を話し始めた。

「リョウタ殿のステータスはどうなっておるのだ?」

「はい、前に見た時はえむ...」

俺はエリスがステータスを言いそうだったので慌てて口を塞ぐ。俺は冒険者カードを取り出し、ステータスを表示する。もちろん隠蔽しているものだ。そんなステータスを見て国王様は驚いて固まった。

「このレベルは...なんだ?」

国王が問いかけるが誰も反応しない。

「レベル何なんですか?」

瑞希はそう言いながら冒険者カードをのぞき込む。そして、瑞希もそのまま固まった。俺はもういいだろうと思い、冒険者カードを回収するが、瑞希も国王様も冒険者カードがあった場所をずっと見たまま動かない。数分後、2人とも復活した。

「そのレベルは何?」

瑞希も同じ質問をしてくる。レベルがどうかしたのだろうか。不思議に思いステータスで確認する。するとそこにはLv.98と表示されていた。あ...レベル変えてないんだった。忘れてたよ。

「魔物をいっぱい倒してたらこうなりました」

「キマイラとかね」

「そんなもの...なのか?」

国王様は戦闘経験があまりないのか、レベルアップの基準がわからないのだろう。誤魔化せそうだな。

「そんなものです」

「そ、そうか」

少し力強く言ったから、国王様の言葉が少し詰まった。面倒ごとは避けたいとか自分で言ってるが、今回は自分のせいで面倒なことになりかけたな。危ない危ない。
というか、瑞希がやけに静かだな。俺の行動はだいたい読まれてるからバレてるかと思ったんだけどな。よかった。


その後は何事もなく国王様とゆっくりと話しをした。そして俺達は瑞希の部屋に行くことにした。部屋の場所は国王様の部屋からかなり近く、中はかなり広かった。

瑞希は部屋に入るとベットの近くに座り、俺とエリスに座るように促す。俺とエリスは瑞希の近くに座った。俺達が座ったことを確認した瑞希が、俺に話しかけてくる。

「ねぇ、どうやって98レベルってキマイラを一体倒した程度ではならないよね」

「ま、まあそうかもな」

俺は図星を突かれ少し焦ったが、なんとか答える。やはり瑞希にはバレているだろう。なんて言ったって幼なじみだからな。

「なんで隠すの?」

瑞希は鋭い視線を俺に向けてきた。
俺はこれ以上隠しても仕方ないか、と思い隠している理由を話すことにした。

「バレたら面倒くさそうだから」

はい、これだけです。これ以外に理由はありません。瑞希は俺の答えを聞くと、キョトンとした後すぐに笑い始めた。

「やっぱりそうなんだね。予想通りすぎてびっくりしちゃった」

「ああ、面倒くさいのは嫌いだからな」

俺はそう言って笑う。瑞希も少し笑う。
エリスは空気だ。俺と瑞希は満足するまで笑った後、沈黙が訪れた。数十秒経った時話し始めたのはエリスだ。

「で、今から何するの?」

「そう言えばそうだな」

すると瑞希は、んーと唸りながら考える素振りを見せる。しばらく考えた後、何か思いついたのか、手をポンと鳴らした。

「せっかく護衛兼アドバイス役できてもらってるんだし、戦闘のアドバイスをしてくれない?」

「あー、そうだな。それはエリスに頼んでくれ」

俺はエリスに任せた、と言いながら肩に手をぽんと置く。

「なんで?リョウタも護衛兼アドバイス役だよね!?」

「俺、戦闘経験ほぼ皆無だから」

「そうなの?」

「そうなの」

「じゃあ仕方ないか。ミズキ、私がアドバイス役をやらせてもらうね」

流石はエリス、依頼はしっかりとこなす。
瑞希はエリスにありがとうございます、と言って笑顔で頭を下げている。
少しして瑞希は頭をあげて、立ち上がった。

「よし、じゃあ、移動しよっか。この城の敷地内に練習場があるからそこに行こうと思うの」

「分かった。じゃあ行くか」

そう言って俺達は瑞希の部屋を出て練習場に向かう。移動中に聞いた話なのだが、城の練習場を使えるのは騎士団長や、魔法師団長、国王騎士、1部の兵士だけだそうだ。ちなみに瑞希は勇者なので別枠である。

そんなことを聞いていると練習場へついた。練習場は観戦する場所と、練習する場所がある。俺達は今観戦する場所にいる。観戦する場所からは、模擬戦闘をしたり、魔法を撃ったりしている人が何人か見えた。

