幼女転生から始める異世界解読術
第42話 追憶の果て〜定義〜
エルフの二人と私と同じ人間がこの国にやって来たのはある雨の日だった。人間のうちの女の子の方が槍で貫かれたらしく、大怪我を負ってしまったらしい。その子を病院へと運び、私は三人から事情を聞いた。
「そういえばスービニアから少し進んだ先にエルフの里があるとは聞いていましたが、三人はそこから来たんですか?」
「うん。龍之介と奏は事情は少し違うんだけどね」
「事情?」
「俺と奏は……この世界の人間じゃないんだ」
その時私は初めて異世界という存在と、夏目龍之介と柊奏いう人間に出会った。
そもそもこの世界に私のような普通の人間がいる事の方がほぼ稀で、こうして出会えたのも奇跡に近かった。おまけに自分とは住んでいる世界が違うというのだから、私は二人にすごく興味があった。
「それでスズさんにお願いしたいんだけど、私達をしばらく匿ってほしいの。きっと奴らの追っ手がこの辺を探していると思うから」
「それならきっと問題ありませんよ。誰もこの森には入ってこないと思いますから」
「それはどういう事だ」
「あ、私本で読んだことある。確か輪廻の森という森があって、そこに迷い込んだら出てこられなくなるって噂があるの。それがもしかして」
「はい。この国を囲っている森です」
誰が勝手に付けたのか分からないこの森の悪名。常にその中で暮らしている私達にとっては、何故呼ばれているのか、とかそう考えてしまう。
でもそれを裏付けるようなことばかりが起きているのも事実だった。
「そういえばこの国って子供がやたらと多いけど、それも理由の一つなのか?」
「はい。実は私この家の近くで森に迷い込んでしまった子供達を養う施設を経営しているんです」
「迷い込んでしまった子供達? かなりいると思うけど」
「それが輪廻の森である事を裏付けているんですよ、皮肉にも。でも決してここの子供達は親がいないわけではないので、孤児ではないんです」
「でも家に帰れることは」
「まず無いですね」
だから私達が彼らの母となってこうして平和に暮らしている。ここなら争いの火の手も回ってこない。だからこの世界では一番平和な国でもあるのかもしれないと思う。
「この国にいる間はぜひ皆さんにも手伝っていただきたいんです、この施設の仕事を」
だから三人の身の安全を守るの簡単だった。ここに好き好んで入ってくる人間なんていない。彼らみたいな例外を除けば。
「それくらいは手伝うよ。そうでもしないと申し訳ないし」
「えー、私は働きたくないよ」
「文句を言うな」
こうして私の日常は、少しだけ変わり始めた。
のちに親友と呼べる人達が一緒に暮らし始めた事によって……。
■□■□■□
「あなたは……夏目龍之介さんですよね?」
俺はその言葉にすぐにはいとは答えられなかった。今ここで答えてしまったら、彼女がどういう反応をするのか分からなかったからだ。
ユウというエルフの中に、夏目龍之介という存在がいる。
かつての友達がが今ここに二人が一つになっているかの状況を知った時、一体彼女はどんな……。
「答えないんですね、リュウノスケさん。でもあなたには悪いかもしれませんが、いつかはこうなると知っていたんです」
「え?」
いつかはこうなると知っていた? それはまさかとは思うが……。
「預言書ですよ。私にとってはそれが紛れももない絶望的な話なんですよ」
「どうして預言書にそんな事が」
「預言書が示すのはこの世界の確かな未来。まさか人間の形になるとは思っていませんでしたが、それは変わることのない定義なんですよ」
一般的に言わせれば、確かにそれが預言書の定義でもあった。だからそれが記されていることは不思議な事でもなかった。
ただ、俺が気になるのは、
「じゃあスズさんは知っていて今日まで一緒にいたんですか?」
それを知っておきながらどうして彼女はずっと一緒にいたのか。先日ずっとユウ達に会えずに一人ぼっちだった事を嘆いていた。でもそのユウですらも、本来のユウではないと知っていて、どうしてそこまで彼女はユウと俺の事を……。
「信じていなかったからですよ、預言書を」
「でも確かな未来だって」
「確かな未来だとしても信じられないものだってあるんですよ。リュウノスケさん、あなたがどうして何も覚えていないのかは分かりませんが、本来今の状況は起きてはいけないものなんですよ! それなのにどうしてあなたは……」
転生が起きてはいけないもの。
ましてや他人の体に魂を移すだなんて、本来ならあってはいけないもの。それは確かにそうかもしれないと思っていた。ティナのあの反応の仕方を見たらなおの事。
「あなたは何事もないように生きているんですか!」
そしてスズの反応もまさにそれだった。
「リュウノスケさん、よく考えてください。あなたがユウちゃんとして生まれ変わったという事は、本来のユウちゃんの魂が失われたという事なんですよ」
「でもそれは既にユウが亡くなっていたからであって」
「なら、考え方を変えましょう。もしリュウノスケさんを転生させるために、ユウちゃんが亡くなったと考えたらどう思いますか?」
「え……?」
ユウという子が俺の為に死んだ……?
