非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の格ゲーと俺の五連敗

百四十一話





【新転勇人】





結花の想い人が遊びに来てから数日がすぎた。
親父はあの後「新しい冒険が待っている!結婚式には戻る!」と言い残しどこかへ行ってしまった。
最終的にはいい話していい親父風吹かせて帰ったけどそのせいで僕の彼女である新天円香さんは――

「お義父さますごいです!はぁ〜家族になるのが楽しみです!きっと広い知識で私たちを導いてくれますよ!」

まるで教祖様を信じる狂信者のような戯言を抜かしていた。
だが一つだけ安心できているところがある。
今のところは「勇人くんも挨拶しましょう!」とか言われてないということだ。
実際はすでに家族公認みたいなところあるから妥協してくれているのだろうか。
「勇人くん勇人くん!」
帰宅途中の今、俺の隣でわきゃわきゃ騒いでいた円香が数歩先へ行き、振り返っては二ヘラ〜と柔らかな笑みを浮かべた。
どうしてこんなに機嫌がいいんだろう。
円香の機嫌がいつもより良いときってなにかが引っかかるんだよなぁ。
「私かくげー?やってみたいです!ガチャガチャーって!」
ガチャガチャってアケコンのことかな?
格ゲー苦手だから手出さなかったけど、円香とやるなら互いに初心者だしいい感じになるかもな。
「んじゃあ二人で強くなろうか」
「はい!」
財布を確認し、ある程度のお金があることを確認する。
まぁ英ちゃんが二人いれば足りるだろう。
「あ、そういえば結花さんの恋はどうなりました?」
「あー……まだ好きみたいだよ。兄としては結花が幸せならどんな男でも任せるつもりだけど」
「そうですか……」
何か気になることでもあるのだろうか?
さっきまでより、声のトーンが明らかに下がっていた。
「まぁだからこそ結花を泣かせたりしたら許さないけどね」
「あ!知ってますそれ!ネットとかで言ったらイキリって言われるやつです!」
「イキリ言うな!!」
確かにイキってるみたいだけどさ!
「もう!行くよ!」
「はーい♪」
俺へ笑いかけている円香へ駆け寄り、手を引っ張って駅前のゲームセンターへと向かった。





【新天円香】





「また勝ちです!!」
「ちょっと円香さん強すぎやしませんかね」
やり始めてから五連勝です!
初めて勇人くんにゲームで圧倒しています!
それにしてもこのゲーム簡単ですね!
勇人くんが起き上がる瞬間にショーリューケン?を打ち込めばずっとループさせられます!
「円香起き上がる瞬間に昇竜は卑怯だよぅ……」
「ガードすればいいじゃないですか!」
「投げてくるくせに!!」
勇人くんが悔しがってます!
これは嬉しすぎますね……。
「もう帰りましょうか」
次までにこっそり練習したいですし、お金かかりますからね。
「そうだね。充分楽しめたし、日が暮れそうだしね」
勇人くんはそういうと私の手を取ってくれました。






【新転勇人】






やっぱり頭良いと格ゲーは上手いんだなぁ。
タイミングとか完璧だったもん。
文字通り手も足も出なかったわ。
「勇人くん勇人くん!次は違うキャラでやってみたいです!」
「そうだね、次は絶対勝つからね!」
頭に一瞬待ちガイルが浮かんだのは何としてでも忘れることにしよう。


夕暮れ染まる帰り道。
俺たちは手を繋ぎ、今日の日の幸せを噛み締めながら、駅前の通りを歩いていた。
他愛もない会話をしながら、何気なく、歩幅を合わせて。
周りにはカップルもちらほら見えた。
通りはそれぞれの喋り声が途絶えないような空間になっていた。
「勇人くん。私たちってカップルに見えますかね?」
「………………さぁ?」
辺りを見回す。
身長差のあるカップルだったり、美男美女のカップルが多かった。
「見えてるんじゃない?見えてたら嬉しいね」
「そうですねぇ」
円香の声を流すように聞き、再び周りに目を配る。

