従妹に懐かれすぎてる件

きり抹茶

★四月十九日「従妹と外堀」

 昼休み。
 今日もいつも通り遥香ちゃんと舞緒ちゃんと一緒にお弁当を広げていた。舞緒ちゃんは私と二人きりになりたいらしいけど、なんだかんだで三人で過ごす日々が続いている。

「むっふふーん♪」

 今日の遥香ちゃんは終始嬉しそうな表情をしている。今もニヤケ顔全開だ。

「水窪さんキモい。私の視界に入らないで」

 舞緒ちゃんも遥香ちゃんに対しては相変わらずの塩対応。内容も段々辛辣になっているような気がするけど……気のせいかな。

「またそんな事言って〜。でも舞緒っちも余裕でいられるのは今のうちだよ〜?」
「…………どういう事?」
「ふっふっふ。なんとウチは昨日、彩ちゃんのお兄さんに会ったのだよ!」
「何!?」

 急に目を見開く舞緒ちゃん。こんなに驚いている顔を見るのは初めてだ。

「あ、舞緒ちゃん箸落としてるよ!」
「水窪さんが……彩音の……お兄さんと……うががががが」

 舞緒ちゃんはどうやら私の声も聞こえないらしく、その場で硬直してしまう。彼女が床に落としてしまった箸を拾って元に戻してあげたが、私の顔は見ようともしない。これは大変な事態だ。

「舞緒ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。水窪さん、外堀から埋めていくなんてズルい……。私も彩音のお兄さんと会う……」
「え、ゆうにぃと……?」

 舞緒ちゃんも会いたかったのかな? それなら言ってくれれば良かったのに。

 私の頭の中はモヤモヤだけど、遥香ちゃんは依然として晴れやかな顔をしていた。

「あら〜? 別にウチは彩ちゃんだけを狙ってる訳じゃないんだよ? 舞緒っちも大好きだからね!」
「やっぱキモい。早くなんとかしないと……」

 待って。ちょっと私にはよく分からない展開になってるけど……どういう事なの?

「ねぇ遥香ちゃん。私を狙ってるって……?」
「え!? いや、その、これは違うの。ほら、射的で狙いを定めて……みたいな?」
「射的?」
「彩音。水窪さんは気持ち悪いから放っておいて私とお弁当食べよ?」
「でも……」

 私は三人でお弁当を食べたい。でも今日の舞緒ちゃんと遥香ちゃんはいつもよりギクシャクしているように見える。と言っても舞緒ちゃんが一方的に拒否してるだけなんだけど。

「彩音は私の事嫌い……?」
「え、全然そんな事ないよ! 私は舞緒ちゃんが好きだよ?」
「…………しゃあ」

 小さなガッツポーズを決める舞緒ちゃん。もちろん私はとして舞緒ちゃんが好きだ。もうこんなにも仲良くなってるし当たり前である。

「あ、ウチ思い付いたかも。舞緒っちと彩ちゃんがくっつけば見事な戯れが……。攻めと受けはどっちでも良さそうだし。良い、凄くイイ! これは美味しいよ!」

 遥香は何やら一人で呟いている。私の名前も聞こえたような気がしたけど……何を言っているのだろう?

「……彩音。私にお兄さんを紹介して?」
「え!? いくら舞緒ちゃんのお願いでもゆうにぃは渡さないよ?」
「な……! そ、そういう意味じゃない。その……水窪さんは危険だから彩音のお兄さんに早く知らせるって意味で……」
「ちょっと舞緒っち! ウチの扱い酷すぎない!?」
「…………大丈夫。私は平常運転」

 親指を立ててキメ顔をする舞緒ちゃん。二人が仲良くなる日はくるのかな……。

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