努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

三十五話 ダンジョン近くは静かだった

レイア達と別れた後、取り敢えずヒュドラ討伐の依頼報告をした。

「さて、何する?」

俺達の次の用事は3週間ほど先に依頼があるくらいだ。それまでは特に用事がなくて暇だ。

「んー、何しよっか?」

特にすることがないのなら久しぶりにゆっくり寝たいな。

「しばらく休みにするか?」

「そうだね。やる事ないし」

よし、これで自堕落な生活がおくれる。
さて、いつまで休みにしようか?

「ギルド長に頼まれた護衛兼アドバイス役の日まで休みにするか?」

「んー、それでいっか」

こうして暫くの間休みになったのだった。



あれから約3週間たった。休みの間何をしていたかと言うと寝ていた。ひたすら寝ていたのだ。寝すぎてもう動きたくない。
だが、ギルド長から受けた依頼なのだ。行かない訳にはいかない。

仕方なく宿を出るとそこには既に馬車が止まっていた。そして荷台の方からエリスの声が聞こえてきた。

「リョウタ、遅い」

「いや、遅くないだろ」

俺はそう言って御者台にすわる。そしてダンジョンの方に馬を走らせるのであった。
ダンジョンは馬車で1時間半程度でつくそうだ。



移動中特に面白いことは無かったので説明は省こうと思う。
そんなことよりダンジョンに着いた。今から入る訳では無いが、どんな場所なのかの確認をしようと思ったのだ。
ダンジョンから500メートルほど離れた場所には店がいくつもあり、かなり賑わっていたのだが、ダンジョンの辺りはほとんど人がいなかった。

いるのはダンジョンの入口あたりの兵士のような人が2人だけだ。俺は疑問に思いエリスに質問してみる。

「いつもこんなに人少ないのか?」

「いつもはかなり人が多いよ。ダンジョンは結構人気でね。ダンジョンの魔物を倒すと魔石が確立で手に入るのよ。その魔石を売ることでお金が手に入る。しかも魔石は使い道が多いから、欲しい人からしてみれば欲しいのよ。しかも質がよければいいほど高価になる。だからダンジョンに来る人は多いのよ」

「なるほど。魔石って何に使うんだ?」

「一番多いのは魔道具かな」

「そうなのか」

俺はダンジョンって重要なんだなー、と思った。だが今はダンジョンの周りに人がいない。人気のはずなのにダンジョンの入口近くの兵士しかいない。
俺はその事についてエリスに聞いてみたが、わからないと言われたので、兵士に聞いてみることにした。
俺が兵士に近づくと、兵士が手を突き出してきた。

「今日からしばらくはダンジョンは入れないぞ」

なぜ入れないのだろうかと聞いてみると、それは言えないと言われたので俺は兵士に聞くのを諦めて、エリスのところに戻る。

「しばらくダンジョンは入れないんだって」

「え?依頼はどうなるの?」

「さー?どうなるんだろうな。まあ、明日になれば分かるだろ。取り敢えず宿探しに行くか」

俺はそう言って御者台に座る。エリスが荷台に乗ったのを確認して、馬を走らせる。
しばらく馬を走らせ、賑やかな場所に戻ってきた。
俺達はてきとうに宿をとってくつろぐことにした。2時間程くつろいでから昼食を食べに行く。

食堂に行くとエリスが昼食の後に買い物に行こう、と誘ってきたので行くことにした。なんでもダンジョン用の道具はダンジョン付近の店にしかないらしく、それを買いたいらしい。

ダンジョンの道具で一番必要なのはダンジョン用転移石だ。この石はどんな技術で出来ているのかは知らないが、ダンジョンの階層毎にセーブすることができ、一度ダンジョンの外に出てからもう一度始める時にダンジョン用転移石を使うことによって、セーブした階層からスタートすることが出来る。
さらに、ダンジョン用転移石を使えばダンジョン内ならどこからでも、入口に転移することが出来るのだとか。

この話を聞いた時、俺は1つ気になることがあった。ダンジョン用と書いているということは、地上用みたいなのがあるのかという事だ。エリスにその事について聞いてみると

「一応あるけど、かなり高いのよ。しかも移動できる距離が短いらしいの。使ったことないからわからないけど」

と言われた。正確な距離を知りたかったが、わからないと言われてしまった。

もし10キロぐらい転移出来るならかなり便利なのになと思ったが、あまり期待出来なさそうだ。でもお金に余裕が出来たらいつか買ってみようかな、と考えていると買い物が終わったらしく俺を呼んでいた。
エリスが俺の分のダンジョン用転移石を渡してくるのでお金を払い、受け取る。
ダンジョン用転移石の値段は銀貨3枚とかなり安かった。