その中には、飛び抜けて強そうな人や、魔法の威力が高い人がいた。その人が騎士団長と魔法師団長なのだろうか、俺はそう思い瑞希に聞いてみると、俺の考え通りらしい。

俺は強そうだなー、とじっくり見ていると騎士団長と魔法師団長が同じタイミングで俺の方に振り返った。そして、騎士団長と魔法師団長は俺達の方に駆け寄ってきた。

「久しぶりだな、元気だったか?」

「お久しぶりですね、元気でしたか?」

「ああ、あの時の」

上が騎士団長で、下が魔法師団長である。
この2人には俺が城を出る前に戦闘の基本だけを教えてくれたのだ。俺は教えて貰っていた時、魔法師団長と騎士団長だということを知らなかったので、今とても驚いている。

「久しぶりです。お陰様で無事、元気に過ごせています」

「それはよかったです」

「ところで、こんな所に何のようなんだ?」

「瑞希が戦闘のアドバイスをして欲しい、ということで来ました」

俺がそう言うと2人は驚いた顔になった。

「ミズキ様は正直にいってすごい強い。俺も勝てないぐらいにな。そんな強い奴に教えれるのか?」

騎士団長は、申し訳なさそうな顔で俺に問うてきた。確かに俺が教えるって言ったら、驚くよな。まあ、俺が教えるわけじゃないんだけどな。という訳で、騎士団長達の勘違いを早々に解いておく。

「俺が教えるわけじゃないですから」

俺はそう言ってエリスを指さす。騎士団長と魔法師団長は俺の指の先を見て、またもや驚いている。今度は魔法師団長が問いかける。

「エリス様ではないですか?Sランク冒険者の」

「はい、そうですが」

「やっぱりそうですか!この方ならアドバイス役もバッチリですね!」

魔法師団長が言った言葉に騎士団長はうんうん、と頷いている。

「エリスってそんなに有名なんですか?」

俺がそう問いかけると、魔法師団長が反応した。

「有名も何も、Sランク冒険者の時点で全員が有名ですよ!しかも、エリス様となれば尚更です。エリス様はいくつかの町を救ったお方です」

「町を救った?」

「はい。稀に魔物の軍勢が町に押しかけることがあるんですが、小規模な町ではまず助かることはありません。助かるには逃げるか隠れるか、ですね。それなのに、エリス様は魔物が押しかけられている町に出向き、魔物を片っ端から倒していき、何度か町を救われているんです」

俺はそれを聞いてエリスの凄さを改めて知った。Sランク冒険者は強いし、凄いとは思っていたが、エリスは別格だ。

救える可能性の低い場所に飛び込むなんて簡単に出来ることではない。なのにエリスはその場所に出向き、街を救っている。
これはすごい事だ。後はプライバシーさえ守ってくれれば完璧なのだが。

俺が感嘆していると、瑞希とエリスは練習場の中へ既に入っていた。俺は何をしようかな?と思い周囲をキョロキョロ見ていると騎士団長が

「俺と模擬戦しないか?」

と声をかけてきた。
俺は即答でお願いします、と答える。
これからすることもなく暇だったからすごく嬉しい提案だ。ということで俺と騎士団長も練習場の真ん中に行く。

すると模擬戦闘や、魔法を撃っていた者達が練習をやめて走って邪魔にならないように端っこに行っている。俺は申し訳ないな、と思いながら拳を構える。

「武器は拳か?」

騎士団長は不思議そうに問いかけてくる。

「はい、そうですよ。騎士団長は武器を使ってもらって大丈夫ですよ」

「舐められたもんだな」

騎士団長はそう言いながら、ケラケラと笑っている。俺は舐めてなんかいませんよ、と言ってスタートの合図を待つ。

「始め!」

魔法師団長が大きな声を上げた。
それと同時に騎士団長が走って俺に近づいてくる。騎士団長は俺の前まで来ると、剣を横から振るってくる。

俺は右手で剣をたたき落とそうとしたが、叩き落とせなかった。剣がいつの間にか俺の頭上にあったのだ。俺は急いで後ろに飛び退く。ギリギリ躱せたので安心していると、騎士団長が驚き気味に話しかけてくる。

「今のを躱せるとはな...、この1週間ちょっとの間に何があったんだ?」

「色々あったんですよ」

俺はそう言って、騎士団長の方へ軽く走る。だが、騎士団長には俺が消えたように見えている。当然騎士団長は俺がいきなり消えたことに困惑している。俺はその間に騎士団長の懐に潜り込み、腹パンを食らわせる。

騎士団長は攻撃に全く備えていなかったが、流石は団長で全身に力を入れられていて、かなりダメージが抑えられた。
だがそれでも戦闘不能程度にはダメージがはいっているだろう。


こうして、騎士団長との模擬戦闘は俺の勝ちで終わったのだった───。

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