俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい

めんたま

大会の始まり

大会の開会式を終えた俺は今春蘭の弓道部のみんなと競技者控え室に集まっている。
  開会式の時思ったが、男はやはりかなり少ないようだ。参加人数は300人で60チームだ。一校から何チームも出場させることができるため、中々の大人数となっている。我が春蘭高校からも何チームか出ている。その中で男は数人といったところだった。
 
まあ、男女比30:1の世界だからな。単純計算でも10人だし、そこから部活に入る人数に絞られるから俺1人じゃなかっただけマシかな。

あと開会式の時に観客席を見てみたのだが、俺の家族と莉央ちゃんアンド美沙はかなり打ち解けたようで親しげに話していた。一安心だな。

「気合入れていくぞ。春蘭ファイッ!」

「「オーッ!」」

円陣を組んでいた俺たちは右京部長の掛け声に合わせて声をあげる。

うん、懐かしいなこの感覚。何故か涙が出そうだよ....。
ちなみに円陣で俺の両隣は誰かということで戦争が起きそうだったので、結局仲の良い右京部長とすみれ先輩ということになった。

「よろしく頼むぞエース。春蘭は毎年この大会では上位に食い込むものの、1度も優勝したことがないんだ。期待してるぞ」

右京部長が笑顔で俺の肩を叩く。

「あ、あはは。精一杯やらせて頂きます」

プレッシャーかけるのやめてくれ〜...

「では5人の射る順番はいつも通り、前原、片岡、吉村、沢村、私の順で行くぞ」

「「はいっ!」」

弓道は5人チームで1人ずつ、1本ずつ矢を射っていく。そうして5人全員が1本目を射終わったら、また最初の人に戻り2本目を射るといった感じだ。

チームのエースは大体、1人目か5人目だな。チームの1本目をビシッと決めるのと、チームの最後の矢をキチッと決めるのは大事だからな。


その後軽くウォーミングアップをして、ついに春蘭高校の出番がきた。うちは60チーム中42番目だったので、少し遅めだ。

入場入り口の前で5人一列に並ぶ。みんな顔が少し強張っている。緊張しているようだ。
かく言う俺も手が少し震えている。久しぶりの大会にビビってるのか俺、情けない。

....さて、久しぶりにあれをしますか。




まず全身の力を抜き脱力。
頭を空っぽに。

スーーッ
とかなり時間をかけゆっくり深呼吸。軽く目を閉じて、ゆっくり5秒数える。

1、2、3、4、5。

スッと目を開ける。




ーーースイッチが、入った。



俺の手の震えは、おさまった。


そう、これは俺のルーティーン。小学生の頃から弓道を始め10年も歴があれば嫌でも身につくというもの。
俺の人生は自慢できることなどないが、弓道だけは努力をしたと胸を張って言える。弓を持つ手が疲労骨折するまで練習した。弦を引く手が出血するまで矢を射続けた。体力が尽き倒れるほど毎日頑張った。それを、10年。なんでこんなに頑張ったのか自分でも分からない。だけど、俺は弓道に対して中途半端なことはしたくなかった。

今の動作をすることによって、俺は大会用の集中状態に意図的に入ることができる。周りの音が少し小さくなり、視界が明るくなる。的しか見えなくなり、他のものは何も気にならなくなる。

まあ中二病的に言えば、

"本気モード"ということだ。


....うん、完璧にハマった。
とてもいい感じ。
今日の俺は、きっと良い。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

なんだ?これは。

私、右京雫は今戦慄している。

その理由は、私の少し前にいる前原仁という男。

1分ほど前、いよいよ私達の出番になり、前原は少し緊張しているようだった。経験者とは言えやはりデビュー戦は怖いだろう。私は部長として、先輩として少し緊張を和らげてやろうと思い前原に声をかけようとした時、

スーーッ
と前原が息をゆっくり吸い、数秒間目を閉じた。

なんだ?自らを落ち着かせる技だろうか?

私はそんなことを思った。
そして、前原がゆっくりと目を開けた。



ッ!!?


どういうことだ?これは、一体誰だ?
目を開けた前原は数秒前とは別人だった。
目は鋭く、それでいて穏やかでどこに視点を置いているのか全く分からない。強いて言うなら何も見ていない。あと明らかに気配が変わった。これはまるで、弓道の練達者のようだ。以前一度だけ指導していただいた、範士はんし七段の先生の雰囲気に似ている。馬鹿な、ありえない。範士七段だぞ?日本、いや世界の弓道人の中でもトップクラスの人だ。

....前原、お前は一体何者なんだ......。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

さあ、行こうか。

俺の順番は1番のため、入場するのも1番目。
俺が入った瞬間、係員と観客が少し驚いたような気がする。残念ながら今俺は集中状態なのでよく分からない。

俺たちのチームが的を射る位置に着く。

心を穏やかにしていけ、波風を立てるな、まるである昼下がりの日にぼんやりと本を読んでいるような気持ちで、かと言って気を抜くのではなくある程度の緊張感は持て。気楽と緊張という相反する感情のちょうどいい場所を探れ。深く、深く気持ちを沈めろ。そして的の中心を視線で穴を開けるほど凝視しろ。イメージしろ。お前が放つ矢がそこに吸い込まれるイメージを。焦るな、逸るな。お前なら、俺なら、大丈夫だ。

........

...........


..............いけっ!



俺は満を持して矢を放った。

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コメント

  • ユーノ

    最初の方、男女比30:1だと男:女=30:1に見えるので、1:30にした方がいいかもしれないです・・・

    5
  • 死者

    めちゃくちゃ面白い笑 (○p>ω<)尸" フレーフレー☆

    10
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