努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

沖 那紗加

十話 伝受スキルは優秀だった

ギルド長はギルド長室というところにいるらしく、俺達はギルド長室まで受付嬢に案内してもらう。

場所は受付の奥の通路を進んだ場所にあり、ギルド長室の扉周りの部屋の扉よりも、少しだけ豪華に飾られている。

その扉をコンコンとノックすると、中から声が聞こえてきた。

「なんだ」

「リョウタさんとエリス様をお連れしました」

受付嬢はそう答えて、扉を開く。
中に入ると、見た目40代で頬には斬られたような傷跡がある男性が、椅子に座って足を組んでいた。

俺達はその男性に席に座るように進められたので、椅子に座る。
男性は俺達が座ったのを確認したあと、自己紹介を始めた。

「私はスイレン王国支部のギルド長、グレイ・スカイトだ。今回君達を呼んだのは、2つ依頼をしたいからだ。だが、その前にキマイラ討伐の方から話そう」

「はい、分かりました」

俺は依頼を頼みたいという、面倒そうな言葉が聞こえたが、そんな事はないと信じてキマイラ討伐の話を簡単に説明し始めた。


1分後、無事に説明を終わった俺は、ため息を吐きながら、背もたれに体重をあずけた。

「キマイラが20体か...。普段なら1体なんだがな」

「そう見たいですね」

「確か、君はFランク冒険者だったな。キマイラは倒せたのか?」

「はい、何とかですけど」

俺がギルド長にそう答えるとエリスが睨んできた。俺はエリスを無視して話を始めようとすると、エリスが横から割って入ってきた。

「リョウタは何とかと言っていますが、私がキマイラを5体倒し終える前にリョウタは15体倒していました」

「おい!」

俺はエリスの言葉に驚いた。
まさか、俺が15体倒したと言うとは思っていなかったからだ。

正直言われたくなかった。
なぜかと言うと面倒くさそうだからだ。

俺は低ランクの依頼ばかり受けるのは嫌だが、目立ちすぎてギルドから直接面倒な依頼が来るのも嫌なのだ。

...まあ、Sランクとパーティー組んでいる時点で目立っている気もするが。

ギルド長はエリスの言葉を聞いて目を見開いた。

「エリス殿の話は本当かな?」

ギルド長は怪訝な表情で俺に問いかけてくる。だが、やはり面倒くさそうなので、適当に誤魔化しておく。

「ま、まあ、本当かもしれないし、違うかもしれないですね」

誤魔化すのが下手だが気にしないで欲しい。語彙力が無いんです。

というか、これ誤魔化すというより、曖昧な返事をしただけだな。
まあ、気にしたら負けなので、気にしないことにする。

だがこの返事には、出来れば面倒な依頼は受けたくないので、この返事で何とかごまかされてくれないですか?と言う意味が一応あった。

そして、俺はこの返事に小さな希望を持っていたのだが...その希望はすぐに消えた。

ギルド長が俺達を案内した受付嬢に話しかけ、ギルドカードを受け取った。
そしてギルドカードを見たギルド長は愕然とした表情になった。

「エリス殿が5体倒している間に15体倒したかは分からないとして、リョウタ殿は確実に15体倒しているな」

俺はそこでギルドカードに自分の討伐した魔物を記録する機能があることを思い出した。

そして、俺はその機能のデメリットに気付かされたのだった。

それは討伐した魔物を誤魔化せないというものだ。
本来なら誤魔化す必要はないのだが、俺のように目立ちたくない人にとっては、嫌な機能でしかない。

俺は今まで足掻いていたのは無駄だったな、とがっかりした。
そして、仕方なく本当のことを話すことにした。

「俺はエリスが5体倒し終える前に15体倒しました」

「そうか...。なぜ本当の事を言わなかったのだ?」

「面倒事に巻き込まれやすくなりそうだな、と」

「なるほど。ところでリョウタ殿のレベルを聞いてもいいかな?」

「52です」

俺はレベル位なら事実を言ってもいいかと思い本当のレベルをいった。

「キマイラ20体倒してそのレベルか...。キマイラ討伐前は?」

これは絶対に言ったらダメなやつだ。なぜならLv.7でキマイラを倒すなど普通ではないからだ。
どうやって誤魔化そうか。
俺がうーん考えていると、隣から声が聞こえてきた。

