兜の将軍と亡国の姫と補佐官と

きりんのつばさ

嫁入り前日〜亡国の姫の黄昏

「はぁ・・とうとう明日ね」
私は窓の月を見ながらそう呟いてしまった。
「姫様、どうかいたしましたか?」と使用人が私に尋ねてきた。この人は私が生まれてから20年ずっと、面倒を見てきてくれた。
「明日とうとう嫁ぐのか、思っていて」


先日、私が生まれたアルシアは戦争に負けた。今まではローザリアという隣の国と同等に戦えていたが、私の国が国力が弱まっていたところに攻め込まれて、あっさりと負けてしまった。まぁしょうがない気がする。軍部や政府の中枢まで汚職が蔓延しており、優秀な人物はほとんどおらず、戦いにすらならなかった。そして私はその相手の国のとある将軍に嫁ぐ事になった。
「何で姫様が・・元はといえばあなたの母上が問題を起こしたのに」
・・別に私が嫁いで何とかなるなら、構わなかった。私の両親は敗戦が決まる前にどこかに夜逃げしていた。そして私の沢山いたはずの姉もみんないなくなってしまった。今ではこの城にいるのも私と私の女中だけになってしまった。

「今お母様の悪口を言っても、何も変わらないでしょ。でもごめんね」
「何を仰います‼️貴方様はこの国の王族の中で一番まともです‼️それは私だけではなく、この国の国民全員が知ってます。この戦争が早くに終わったのは貴方の英断あってこそです」
戦争の最中に私の両親や姉がいなくなり、こちらが戦争をする必要が無くなった時、私は国民全員に降伏するように呼びかけた。もう戦争は懲り懲りだった。
「冗談でも嬉しいよ。ありがとう」
「決して冗談ではないです‼️でも姫様はよろしいのですか?嫁ぐ相手はローザリア国の”獅子”ですよ‼️私はとても心配です‼️」
「それはしょうがないよ。私が敗戦国の姫だから、相手の国の命令には従うよ」
・・実際はとても不安だった。

通称ローザリアの獅子、名をネルフェ。近隣の国で彼を知らない者は誰もいない。今まで戦争で負けた事なく、自身も前線に出て獅子の如く、戦い相手に恐怖を植え付け、そして勝つ。その人物に私は嫁ぐ事になった。どんな人物なのか分からないというのが、一番恐い。

ローザリアの王と面談した時
「ネルフェ?ああ、あいつめっちゃいいやつ‼️あだ名こそ、獅子なんてついているけど戦いだけ獅子みたいだけど、日常はとってもいいやつ。滅多に怒らないぜ‼️」
「はぁ・・・」
「あと、すまないか1つ頼みごとがある」
「はい、何でしょうか?」
「貴方はどうかいつでもネルフェの味方であってほしい」
「??分かりました」
とよく分からない会話になった。

「明日どうなるかな・・・」

続きます


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