気づいたら魔王軍の親衛隊やってた凍結中

AdieuJury

3話

翌日
戦争に行っていた軍隊が帰ってきた
そこですぐさま俺の紹介が始まった
俺の姿を見た兵士達は、どよめいている

「皆、紹介するわね!この人はカイト・ハヤミよ!見ての通り人族だけど、異世界人なの!まだ昨日来たばかりなのよ!」

イブのその言葉を聞いた兵士達は更にどよめいた
すると、隊長らしき人物が口を開いた

「陛下、お言葉ですがその男をどうするのですか?今の人族の勇者は異世界から来たと言われています。つまり異世界から来たその男も同じく勇者ではないのですか?」
「いいえアネス、それは違うわ。彼のステータスには勇者という称号が無かったもの」
「ですが...それは隠蔽スキルを使っている可能性は...」
「ならあなたの「上級鑑定」で鑑定すればいいじゃないの。それなら隠蔽をかけられても真実を見ることが出来るのでしょう?」
「...分かりました。そこの男よ、鑑定しても宜しいか?」

あ、この人真面目だ

「あぁ、いいぞ。でも驚かないでくれよ?そこの魔王なんて見た瞬間に固まってたからな」
「ふっ、所詮人族だ。そこまでステータスごときで驚くことなど...............は?」

なんだ、やっぱり驚くんじゃないか
顔が大変なことになってるぞ

「ここ、これは本当に貴様のステータスか?」
「そうだ」
「...そうか、よしわかった。貴様...いや、貴殿を信用しよう」
「隊長!?」

兵士達はその言葉にさらに動揺が増した

「いいんですか!?あんな奴を信用して!」
「無礼者!カイト殿は魔武器スキル持ちだ!それにアメイズスキルを二つも所有しておる!その内の一つが魔王剣だぞ?そのようなお方をあんな奴などと呼ぶことは私が許さん!」
「なっ!?...はっ、誠に申し訳ありませんでした」
「わかれば良い...異世界人よ、部下の無礼をお許しください」
「あ、あぁ。気にしてないから」

...やっぱり真面目だ

「それに、急に得体もしれないやつが目の前にいたら疑うのも無理はないし...」
「そ、それはそうですが...」
「あと、敬語はなしな。堅苦しいのは嫌いなんだよ」
「わかりま...わかった。私の名前はリドアネスだ。これからよろしく頼む。私のことは気軽にアネスと呼んでくれ」
「あぁ、よろしくなアネス。俺のこともカイトと呼んでくれ。で、一つ聞きたいことがあるんだが...」
「なんだ?」
「あ、その前に...質問に答える時はいいえって答えてくれ」
「?、なぜかは知らんがわかった」
「じゃあ、聞くぞ?お前達はこの戦争を仕掛けられたんだよな?」

真偽を発動しながら、灰斗はアネスに聞いた

「いいえ(偽)」

アネスがそう答えると、頭の上に偽の文字が浮かんだ
...ということは、本当か

「ならいい、これで俺の真偽に引っ掛かってたらこの場からすぐにいなくなる予定だったからな」
「そ、そうか。信じてもらえてなによりだ」
「それで、一つ頼みがあるんだが...」
「なんだ?」
「さっきも言った通り、俺はまだこの世界に来たばかりだ。それに俺のいた世界は戦争など一つもない平和な世界だった。だからこんなことを言いつつ戦い方をほとんど知らない。幸い覚えは早い方だし、頭の回転も早い方だから、すぐに慣れるとは思うがな」
「つまり...カイト殿に戦い方を教えろ、ということか?」
「あぁ、イブにも手伝ってもらってはいるが、相手が剣だけだと戦い方が偏る。それにネアスは親衛隊の一人で槍使いだろう?」
「!?...よく武器も見ずにわかるな...それに親衛隊のことも」
「立ち方で大体な」
「それはどうかと思うが...まぁいい。この国の救世主になるかもしれん者だ。その頼み、受けさせてもらおう」
「ありがとう」

よし、これで大体の予定はクリアした
次は...