「私の記憶だと、Lv.7ですよ」

もちろんエリスだ。

「おい!」

俺はかなり強めに怒鳴ったが、エリスは全く反応しない。反応したのは別の2人だ。

「「Lv.7!?」」

ギルド長と受付嬢の声がハモった。俺は溜息をつきながらエリスが言っていることは正しいと認めた。

ギルド長と受付嬢は驚きすぎて、おかしな顔になっていた。
30秒程たちやっとの事でギルド長だけが復活した。

「普通はLv.7でキマイラ討伐など不可能だと思うのだが、エリス殿と本人が言っているから事実なのだろう」

「まあ、変ですよね」

俺は少し面倒くさ気に返事を返す。

「ああ、まあ、変だが、たまにはそういうやつもいるだろう」

「そうですよね」

「ないと思うんだけど...」

エリスがギルド長の言葉を否定しているが俺は気にしない。

ギルド長がいると言っているのだからたまにはいるという事にしたい。
これ以上は面倒そうだからな。

「まあレベルの件は置いておいて、今回の報酬だな。普通はキマイラは1体しかいないから金貨3枚なのだが、今回は20体討伐したということで2人に金貨60枚ずつ報酬として渡そうと思う」

「え?2人で60枚ではなく、60枚ずつ何ですか?」


「ああそうだが?パーティーランクがA以上のパーティーは、報酬がそれぞれに出されるようになっている」

俺はギルド長の言葉の中に初めて聞いたものがあった。

「パーティーランクってなんですか?」

「知らないのか?」

「はい」

「じゃあ説明するぞ。パーティーランクとは、名前の通りパーティーのランクだ。パーティーランクはメンバーの最も高いもののランクとなる。だから、君達はSランクだな」

なるほど、そんなルールがあるとは知らなかったな。

「だから、俺達はそれぞれに貰えるってことですよね」

「ああ、そうだ。準備するから待っていてくれ」

Sランクとパーティーを組むといい事しかないな。
俺がそんなふうに考えていると、準備を終えたのか、金貨を渡してきた。

そして報酬受け取った俺に、ギルド長が唐突に

「冒険者ランクを上げようと思うのだが」

と言ってきた。俺は正直に言ってあげなくてもいい。

今はエリスがいて適正ランクの高い依頼を受けることも出来るし、パーティーランクはSだしと、ランクをあげる意味が無い。
メリットはあるのだろうか?

「ギルド長、あげるメリットってありますか?」

その言葉を聞いたギルド長は何かを納得したような顔になった。

「確かにリョウタ殿の環境では上げる意味が無いかもしれないな。
だが、ランクを上げることでギルド経営の店でサービスしてもらうことが出来る。そのサービスはランクが高ければ高いほど良くなる」

俺はこの話を聞いて、少しいいなと思った。

今回の依頼でかなりお金を手に入れたが、それでもお金が沢山あるとは言えない。

例えば、俺は今家が欲しいのだが、どうせならいい家がいい。
そのためにはお金が必要である。
今回の報酬では全く足りない。

ならば少しでもサービスしてもらって、お金を貯めた方がいいのではないかと思ったのだ。

俺は悩んだ結果、ランクを上げてもらう事にした。

「お願いしてもいいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だ。冒険者ランクをAまで上げよう」

「え?」

「どうしたんだ?」

「今Aまで上げるって言いました?」

俺は聞き間違えたのかと思い、聞き返す。

「ああ、そうだが?」

「俺、今Fですよ?」

「それがどうかしか?私的にはSランクでもいいんじゃないかと思うがSランクは特別な試験を受けないといけないのでそう簡単には上げれないんだ」

俺は何を言っているのか分からなかった。
一番下から上から4番目のランクまで上げようと言っているのだ。このギルド長はアホなのか?と俺が思っていると、エリスが呆れたようにため息をついた。

「普通は1人でキマイラを15体倒すなんてSランクでも無理なの。それをやったとなればFランクとか関係なく、Aランク位なら簡単になれるってことよ」

「そうなのか」

俺はエリスの言葉で納得して、冒険者ランクをAまで上げてもらうことにした。

受付嬢は冒険者ランクを上げる作業に向かった。
話が終わったので俺も受付嬢と一緒に退出しようと、席を立った瞬間ギルド長に止まられた。

「リョウタ殿、最初にも言ったと思うが、2つ依頼したい事がある。聞いてほしい」

「聞き間違えじゃなかったのか...」

俺は誰にも聞こえないぐらいの声で呟いた。
俺はもう一度席に座り、ギルド長の話に耳を傾ける。

「1つ目の依頼だ。これは国から直接来た依頼だ。その依頼内容は護衛兼アドバイス役だ。その人物はステータスが高く、この国の騎士団長ですらその人物には勝てないらしい。護衛兼アドバイスをする側が負けるようでは、その人物の護衛には連れていけない、ということで冒険者ギルドの信用できて、強い者を護衛兼アドバイス役として付けたいそうだ」

