幼女転生から始める異世界解読術
第33話 そこに書かれしものは
輪廻の森に入りこみ、迷った結果小さな国へとやって来た俺。そこで出会ったスズと共に、孤児院の手伝いをする事になった訳だが……。
「しんどい」
「女の子がそんな言葉言っちゃダメですよ」
「あ、すいません」
と自然とそんな言葉が出るくらいハードな日々を過ごしていた。過ごしていたとは言っても、まだあれから三日しか経っていない。体力には多少の自信があると自負しているのだが、なにぶん体が体なのでハードなのだ。
まず朝。
スズさんが朝食を作っている間、子供達を起こす。なかなか起きない子もいるので、まずこれで一苦労。その後掃除や子供達と遊ぶ訳だが……。
(オママゴト……)
これはどこの世界へ行っても共通なのか分からないが、この世界の子供も遊びは女の子はオママゴト、男の子は外遊びだった。俺も自然な流れで、女の子のグループに属した訳だが、ここで一つ問題が起きる。
(二十歳の人間がする事じゃないよな、絶対)
俺が二十歳の成人男性である事だ。いくら何でも年にも限界があるし、小さい頃は外で遊んでばかりだったのでこんな経験は一度もなかった。
だから……。
「お、おかえりなさい、あなた?」
「何かユウちゃん、動きがぎこちない」
こんな奥さん役をやれと言われても、そんなの無理だった。
(黒歴史になりそうだなこれ)
それが夕方まで続き、気がつけば夜。
色々な意味で遊び疲れた俺に降り注ぐのは更なる重労働。子供達を寝かしつけるのも大変だし、色々と後片付けもあってたくさんの事に気を回す。そしてそれらが一息ついた頃にはもう夜も更けて……。
あれ?
これ悪循環じゃないかと思い始めた四日目の夜中。いつも通り寝床につこうとしたその時の事だった。
「ユウさん、起きていますか?」
スズが部屋を訪ねてきた。この四日間一度もなかった事なので、俺は少しドギマギしながらも起きていると返事を返す。するとスズは部屋に入ってきた。
「疲れているのにすいません。仕事には慣れましたか?」
「全然ですよ。むしろスズさんはよくこれを一人でこなしてきましたよね」
スズは隣に座ってくる。その手には例の預言者が握られていた。
「昔からこういう事が好きだったので慣れてしまったんですよ。あ、それでこれが約束の品です」
そしてそれを何のためらいもなく渡してきたスズ。俺はそれを受け取る。
「いいんですか? こんなにあっさり」
「ユウさんはちゃんと約束を守ってくれましたから。私も守ります。それに」
「それに?」
「ユウさんがちゃんとお話をしてくれるまで、働いてもらいますから」
「え?」
まさかこの人、俺の事を……。
「って何を言っているんですかね私。ちゃんとこうしてユウさんと話をしているのに」
「そ、そうですよね」
気のせい……だよな? いくら何でも。
■□■□■□
その後二人きりの談笑が続く中で、スズがこんな事を俺に聞いてきた。
「そういえば私、ユウさんに聞きたい事があったのですが」
「聞きたい事?」
「初めて会った時から思っていたのですが、どうしてユウさんはこの預言書にこだわるのですか?」
「こだわっているように見えますかね」
「はい」
そんな事までは気にしていなかったので、改めて言われるとそうなのかもしれないと感じる。
そもそも俺は、この世界を救う前に約二ヶ月前に転生してきた。最初に聞いた神様の声の手助けによって、この預言書を解読する事もできる力も手に入れた。一冊目の本の時もそうだったが、なんだかんだで見つけることに力を入れていた。
この二冊目は……。
「この預言書に執着する人を私あまり好きではないのですが、正当な理由を聞きたくて」
「正当な理由……」
世界を救うためというのは、果たして正当なのか分からない。この世界の住人からしてみれば夢物語であるかもしれない。その夢物語を現実にできるのか、それは……。
「私は……この世界から争いをなくしたいんです」
まだ分からない。でもそれでいいと思う、完璧な事なんて絶対にないのだから。
「それが理由ですか?」
「薄っぺらい理由かもしれないですけど、私はそれを叶えたいんです。その為に旅もしていたんです」
「その最中でここに迷ってしまったと」
「はい」
言葉にするのは難しいかもしれないけど、ちゃんとスズには伝えたかった。今の俺の意思を。
「そんな小さい体で大きな目標を持っているんですねユウさんは。少しだけ羨ましいです」
「羨ましいだなんてそんな」
「でもだからこそ、ユウさんにはお伝えしておかなければなりません」
「え?」
「あなたのその意思、砕かれたくないならこの預言書は読むべきではありません」
「それはどういう」
「他の預言書がどうなのかは分かりませんが、ここに書かれているのは絶望です」
「絶望?」
「あなたの意思を砕く絶望です」
スズのその言葉を聞いて、俺は思わずゾッとしてしまった。
絶望
たった二文字でしかないんこの言葉に、底が知れない闇を見た気がした。決して拭えないような、とても深い……闇。