今日はそれ以降することが無く、宿の部屋でゆっくりとくつろぐだけで終わった。



朝起きて、俺は食堂に向かう。食堂には既にエリスがいた。俺はエリスの席の前に座る。その様子を見た宿の従業員が、机に朝食を運んできた。

「エリス、朝起きるの早いな」

「そう?私もさっき起きたばかりよ」

「でも、いつも俺より先に集合場所とかにいるよな」

「まあ、早めの行動を心がけてるからね」

エリスはそう言ってから机の上の朝食を食べ始める。俺もそこで話をやめて朝食を食べる。やはり、この世界の料理は美味しい。

朝食を食べたあとすぐに、馬車に乗りダンジョンに向かう事にした。
集合場所がダンジョンの前なので、早めに行こう、というエリスの考えだ

しばらく馬を走らせた後、エリスが着いたと言ったので俺は荷台にから降りる。
降りるとそこには鎧を付けた騎士2人と


───瑞希がいた。

「え?」

俺は思わず声が出た。するとその声が聞こえたのか、瑞希が俺の方を向く。


「涼太?涼太だ!」

瑞希はそう叫びながら、俺の方に駆け寄ってくる。

「な、なんで、こんなところに瑞希がいるんだ?」

「なんでって、ダンジョンで鍛えるためだよ?」

「そうなのか」

「そっちこそなんで、こんな所にいるの?」

「ギルドからの依頼でな、秘密の人の監督役をしてほしいって言われたんだ。エリスと」

俺はそう言いながらエリスを指さす。指されたエリスは、これどういう状況?みたいな顔で俺を見ている。俺の言葉を聞いた瑞希は少し不思議な顔をしながら口を開いた。

「秘密の人って言うのはよく分からないけど、ギルドに監督依頼を出したのは私だよ」

「え?」

「依頼報酬が金貨100枚のやつでしょ?」

「うん、そうだが」

「それ私が依頼したの」

俺は一度頭を整理する。
依頼を出したのは瑞希で、多分瑞希がダンジョンに潜るからダンジョンはしばらく封鎖、しかも国の重要人物の護衛兼アドハイス役なので報酬が高い。
俺は整理を終えたところで、瑞希に声をかける。

「そうだったのか。まあ、俺とエリスが護衛兼アドバイス役だ。よろしくな。それと久しぶり」

「そうだね、久しぶり。護衛兼アドバイス役頑張ってね」

「ああ」

「ところでそっちのエリスさんとはどのようなご関係で?」

瑞希は笑顔で俺に聞いてきているが、どこか笑っていなくて怖い。それにいつもより声が低いような気がする。俺は怖がっていることを悟られないように出来るだけいつも通りの声で答える。

「え、エリスはパーティーメンバーだ。知識担当だな」

「へー、ふーん、そうなんだー」

瑞希は疑いの視線を俺に向けてくる。全く信じていなさそうだ。

「そうなんだよ。しかも、Sランク冒険者なんだ」

「へー、エリスさんすごいんだね!」

「いや、それほどではありませんけど」

エリスはそう答えた後、俺の方に近づいてくる。

「ところでこの方は?」

俺はなんと説明したものか、と考えていると瑞希が口を開いた。

「私は涼太の幼なじみで、一緒にこの世界に召喚された、新川 瑞希よ。よろしくね」

「一緒に召喚されたということは、リョウタ異世界人だったの!?しかも勇者だったの!?」

「まあ、そうだった気もするな」

「気もするじゃなくて、一緒に召喚されたじゃない。だから涼太も勇者でしょ?」

瑞希がそう言いながら俺の腕を抱きしめてくる。俺は久しぶりの瑞希を堪能しつつ、そうだなと返事をする。
エリスの方を見てみると、ブツブツ独り言を呟いていた。俺は何を言っていたのか聞いてみるとエリスは納得したような顔で返事を返してきた。

「だからそんなに強いんだなー、って言ってただけよ」

次に騎士の方を見てみる。騎士は俺の顔を知っているのか、瑞希と俺がこんなに近づいていても全く気にしていない。しばらくしてから瑞希が俺の腕から離れ、口を開いた。

「私のこと心配だった?」

「いや、全く」

「なんでよ!」

俺は今言った通り瑞希のことを全く心配していなかった。どこかで、好きな人なんじゃないのかよ!とか、好きな人なら心配するのな普通だろ!とか言ってる奴がいそうだが、瑞希は心配するだけ無駄である。

なぜ心配していないかと言うと元の世界での事が関係ある。あまり深く話すと長くなるので、簡単に言おうと思う。瑞希はピンチになることがほとんど無い。だがたまにピンチになることがある。

後から聞いた話なのだが、瑞希は昔刃物を持った殺人犯に襲われそうになったことがあったそうだ。その犯人がもう少しで瑞希にとどきそう、という所でどこからか看板が飛んできて犯人は気絶したそうだ。

他にも何回か似たようなことがあったらしいが、すべて助かっている。それよりも似たようなことが何回か起こっているのがおかしい気がする。

俺がそんなことを考えていると瑞希が俺の腕を抓りながら少し叫び気味に俺に訴えかけてくる。

「なにか反応してよ!」

俺はどう反応したらいいのだろうかと思いてきとうに返事をすることにした。

「心配する必要がないからな」

「なんでよ!」

「瑞希に助けは要らないだろ」

「いるよ!必要だよ!」

瑞希はずっと叫んでいる。俺は面倒くさくなってきたので、心配していた風に返事を返す。

「今までのは嘘だ。俺は瑞希の心配をしてたよ。恥ずかしいんだよ、言うの」

「そ、そっか。ありがとう」

瑞希は顔を俯けながら言ってきた。その後、1分ほど沈黙が続いた後瑞希が勢いよく顔を上げた。


「取り敢えず、ダンジョンに行こっか」

「そうだな」

こうして俺と瑞希は再会を果たし、ダンジョンに向かうのでだった───。

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