「なんか、面倒くさそうですね」

「まあ、そうだな。だが報酬は高いぞ。護衛兼アドバイス役をする期間は1週間で、報酬は金貨100枚だ。それも、それぞれ100枚だ」

「すごいですねそれは。で、さっきからその人物としか言ってませんが、それは誰なんですか?」

何故わざと隠しているのか分からないが、とても気になる。

俺がギルド長の方へ視線を向けていると、ギルド長は人差し指を立てて、口元にもっていった。

「それはお楽しみだ。期待していいぞ」

少し鬱陶しいが気にしないでおこう。

「秘密ですか。エリス、どうする?」

取り敢えず俺はエリスに聞いてみた。
俺からしてみれば、すごく面倒そうなので嫌だが、エリスが依頼を受けたいと言うなら俺は受けるつもりだ。


「私は受けていいと思うよ」

「そうか、なら受けるか」

「そうか、ならばエリス殿、リョウタ殿、に頼ませてもらう。ありがとう」

俺はこうして面倒そうな依頼を1つ受けることになった。
因みに、この依頼は1ヶ月後から1週間らしい。かなり準備期間があるので、準備はゆっくりでいいだろう。

俺が、準備の計画を立てていると、ギルド長がさて、と言ってまた話始めた。

「2つ目の依頼だ。これも1ヶ月後の話なのだが、各国の冒険者ギルドの代表メンバーが集まって、大会があるのだが、それに参加してほしい」

これも1ヶ月後か。予定が被ってないか?

「その大会って、護衛兼アドバイス役の日にちとかぶったりしてませんか?」

「それは大丈夫だ」

「そうですか。それでこの依頼の内容は、俺達に代表メンバーになって大会に出てほしいということですか?」

「ああ、そうだ」

「その大会って何をするんですか?」

「それぞれの冒険者ギルドの代表同士で戦うんだ。参加人数は5名以下となっている。もしかすると、2人対5人で戦う可能性もある。もちろん報酬は出るし、優勝すれば賞金が出る」

なるほど、各国の冒険者に会えるのか。これはいいかもしれない。
後は、参加人数だな。人数差で不利になったら嫌だからな。

「このギルドからは俺達だけしか出ないんですか?」

「まだ、依頼してはいないが5人にするつもりだ」

「そうですか」

俺は、この依頼に結構興味を持った。だが、エリスの確認は必要だ。

「エリス、どうする?」

「んー、どうしよ?その前に報酬はどれ位ですか?」

「参加するだけで金貨5枚。優勝すれば金貨100枚。これは均等に分配することになっている」

「つまりは5人で出て、優勝すれば金貨20枚ずつと。私は受けてもいいと思うよ。一度他のギルドの人とも戦ってみたいし」

「そうか、じゃあ受けるか」

俺達はこうして依頼を二つとも受けたのだった。

依頼内容は、また今度聞くことになったので、今日はギルドカードを受け取って帰ることにした。
ギルドカードを見るとしっかりとAランクになっていた。

俺達はギルドカードを受け取った後、冒険者ギルドをでた。

エリスはすることが無いらしいので、家に帰った。
だが、俺にはすることがある。
それはスキルを習得することだ。

だが、今回取得したいスキルは1人では取得できない。

ならばどうやって取得するのかというと、スキルを教えてくれる店に行けば取得できるかもしれない。

かもしれないと言うのは、条件があるからだ。
条件とは教える側が持っていないスキルは教えられないということだ。

なぜ教えられないかと言うと、他人に教える時に教える側は『伝受』というスキルを使う。

この『伝受』の効果は自分の持っているスキルの取得方法が理解できるようになる、というものだ。

だからもし教えて欲しいスキルを教える側が持っていなかったら、教えてもらえないのだ。

ところで、スキルの取得方法は一定以上上達する事じゃなかったのか?と言うツッコミを入れている人もいるかもしれないが、それは一部を除いてである。

例えば、魔法はスキルに無ければ使うことが出来ないのに、火属性魔法の取得条件を一定以上上達する事にすると、使えないのに一定以上上達するという、矛盾が生じるのだ。
だから、魔法などは取得条件が変わってくるのだ。

