努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

三十九話 ステータス鑑定スキルは優秀だった

6階層は1面に草木が生えていて、更に池もあった。この池はウォータースライムでは無く、ただの水だそうだ。もしウォータースライムの池だったら、何体ぐらいいたのだろうか。

俺はそんなどうでもいいことを考えながら歩いていた。すると、近くにあった木の枝がいきなり動き出し、その枝が俺めがけて鞭を打つように迫ってきた。

俺は驚いたせいで反応が遅れて、木の枝にぶつかりそうになったが、瑞希があと少しでぶつかりそうという所でファイアボールを打ち、木ごと燃やした。
木は勢い良く燃えた後、消滅して魔石がポトと落ちた。瑞希は木を燃やし終えたあと、俺の方に向き注意してくる。

「今はダンジョンの中なんだよ、気をつけないと。それにあんな弱い魔物に驚いてたらダメだよ」

「今の木が魔物だったのか?」

「そうだよ」

「全く気が付かなかった」

さっきの魔物は周りにある普通の木と同じ色をしており、違いが全く分からなかった。何が違うのだろうか?

「なあ、瑞希。さっきの魔物って他の木とどうやって見分けたらいいんだ?」

「魔力とか、敵意とかを放っている木があれば魔物だね」

「そんなの感じ取れるのか?」

「うん、敵意は無理だけど魔力はスキルのお陰で感知できるよ。涼太は無理なの?」

瑞希が意外そうに聞いてくる。俺はその前に気になったことがあった。確か瑞希は召喚された時に、そんなスキルを持っていなかった気がする。ならば、俺と離れていた少しの期間で習得したのだろう。

さすが瑞希、凄いな。俺は心の中で瑞希を褒めてから、瑞希に魔力を感じ取れないことを伝える。すると瑞希意外そうに返事を返してきた。

「へー、意外だね。あんなに強くなってるのに魔力を感じ取れないなんて。私が一番初めに教えてもらった技だよ。簡単に入手できるみたいだし。まあ涼太はこの世界の勉強だけして出ていったから、覚えてないのは仕方ないとして、必要なら私が教えてあげよっか?」

流石は瑞希、優しすぎる。俺は教えてください、と即答する。すると瑞希は笑顔でダンジョンが終わってからね、と笑顔で答えて、また敵に攻撃し始めた。

俺は瑞希とダンジョンが終わってからも話したり出来ることに喜びつつ、そう言えばエリスの庭の件で話があると言われていたことを思い出し、少し複雑な気持ちになった。

俺は嫌なことは忘れよう、と思いダンジョンに集中することにする。すると、ダンジョンに少し変化があった。さっきまでは無かったのだが、今歩いている場所の近くの全ての木の根元にキノコが生えていたのだ。俺はキノコをじっくり見つめてみる。するとまたも、瑞希が立ち止まってファイアボールを打つ。それは木にでは無く、キノコに向けて打っていた。キノコは燃えて黒く焦げた。そしてキノコが消滅して魔石がポトと落ちる。

俺はこのキノコも魔物だったのか、と驚く。俺にはただのキノコにしか見えなかったからだ。このキノコもさっきの木も魔力を感じ取れなければ見分けるのは難しいだろう。俺だけだったら、攻撃をくらいまくっている気がする。ただ階層が浅いから、攻撃もそこまで強くはないし、攻略はできそうだ。瑞希も攻撃をくらうと鬱陶しいから倒しているだけらしいしな。

瑞希が何体かのキノコを倒し終えたところでまた進む。キノコはそこら中に生えているが、全てが魔物という訳では無いらしい。

今度は瑞希は歩きながら、敵が攻撃してくる前にファイアボールを打っている。
その様子を見て、何故一番初めの木の魔物は攻撃させる前に倒さなかったのかと思い、瑞希に聞いてみると

「涼太が、なにか考え事してたから少し驚かそうかなと思った」

と言われた。ダンジョンで遊んでは危険だ、と俺は一瞬思うが、俺もぼーっとしてたし、そこまで危険ではないし、まあいいかと思い直す。
正直、まだ6階層なので、俺を即死させるだけの力はないだろう。と言うかあったら、それはそれで問題だ。6階層階層の木が即死攻撃を使ってくるダンジョンがあるとすれば、そのダンジョンはアホだとしか言えない。

俺はそんなことを考えていて、ふと敵の名前を聞いていなかったことを思い出した。俺はエリスに聞いてみようと思ったが、そこで瑞希がステータス鑑定について言っていたことを思い出す。

