幼女転生から始める異世界解読術

りょう

第24話 獣人達の国

 世界を変えるための旅へと出た俺達四人。最初の目的地は獣人の国、スービニア。
 野宿をしながらひたすら歩き続ける事はや三日。ようやくその目的地らしい場所が見えてきた。

「もしかしてあそこに見えて来ているのが……」

「うん。あそこが私達の故郷」

「久しぶりに来たけど、相変わらず変わってないわねここも」

 サスティアのように大きな建物は見えないが、自然の中に建設された形をしていた。辺りは木々にに囲まれていて、マイナスイオンとかが体に入ってきそうだ。

「ここが獣人達の国……」

 まだ中には入っていないが、その周辺でもラーヤ達と同じような容姿をしている人が何人か通過している。エルフや人間である俺達が帰って珍しいようで、ちらほらとこちらを見てくる。

「この国だとエルフとか珍しいの?」

「そこまで珍しくはない。多分通る人達が見ているのはユウ達じゃなくて」

「ラーヤ様が帰って来たぞー!」

 サシャルの言葉を遮るかのように、辺りに声が響き渡る。

(ラーヤ様?)

 聞き間違いでなければ今、誰かがそう言った気がする。

「はぁ……。恥ずかしいからやめてほしいんだけどなぁ」

 ラーヤが溜息を吐きながらそう呟く。おいおい、そう言いながらも満更でもなさそうじゃないか・

「ラーヤ、これはどういう」

「説明はあとでする。それより入るわよ」

 ラーヤを先頭に俺達はスービニアへと足を踏み入れる。だが踏み入れると同時に、沢山の獣人達に囲まれた。

「な、何?」

 俺は突然の事に動揺する。こういう時って逃げ場がなく捕まって、牢屋に閉じ込められるという展開だが、誰も俺達を攻撃してくる様子がない。むしろ、その獣人達は俺たちを前にして跪き始めた。

 そして。

『おかえりなさいませ、ラーヤ様』

 とラーヤ、もとい一緒にいる俺達に向けてそう言ったのだった。

 何だこれ。

 ■□■□■□
「えー! ラーヤがスービニアの王女様?!」

「そんな柄じゃないわよ私は」

 俺達がラーヤに案内されたのは、この国の一番大きな建物。そこでラーヤは何とこの国の王女、つまりアーニスと同じ地位の人だという事が判明した。先程の国民達の反応もそれで頷けるが、そんな身分には到底思えないので、驚きを隠せない。

「サシャルは知っていたの?」

「知らないわけがない。ラーヤが昔からの幼馴染だし」

 初めて二人と会った時はてっきり初対面同士だと思っていたのに、昔馴染みだったとは……。

「じゃあどうしてその王女様があんなところにいたの?」

「ちょっとサスティアに用事があったのよ。ほら、出会う前日に来ていたって言ったでしょ?」

「確かにそれは言っていたけど」

「つまりそういう事よ」

 つまりあのラーヤとサシャルのちょっとした小競り合いは、たまたま起きたことではなく、昔馴染み同士のいつも通りのやり取りだったらしい。

(あんなに真剣になっていた自分が馬鹿らしいな)

 仲良しな雰囲気なんて全く見られなかったけどなぁ……。

 うーん、それにしても。

「何じろじろ見ているのよ」

「何かそう見えないから」

「それはよく言われる。私もこっちにいることの方が少ないし、図書館の地下に勝手に家を作っちゃうくらいだから」

「そういえばそうだったね」

 あれのせいで余計に違和感に気づかなかった。そもそもあの時点ではまだ十日程しか経っていないのに、よくあそこに作れたなと思う。

「それにしてもすごく慕われているんだねラーヤ。あんな風に出迎えられて、いい国だね」

「残念ながらそうじゃないのよ。ね? サシャル」

「うん」

「どういう意味?」

「さっき入った時に気づいたと思うけど、獣人達の国とはいってもその括りから更に細かい括りで成り立っているの。私とサシャルがその例よ」

「つまり兎と犬,さらにもっと細かく種族が分かれているって事?」

「そういう事。この国は統一されているようで全く統一されていない。だから国の中でも争いが起きているの」

「そんな……」

 ここで俺は初めてあの神様の言葉を思い出した。この世界は争いが絶えない世界だと。表向きは何もないように見えるけど、実際はラーヤが言っていたような争いが起きている。それをきっとラーヤは嘆いている。

「ならどうして、二人は一緒にいるの?」

「相変わらず容赦のないことを聞いてくるわねユウニは。まあ、それは確かにもっともな疑問だけど」

「私とラーヤはそんなの関係ないと思っている。それを大切な人が教えてくれた」

「へえ」

 でもそれが一番だと俺は思う。細かく分けたら違うかもしれないけど、それでも同じ獣人だ。それが当たり前だと言いたいが、その当たり前が通じないから争いが起きてしまう。それはどこの世界に行っても変わらない。

「私もラーヤもどうにかならないかって考えて今日まで動いてきたけど、それでも分かってくれる人は少ない」

「どうして理解できないのかな」

「それは……難しい問題だね」

 だから解決策が見つかるのも時間がかかる。それはまるで雲を掴むような感覚と変わらない。

「でも私は諦めていないよ。今日もそのために来たんだから」

 そんな空気を払うかのように宣言するラーヤ。

 今日……も?

「もしかしてこうして帰郷したのって」

「ユウ、そしてユウニにも協力してもらって、この国の問題を解決に近づかせるためよ」

 やっぱりそうだったか……。

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