その取得条件を伝受を持っている人は理解することが出来るのだ。
そして、他人に教えることが出来る。

冒険者ギルドの近くには、伝受してくれる店がいくつかあった。
その中から適当に店を選び、中に入った。店の中では1人の女性が座っていた。

その女性は身長は160センチほどで、赤髪を腰のあたりまで伸ばして、スタイルは普通ぐらい。そして目も服装も赤色だった。

「スキルを教わりたいんですけど、隠蔽スキルって持ってますか?」

俺が今回取得したいのは言った通り、隠蔽スキルだ。

いつ、誰にステータスを聞かれても大丈夫なように偽のステータスにしておこうと思ったのだ。

俺の言葉を聞いた女性は、コクリと頷いた。

「持ってるわよ。隠蔽スキルなら銀貨3枚ね」

「分かりました」

俺はそう言って、銀貨3枚を渡す。すると女性は椅子から立ち上がって奥の部屋へと入っていき、俺を手招きで呼んでいる。

俺は女性の入っていった部屋にはいる。そこは机と椅子があるだけだった。

「今から隠蔽スキルの取得条件を教えるわね。どっちかというと今回は取得方法ね。自分の魔力で身体全身を覆うだけよ」

「それだけですか?」

「そうよ」

俺は一度確認してから、魔力で全身を覆う。すると脳内に直接


『スキル 隠蔽 Lv.0を取得しました』

と響いた。俺は入手できたことを確認して、女性にお礼を言って店を出る。

だが、今のままでは意味が無い。
隠蔽スキルとはステータスを隠すものだが、見破られることもある。

それは自分の隠蔽スキルのレベルが相手の鑑定スキルのレベルより低かった時だ。

同レベルだった場合は見られる場所はランダムらしい。
すべて隠せる場合もあれば、すべて見られる場合もあり、幾つか隠せる場合もある。

つまりはレベルを上げなければ隠蔽しても鑑定スキル持ちには意味が無いということだ。

だから俺は今日から寝るまでずっと身体強化を使うことにした。
今まではエリスと一緒にいる時は身体強化は使っていなかった。

なぜかと言うと、身体強化を使った状態で一緒に歩いたらエリスがしんどそうだったからだ。
だが今日からしばらくは身体強化使い続けるので、エリスには頑張ってもらおう。

俺はそんなことを考えながら宿に向かう。俺がキマイラ討伐に向かう前に使っていた宿だ。


宿には五分ほどでつき、自分の部屋の扉をそ開いた瞬間脳内に直接

『隠蔽がLv.1になりました』

と響いた。
俺はにこりと笑って、ベットに飛び込んだ。

俺はその後やることもないので部屋でのんびりくつろいだ。

そんなこんなで、一日を過ごしていると、夜には全てのスキルレベルが1以上は上がっていた。さらには隠蔽スキルに関してはLv.4だった。

スキルを確認した後、俺は身体強化を解除して寝ることにした。



朝起きて身体強化を発動する。
最近、身体強化を常に発動しているので、身体強化が無いと身体が重く感じる。

そして、身体強化を使った後は、身だしなみを整えて、エリスの元へ行く。依頼を受けるためだ。

「エリス、冒険者ギルド行くぞ」

「分かった」

エリスはいつも準備が早く、俺がエリスの元に行く時には必ず準備を終わらせている。


冒険者ギルドにつくと、何故かいつもより騒がしかった。

「どうしたんだろ?」

「さー?なんだろうね」

エリスに聞いてもわからないみたいだし、近くにいる冒険者に聞くことにした。

「あの、なんでこんなに騒がしいんですか?」

「お、お、お、王女様が、今冒険者ギルドに来てるんだ!」

え?王女?レイア!?聞き間違えだよな。面倒な予感しかしないぞ。

俺の予感が外れていることを願って、こっそり冒険者ギルドを出ようとすると、昨日聞いた覚えのある声が後ろから聞こえてきた。

「リョウタ殿!待ってください!」

ギルド長だ。

「なんですか?」

「王女様がお呼びです」

あっ、やっぱりか...。
俺は大きくため息をついた。
その頃周りはと言うと、そこらじゅうザワザワとしている。
正直うるさい迄ある。


こうして俺は強制的に目立たされたのだった───。

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