鑑定と言えば、アイテムの情報など、自分以外のステータスも見ることが出来ると言っていた。俺はそこで敵のステータスも見れるのではないだろうか、と思った。
そして鑑定スキルのあるゲームは大体がステータス画面の1番上に敵の名前が表示される。俺はこの世界のスキルはどうなのだろうか、と気になったので次に敵が出てきたら教えて欲しいと言っておいた。

5分ほど歩いていると、瑞希が立ち止まって、1本の木とその根本にある1つのキノコを指しながらあれは魔物だよ、と教えてくれたので俺は小さな声で『鑑定』と呟く。
すると8つのステータス画面が表示された。俺が何故8つ?と困惑していると、俺の呟きが聞こえていたのか、瑞希が説明してくれる。

「鑑定スキルは対象を意識して使用しないければ、半径15m以内の敵のステータスが全て表示されるよ」

「そうだったのか」

だが、今回は対象を絞りたい理由もないので全てのステータスを見てみる。
その中には名前が2種類あり、トレントとモンスターマッシュルームだった。
キノコはモンスターなのか、魔物なのか、どっちなのだろうか。俺は名前を確認できたので瑞希に倒していいよ、と言って倒してもらう。

ついでにステータスも見てみるが、高いわけでもないので省略。ただ、1つだけ面白いところがあった。トレントのAGIが0だったのだ。まあ歩けないから当たり前かもしれないが、0という数字を見ると何故か笑えてくる。
俺が1人で笑っていると、エリスに本気で引かれた。瑞希は何故か俺の方をじっと見ているだけだった。何かあったのだろうか。

俺が笑い終えると、瑞希は前を見て再び歩き始めた。この後も特に何もなく、瑞希が敵が攻撃してくる前にファイアボールを打って燃やしていくだけだった。
そして、今回も安定の30分で、階段を見つけることが出来た。


下の階層へ降りてみると6階層と変わらず、草木が生えていて、池があるだけだった。ただ、今回は横幅がさらに広くなっていた。

俺は横幅以外変わらない光景に今回もトレント達なのかな、と思っていると俺達の前に、50cmほどある、アリが壁や天井を歩いて来た。アリはかなりの数がいて、壁からも出てきていた。
正直言って気持ち悪い。俺が少し引いていると、瑞希が慌てて俺の方に走ってきた。

「虫無理!ほんと無理!涼太早く倒して!」

瑞希は大きな声で泣きそうになりながら叫んだ。そう言えば、瑞希は昔から虫が苦手だった。ただ、俺はてっきり虫が苦手じゃなくなったのかと思った。
理由としては瑞希がこのダンジョンの情報をかなり知っていたのに、なんの躊躇もなく、表情も変えずに、虫の魔物がいる階層に足を踏み入れたからだ。

俺はなぜ苦手なら、誰かの後ろに隠れたりせずに7階層に来たのか瑞希に聞いてみた。すると

「すっかり忘れてたの!とにかく倒して!」

とやはり泣きそうになりながら、少し怒りも混じらせて俺に訴えかけてきた。

そろそろ敵を倒さないと、さすがの瑞希でも完全に泣いてしまいそうなのでとにかく早さ重視で倒すことにした。まずは広範囲の魔法を使おうと思う。

広範囲魔法と言えば、俺が使える中ではエクスプロージョンしかないので、俺はすぐに『エクスプロージョン』と呟く。
すると目の前が白く光り、爆発音と爆風が周囲に巻き起こる。少しするとそれらは収まり、周りが見えるようになった。
見える範囲では、アリはほとんどいなくなっていた。
俺は残りのアリを倒すために剣を抜いて、全速力でアリに近寄り首を切り落としていく。首を切られたアリは次々に消滅していった。数は十数匹だったので、すぐに全滅させることが出来た。

その後はたまに、アリに出くわすだけだった。初めに出会ったときは数十匹いたのだが、その後に出会った時には数匹程度しかいなかった。最初に出会った時はなぜあんなに多かったのだろうか。
まあ、そんなことは考えても意味が無いので、今の状態を堪能しようと思う。

どういう状況かと言うと、俺の背中にはずっと瑞希が抱きついており、いろんな場所が当たっているという最高の状況だ。

俺はこの階層にずっといたいな、と思うが瑞希に嫌われたり、泣かれたりしたら嫌なので少し急ぎ足で進むことにした。もし嫌われでもしたら、自殺するレベルだ。
そして、今回は少し急いだおかげか20分ほどで階段を見つけることが出来た。


俺は7階層に少し名残惜しさを感じながら、下の階層へと降りていくのだった───。

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