「そういえばスービニアから少し進んだ先にエルフの里があるとは聞いていましたが、三人はそこから来たんですか?」
「うん。龍之介と奏は事情は少し違うんだけどね」
「事情?」
「俺と奏は……この世界の人間じゃないんだ」
その時私は初めて異世界という存在と、夏目龍之介と柊奏いう人間に出会った。
そもそもこの世界に私のような普通の人間がいる事の方がほぼ稀で、こうして出会えたのも奇跡に近かった。おまけに自分とは住んでいる世界が違うというのだから、私は二人にすごく興味があった。
「それでスズさんにお願いしたいんだけど、私達をしばらく匿ってほしいの。きっと奴らの追っ手がこの辺を探していると思うから」
「それならきっと問題ありませんよ。誰もこの森には入ってこないと思いますから」
「それはどういう事だ」
「あ、私本で読んだことある。確か輪廻の森という森があって、そこに迷い込んだら出てこられなくなるって噂があるの。それがもしかして」
「はい。この国を囲っている森です」
誰が勝手に付けたのか分からないこの森の悪名。常にその中で暮らしている私達にとっては、何故呼ばれているのか、とかそう考えてしまう。
でもそれを裏付けるようなことばかりが起きているのも事実だった。
「そういえばこの国って子供がやたらと多いけど、それも理由の一つなのか?」
「はい。実は私この家の近くで森に迷い込んでしまった子供達を養う施設を経営しているんです」
「迷い込んでしまった子供達? かなりいると思うけど」
「それが輪廻の森である事を裏付けているんですよ、皮肉にも。でも決してここの子供達は親がいないわけではないので、孤児ではないんです」
「でも家に帰れることは」
「まず無いですね」
だから私達が彼らの母となってこうして平和に暮らしている。ここなら争いの火の手も回ってこない。だからこの世界では一番平和な国でもあるのかもしれないと思う。
「この国にいる間はぜひ皆さんにも手伝っていただきたいんです、この施設の仕事を」
だから三人の身の安全を守るの簡単だった。ここに好き好んで入ってくる人間なんていない。彼らみたいな例外を除けば。
「それくらいは手伝うよ。そうでもしないと申し訳ないし」
「えー、私は働きたくないよ」
「文句を言うな」
こうして私の日常は、少しだけ変わり始めた。
のちに親友と呼べる人達が一緒に暮らし始めた事によって……。
■□■□■□
「あなたは……夏目龍之介さんですよね?」
俺はその言葉にすぐにはいとは答えられなかった。今ここで答えてしまったら、彼女がどういう反応をするのか分からなかったからだ。
ユウというエルフの中に、夏目龍之介という存在がいる。
かつての友達がが今ここに二人が一つになっているかの状況を知った時、一体彼女はどんな……。
「答えないんですね、リュウノスケさん。でもあなたには悪いかもしれませんが、いつかはこうなると知っていたんです」
「え?」
いつかはこうなると知っていた? それはまさかとは思うが……。
「預言書ですよ。私にとってはそれが紛れももない絶望的な話なんですよ」
「どうして預言書にそんな事が」
「預言書が示すのはこの世界の確かな未来。まさか人間の形になるとは思っていませんでしたが、それは変わることのない定義なんですよ」
一般的に言わせれば、確かにそれが預言書の定義でもあった。だからそれが記されていることは不思議な事でもなかった。
ただ、俺が気になるのは、
「じゃあスズさんは知っていて今日まで一緒にいたんですか?」
それを知っておきながらどうして彼女はずっと一緒にいたのか。先日ずっとユウ達に会えずに一人ぼっちだった事を嘆いていた。でもそのユウですらも、本来のユウではないと知っていて、どうしてそこまで彼女はユウと俺の事を……。
「信じていなかったからですよ、預言書を」
「でも確かな未来だって」
「確かな未来だとしても信じられないものだってあるんですよ。リュウノスケさん、あなたがどうして何も覚えていないのかは分かりませんが、本来今の状況は起きてはいけないものなんですよ! それなのにどうしてあなたは……」
転生が起きてはいけないもの。
ましてや他人の体に魂を移すだなんて、本来ならあってはいけないもの。それは確かにそうかもしれないと思っていた。ティナのあの反応の仕方を見たらなおの事。
「あなたは何事もないように生きているんですか!」
そしてスズの反応もまさにそれだった。
「リュウノスケさん、よく考えてください。あなたがユウちゃんとして生まれ変わったという事は、本来のユウちゃんの魂が失われたという事なんですよ」
「でもそれは既にユウが亡くなっていたからであって」
「なら、考え方を変えましょう。もしリュウノスケさんを転生させるために、ユウちゃんが亡くなったと考えたらどう思いますか?」
「え……?」
ユウという子が俺の為に死んだ……?
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