非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のねこぱんちと俺の嫌いなバカップル

八十八話





【新転勇人】





祝日のあと、つらい。
今日は金曜日。
一日だけ学校行く力を振り絞るなんて不憫だよ……。



と。学校に行く前までは思っていました。



「勇人くん!今日もやりましょう!ぬーぶにならないように!」
隣で円香が笑ってくれるまでは!
「そーねー、ぬーぶにならないようにねー」
「そうですっ!」
返答がおざなりになってる気がするけど仕方ないよね、見てるだけで幸せなんだもん。
「あー!勇人くんってばさっきから話に集中してないですね!?」
「な、なぜバレた!!」
俺の偽装工作は完璧じゃッ!?
「やっぱり!…………昨日のことですか?」
声のトーンが下がり、さっきまでの雰囲気とは打って変わって真面目モードの円香がそう呟いた。
昨日…………花咲のことか。
昨日の夜みたいに気を遣わせるのも悪いな。
「全然大丈夫だよ、心配ない。」
「そうですか。なら良かったです……」
円香が隣でほっと息をつくのを感じる。

俺の彼女が超絶良い子な件について。

「むっ!じゃあ何に気をとられてたんですか!女の人ですか!女豹ですか!」
なぜか「にゃう」っと招き猫みたいなポーズをして俺へ鋭い視線を向けてくる。
本人は怒ってるアピールだろうけど、可愛くて仕方がない。
愛おしい。

「いやね?円香が可愛いなぁと思って」
それを聞き、カーッと上気する頬を抑えて睨みつけてくる円香。
猫みたい。
「うぅ…………」
そしてさっきのように手を構えたと思ったら――
「ねこぱんち!!」
と、まるで猫の甘噛みのようなパンチが飛んできた。

…………もう何だろうね。
俺街中でイチャついてるカップルだったり、駅の改札の前でキスしてるようなバカップル嫌いだったのね?

完全に今それと同じことしてるよね。
道端でかわいい彼女と周りを気にせずじゃれ合うって。
正直これ以上冷静になったら恥ずかしさのあまり奇声を上げながら走り始めるくらい極限。
「勇人くん!私と目を合わせてください!!」
そう言って火照った顔をこちらへ向け上目遣いでかわいく睨みつけてくる。
それにしてもなんで目を合わせるの?

「・・・」(じーーっ)
「・・・」(じーーっ)

「いいでしょう。」
「なにがッ!?」
つい結構な声出しちゃったじゃん!
一体今何を見てたの?俺の目の奥の闇でも見てた?
「うそだったら嫌なので、じーっと目を見ただけでーす♪」
怒ったり照れたり愉快になったり。
今日の円香さんは感情の起伏が激しいようです。




【新天円香】




「おはようございます」
「おはよう円香」
私が教室に入ると、待ち構えていたかのように真結が私へ挨拶をしてくれました。
「どうかしたんです?」
「私たち幸福部の初の校外活動の話が舞い込んだのよ!」
幸福部。
それは私が不じゅ……清く正しい動機で発足した部活で、大雑把にいうと「全ては勇人くんのために!」って部活です!
そんな幸福部へ校外活動の話?
私は席につき荷物を置いて耳を傾けます。
「一応、みんなが幸せに楽しく過ごせるようにボランティアとかしますよーって語ってる部活でしょ?だから先生に体育祭のポスターを商店街に貼ってきてって頼まれたの」
真結が心底めんどくさそうに言いました。
言葉運びからしてかなり嫌なんでしょうね。校外活動。
「でもいいじゃないですか!みんなとお外で過ごせるんですよ!」
「んーまぁそうだけどね?最近肌寒いし……ね?」
「真結…………もしかしてめんどくさいだけですか?」
「うぐっ……そ、そんなわけにゃいよ?」
「ふふっ、真結らしいですね」
私は勇人くんへ『放課後校外活動があるみたいです』と連絡し、再び真結との会話を始めました。

「あっ!そういえば勇人くんの新しい写真。手にはぁーってやって手を温めてるやつなんだけどどうす」
「買いです」
「食い気味だねぇ、毎度あり!」




 




井戸のあとがきが消えた…………。

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