「ヒッ」
俺は気がつけばその本を手から落としてしまっていた。
「しんどい」
「女の子がそんな言葉言っちゃダメですよ」
「あ、すいません」
と自然とそんな言葉が出るくらいハードな日々を過ごしていた。過ごしていたとは言っても、まだあれから三日しか経っていない。体力には多少の自信があると自負しているのだが、なにぶん体が体なのでハードなのだ。
まず朝。
スズさんが朝食を作っている間、子供達を起こす。なかなか起きない子もいるので、まずこれで一苦労。その後掃除や子供達と遊ぶ訳だが……。
(オママゴト……)
これはどこの世界へ行っても共通なのか分からないが、この世界の子供も遊びは女の子はオママゴト、男の子は外遊びだった。俺も自然な流れで、女の子のグループに属した訳だが、ここで一つ問題が起きる。
(二十歳の人間がする事じゃないよな、絶対)
俺が二十歳の成人男性である事だ。いくら何でも年にも限界があるし、小さい頃は外で遊んでばかりだったのでこんな経験は一度もなかった。
だから……。
「お、おかえりなさい、あなた?」
「何かユウちゃん、動きがぎこちない」
こんな奥さん役をやれと言われても、そんなの無理だった。
(黒歴史になりそうだなこれ)
それが夕方まで続き、気がつけば夜。
色々な意味で遊び疲れた俺に降り注ぐのは更なる重労働。子供達を寝かしつけるのも大変だし、色々と後片付けもあってたくさんの事に気を回す。そしてそれらが一息ついた頃にはもう夜も更けて……。
あれ?
これ悪循環じゃないかと思い始めた四日目の夜中。いつも通り寝床につこうとしたその時の事だった。
「ユウさん、起きていますか?」
スズが部屋を訪ねてきた。この四日間一度もなかった事なので、俺は少しドギマギしながらも起きていると返事を返す。するとスズは部屋に入ってきた。
「疲れているのにすいません。仕事には慣れましたか?」
「全然ですよ。むしろスズさんはよくこれを一人でこなしてきましたよね」
スズは隣に座ってくる。その手には例の預言者が握られていた。
「昔からこういう事が好きだったので慣れてしまったんですよ。あ、それでこれが約束の品です」
そしてそれを何のためらいもなく渡してきたスズ。俺はそれを受け取る。
「いいんですか? こんなにあっさり」
「ユウさんはちゃんと約束を守ってくれましたから。私も守ります。それに」
「それに?」
「ユウさんがちゃんとお話をしてくれるまで、働いてもらいますから」
「え?」
まさかこの人、俺の事を……。
「って何を言っているんですかね私。ちゃんとこうしてユウさんと話をしているのに」
「そ、そうですよね」
気のせい……だよな? いくら何でも。
■□■□■□
その後二人きりの談笑が続く中で、スズがこんな事を俺に聞いてきた。
「そういえば私、ユウさんに聞きたい事があったのですが」
「聞きたい事?」
「初めて会った時から思っていたのですが、どうしてユウさんはこの預言書にこだわるのですか?」
「こだわっているように見えますかね」
「はい」
そんな事までは気にしていなかったので、改めて言われるとそうなのかもしれないと感じる。
そもそも俺は、この世界を救う前に約二ヶ月前に転生してきた。最初に聞いた神様の声の手助けによって、この預言書を解読する事もできる力も手に入れた。一冊目の本の時もそうだったが、なんだかんだで見つけることに力を入れていた。
この二冊目は……。
「この預言書に執着する人を私あまり好きではないのですが、正当な理由を聞きたくて」
「正当な理由……」
世界を救うためというのは、果たして正当なのか分からない。この世界の住人からしてみれば夢物語であるかもしれない。その夢物語を現実にできるのか、それは……。
「私は……この世界から争いをなくしたいんです」
まだ分からない。でもそれでいいと思う、完璧な事なんて絶対にないのだから。
「それが理由ですか?」
「薄っぺらい理由かもしれないですけど、私はそれを叶えたいんです。その為に旅もしていたんです」
「その最中でここに迷ってしまったと」
「はい」
言葉にするのは難しいかもしれないけど、ちゃんとスズには伝えたかった。今の俺の意思を。
「そんな小さい体で大きな目標を持っているんですねユウさんは。少しだけ羨ましいです」
「羨ましいだなんてそんな」
「でもだからこそ、ユウさんにはお伝えしておかなければなりません」
「え?」
「あなたのその意思、砕かれたくないならこの預言書は読むべきではありません」
「それはどういう」
「他の預言書がどうなのかは分かりませんが、ここに書かれているのは絶望です」
「絶望?」
「あなたの意思を砕く絶望です」
スズのその言葉を聞いて、俺は思わずゾッとしてしまった。
絶望
たった二文字でしかないんこの言葉に、底が知れない闇を見た気がした。決して拭えないような、とても深い……闇。
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