――俺の正面を視界が捉えたときだった。

見覚えのある一人の男を見つけた。
親父が帰ってきた日に家に遊びに来ていた結花の想い人だ。

そして――隣には男より少し背の低い女が歩いていた。
髪が長いことだけは分かるが、いかんせん後ろからだから女の情報は少ない。

ただ、後ろからでもわかること。
それは、

「二人とも手を繋いでますね」

円香も気づいたようで、視界に入れてしまった情報を口に出す。
「あの方どういうつもりなんでしょうか。ちょっとお話してきます」
俺の手を離し男の方へと近づいてこうとする円香。
そんな円香の手を取り制止させる。
「だめ!」
「なんでですか!結花さんへ、私の妹へ失礼なことをしたんですよ!?」
「違うよ、話しかけたとしても、俺たちアイツの名前すら知らないんだから相手にされないよ」

そう。
俺たちはあいつの、あの男の情報を持っていないのだ。
「知らない人。証拠でも出せ」なんて言われたらおしまいだ。
「だからここは我慢。ここからどうするかは俺が考えるから」
円香を俺の隣へ引っ張りこむ。
「俺、じゃなくて俺たちですよ。私の未来の家族を傷つけるなんて許せませんから」
「そっか……ありがとう」
えっへんと胸を張り(張れる胸などない……言ったら殺されるが)頼もしいことを言ってくれる円香。
こういう時に一緒になって、親身になって考えてくれる円香は世界一の女性だと思う。
間違いない。
「それじゃあ早く帰りましょうか」
「そうだね。長居する必要も無いしね。」

俺たちはその場を去るため、振り返り来た道を戻って――


振り返り、俺たちの瞳は最悪を捉えた。


「なんで……」
「なんで結花さんが……?」


それは、流れる人の中で唯一動きを止め、俺たちの奥、あの男へと視線を向けている結花の姿だった。
「結花――」
俺が声をかけた時には遅かった。
駆け出した結花を止めるには遅かったのだ。
脇目も振らず、一心不乱にあの男へと駆けていく。

「なんで!!?」

最初の言葉であろう。
駅前であるため、広告の音や路上ライブの歌声、そして何より行き交う人々の声があったため、うっすらとしか捉えることの出来ない結花の声。

振り向くと、毛先をくるくるといじりながら男へ喋りかけている女と、表情を動かさず、ただ単に結花を見つめるだけの男がいた。

「かわ…………そだったの!?」
途切れ途切れだが聞こえる声。
繋がれた円香の手がギュッと、力のこもったものになったのを感じた。
目を向けると唇を噛み締めながら、悔しそうに、自分たちが何も出来ないことが心底悔しそうに結花を見守っていた。

男の隣の女が再び口を開いた。

男は何やら考えているようで、変わらず動きを止めていた。

「……し…………きだったのに……」

聞き取れるのは結花の悲しみにくれた声のみ。


そして、男はやっとこ口を開いた。
その時初めて男の声を聞き取ることが出来た。

しかし、それは耳を疑うようなセリフで、同時に時が止まったかのような錯覚を得た。


「知らね、行こうぜ」


と。







ff14には気をつけろ。
時間がいくらあっても足りない。

私からは以上だ。





コメント欄に出現したのはいいけどなにしよう。
なんかありまする?

「非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

  • Karavisu

    よし殺ろう。明日の正午に東京駅で集合!

    1
  • 猫ネギ

    核分裂弾用意したぞー

    2
  • クロエル

    浅見くんはそんなに嫌いじゃなかったけど
    この新キャラは殺意を感じた

    2
  • 影の住人

    糞野郎に真正なる鉄槌を。紙のような頭のしゃべる悪人絶対なる粛清を 。

    0
  • 大橋 祐

    あれ? 結花って返事したっけ?

    1
コメントをもっと見る / 書く