非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のカンストと俺のポップコーン疑問

九十四話





【新転勇人】





「おぉぅ…………」
パークに入場して俺は息を呑んだ。
流れる人の波、そして周りでは多言語が行き交うカオスな感じになっていた。
それはまるで……
「人がゴミのようですね!!」
「思ったことすぐ口に出しちゃったねうん」
周りの人が二度見してるからね?
多分「何言ってんだよ」って一回目見たら「えまって可愛い」って二回目見るってことだろうな。
「勇人くん!見てください!ミ○キーですよ!ミ○キー!」
「なんとか今まで“夢の国”とか言って誤魔化してたのに全部言っちゃったね?」
「勇人くん!宇宙山乗りたいです!!」
「あ、そういう方向で行くのね、おっけおっけ」
俺は円香に引っ張られ、周りの男に「なんであいつが……」みたいな目を向けられながら思った。



めっちゃ悦に浸れるじゃん♪









「2時間待ちだって」
「レッツゴーです!」
ルンルンで最後尾に並びに行った俺たち。
円香は可愛くキャラメルポップコーンを抱えながらもしゃもしゃと食べている。
微笑みながら頬にポップコーン詰め込むのめちゃ可愛い。自慢したい。主に全世界へ。

「ね!勇人くん!これ!私レベルカンストしたんです!」

「え゛」

俺でもカンストしてないのに?
「裁縫師カンストです!新しくチャイナドレスとか作れるようになったんですよ!」
「そ、そっか」
楽しそ〜に画面を見せてくる円香。
カンストって……俺でもあと二億経験値くらい足りないんだけど。
「あ、新しいスキルとかは?」
「あ!この前のあ、あ……あぷで?で敵の防御を80%削るスキルが増えました!」
なん…………だと……?
「火力職のいない私たちのパーティーでは結構使えますよね!」
「うぅ……うっ、っ……っ……」
「勇人くんどうしたんですか!?」
「……いや、円香が火力職なんて言葉を使う日が来るなんて……うっ……感動してるのよ……」
本人はそんなつもりないだろうけど、遠回しに俺の火力が出てないって伝えられてるんだけどね。
「勇人くん私が勇人くんを助けられるんです!」
「円香……強くなったね……っ……」
僕ぁ嬉しいよ。
一緒にゲームできる彼女が新天円香だってことだけでもすごいのに、そんな彼女が成長していくなんて…………ハッ!これが父性か……ッ!
「…………勇人くん……」
「ん?」
円香が何かを訴えるような目で見てくる。
あ、分かったぞ。
いつの間にか携帯はしまってるし、ポップコーンの蓋も閉じてるし。

「飽きてきちゃいました」

唇を動かすだけで発したかのようなポツポツとしてかわいらしい声でとんでもないことを言ってきた。
「飽きてきたって……まだ1時間以上あるよ?」
「そうなんです……だ、だからといってはなんですが、」
円香はポップコーンの蓋を開けポップコーンをひとつ俺へ手渡すと、
「あ〜んしてください」
顔を真っ赤に染めながらそんなことを口走った。
円香は気づいてないのだろうか。
さっきから後ろの男性四人組グループから鋭い視線を飛ばされていることに。
それにその人たちだけではない。ここにはすごい数の人がいるのだ。まさにゴミのように。
なのに円香は……、
「ぁ〜」
気がついたら手が動いていた。
ポップコーンを円香の口に持っていっていたのだ。
「んふ〜おいし〜い!」
多分どこかで、円香の口内をエロい目で見る奴がいるのを恐れたのだと思う。
あ、俺?
そりゃあ少しエロいと思ったよ?
「円香さん?さすがにこんな大衆の面前で大胆な行動は避けて頂けると」
「あ、そうでしたね、ごめんなさい、つい」
確かに俺に告白してきた時も俺の机の前まで来て普通に周りに聞こえちゃうくらいの声で愛を叫んできたもんね。
あれはマジ焦った。
「はーやとくん♪」
「ん?――ぅんぐっ!」
楽しそうな声で読んできた円香の方を向いた瞬間口にポップコーンを突っ込まれた。
甘い。
この甘さはなんの甘さだろうか。
突っ込まれた時に少しだけ入ってきた気がする円香の指先が甘いのか。
些か疑問ではある。
後者だった場合、いくら彼女といえど女性の指の味を感じてしまったわけだから俺はもう変態として今後生きていくしかない。
前者だった場合はちょっとだけ、ちょーーっとだけ残念な気もするけど普通の人間として生きていける。
さてどっちが正解だろうか。


「んむんむ」


――待て!!!

俺へポップコーンをくれた手で今円香はポップコーンを食べたのか……?
いや……円香ならやりかねん。
今の円香なら十二分にありえる。
あぁ……時の流れって残酷だよね……新天円香をここまで変えてしまったんだもん。

俺はもやもやとした気持ちで、ポップコーンを頬張る円香を眺めつつ、待ち時間を過ごした。











はい、ここまでが最新話になります!
教えてくれた方ありがとう!
多分コメントなかったら数ヶ月放置だったかも(笑)

次の更新は水曜!

改めましてこの度は本当に申し訳ございませんでした!

至らぬ点もありますが今後ともよろしくお願い致します。

あ、システムにあるか分かりませんが、この小説が更新された時に通知が来るような設定ができれば、それをしとくと井戸へ暴言を吐くことができるかもしれませんよ?

コメント

  • Karavisu

    甘すぎる!

    1
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