努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

四十話 階層主は可哀想だった

下の階層へ降りるとそこは変わらず草木が生えていた。瑞希に8階層へ降りてきたからもう大丈夫だ、と声をかけると瑞希は頭を振りながら叫び気味に話し始めた。

「10階層までの敵は全部虫なの!早く10階層に行って!」

瑞希はそう叫んだ後、更にしっかりと俺に引っ付いてくる。やばい、色々とあたってる。特に胸(2回目)。俺の理性が持たない。
すぐに襲いたいぐらいだ。だが、それはダメだ。俺は無理やりは好きじゃない、というか嫌いだ。

俺が自分と戦っているとエリスが早くいこうよ、と言ってくる。俺はなんとか返事をして進むことにする。だが、今の状態はやばい。敵が出てきても戦える気がしない。
だから俺は瑞希に少し提案しようと思う。

「なあ瑞希、お姫様抱っこじゃダメか?」

これが1番大丈夫だろう。普通の抱っこなら後ろが前になるだけ、おんぶなら更に引っ付くだけ、ならばこれしかない。俺はそう思い提案したのだが、瑞希は顔を真っ赤にして、ブツブツと何かを呟いている。そして、独り言を終えると何かを決意したような顔をして俺を見てきた。

「それでいいよ、頼んでいい?」

俺はおう、と言って瑞希をお姫様抱っこする。だが、これは思っていた以上にやばかった。さっきまでは体があたってやばかったが、今回は顔が近すぎてやばい。
実際にはそこまで近くないのだが、お姫様抱っこ効果によって、瑞希の可愛い顔がとても近く感じる。更に瑞希が真っ赤になった顔で俺をじっと見つめてくるので、すごい恥ずかしい。多分俺の顔も真っ赤だろう。
なぜか、今なら唇ぐらいなら奪っていい気がする。俺がそんなことを考えていると、エリスが少し怒りだした。

「だから進もって言ってるでしょ!」

俺はエリスのその言葉でハッとして、顔を前に向ける。瑞希をずっと見ていたい気もするが、瑞希に虫を見せるわけには行かないのでとにかく集中する。

音を聞き、目で見て、鼻で臭い、肌で感じ、カンを働かせる。全神経を使い、瑞希の視界に虫が入る前に、討伐する。瑞希が目を閉じてたらいいだけの話なのでは?と思うかもしれないがそれではダメだ。瑞希には虫の音すら聞かせない。

俺は10階層に少しでも早く行くために
軽く(エリスにとっては全力)走る。
すると俺のカンが何かがいるとうったえてくる。俺は瑞希に目を瞑っとけよ、と言って全速力で瑞希をお姫様抱っこしながら走る。

そこにはハエの魔物がいた。大きさは30cm程だ。俺は剣でハエを真っ二つにして、そのままエリスのところへ戻る。
それを繰り返す事によって、瑞希には虫の音は聞こえないはずだ。

そうして、軽く(エリスにとっては全力)走ることによって10階層まで10分でつくことが出来た。そう言えば最初に8階層まで行くとか言っていた気がしたが、10階層まで来てしまった。まだ2時間半程しか経っていないんだけどな。

俺は10階層についたので、瑞希を下ろす。
もう少しお姫様抱っこしてたかったな、と俺は思ったがこの階層に虫は出ないらしいので、仕方がない。瑞希は少ししょんぼりとして、俺の手を見ていた。何故なのだろうか。
俺は取り敢えず進むぞ、と言って一本道を進む。前の階層主の時も一本道だったから階層主がいる階層は全て一本道なのだろう、たぶん。

しばらく進むと、5階層より大きな扉が出てきた。そこには大きな文字で10階層とだけ書かれている。瑞希はまだしょんぼりとしているが、扉を開けた。
その部屋は5階層と同じで真っ暗だった。俺とエリスは、前の階層の時と同じように部屋の端っこにいき、瑞希は真ん中に向かって歩いていく。すると部屋が明るくなる。地面は草で覆い尽くされており、壁も蔦が伸びている。
そして、部屋の真ん中には人型の魔物がいた。ステータス鑑定スキルで見てみると、ドリヤードという名前だ。

瑞希はドリヤードを見た瞬間、ファイアボールを打った。すると、ドリヤードは勢いよく燃えて、一瞬で消滅した。
ドリヤードは1歩も動けていない。敵ながら、少し可哀想だ。

そして、ドリヤードが消えたあと、今回もドロップがあったようで、何かが落ちた音が聞こえた。今回のドロップ品は前回と同じポーションだった。何か違う種類のものを見たいんだけどな。


俺は瑞希に労いの言葉をかけた後、下の階層へと進むのだった───。

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