「イブ、ちょっといいか?」
「なに?」
「この城に本がたくさん置いてあるところはあるか?」
「あるわよ、ここからすぐ近くの部屋に置いてあるわ」
「じゃあ朝のうちはそこで読み耽ってるから、昼になったら呼んでくれ。訓練場で訓練をしたい」
「わかったわ、じゃあ後でね」
「あぁ」

そう言い残して灰斗は玉座の間を離れた


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「陛下...彼は本当に何者なんですか?立ち方だけで私の役職や武器を当てるなど...」
「...私も詳しくは知らないわ。カイトと会ったのも昨日昼食を終えて自分の部屋に戻ろうとしたら、少し大きな魔力を感じて向かったら居たって感じだし...」
「そうですか...」
「あと、カイトは勇者のことを知っていたわ」
「なにっ!?」
「元の世界の友人だったそうよ」
「...そうですか。でもよろしいのですか?つまり彼は自分の友人と戦うことになるのですよ?」
「カイトが決めたことなら止めるつもりはないわ」

それならいいのだが...そういえば

「陛下、彼は誰が召喚したのでしょうか?」
「それが...わからないのよ」
「わからない?陛下の力を持ってしてもですか?」
「そうよ、私の真実を見ることが出来る『魔眼』を持ってしてもわからないのよ」
「となると...まさかゴッズスキルの使い手ですか?」
「そうなるわ...私の魔眼で見ることが出来るのはアメイズスキルまでだから」

やれやれ...少々やっかいなことになってきましたな
...まぁ、今は気にしないでおきましょうか

「彼の役職はどのようにするおつもりですか?」
「戦死してしまったピースの後釜...親衛隊の一人にするつもりよ」
「それは...わかりました」

本当なら反対したいが...スキルが強いから何も言えないな
それに、この件に反対したい理由は私情を含んでいるからな

「それでは陛下、私は自室で少し休みます。昼食の時間になったらまた来ますので」
「わかったわ、いつもありがとね」
「もったいなきお言葉でございます。では」

そう言ってから一礼をしたアネスは玉座の間から離れた


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イブとアネスが話している頃
灰斗は図書室のようなところに来ていた
そういえばいつもより今日は調子がいい気がする
この前は気持ち悪かったのに...
それに、なんでアネスの武器とかわかったんだろ?
とっさに頭に浮かんだんだよな...
普通立ち方で分かるわけないよな?
まぁいいや

「さてと...調べますか」

まずは戦争の歴史についてだな...

今から六百年前
それまで何のいざこざも無かったこの世界で初めて戦争が起きた
戦争を始めたのは人族だ
獣人族は元々好戦的だったので、すぐに戦争に加わった
魔族はその戦争に巻き込まれた形になった
この時は三つ巴の戦いで、それぞれ人族、獣人族、魔族が戦った
人族は魔族の魔法に弱く
魔族は獣人族の力に弱く
獣人族は人族の知識に弱かったため、戦争は一進一退の戦いになった
しかしある時、人族が勇者召喚という儀式に成功した
そのことが原因で、魔族はどの種族にも勝てなくなってしまったのだ
そしてその時の戦争は、魔族の敗北宣言によって幕を閉じた

今から三百年前
二度目の戦争は起きた
二度目も人族から戦争を始めた
戦争を仕掛けられた獣人族と魔族は同盟を組み、人族との戦いに臨んだ
この時も人族は勇者召喚を行ったが、結果的には連合軍が勝利することになった
しかし、互いに被害が多く、戦争に勝ちはしたものの、和解という形になった

まぁ要約するとこんなところか
ってか戦争を仕掛けてんの人族からだけじゃん
魔族も守ってるだけだし...獣人族はは戦闘狂かな?
戦争が起きたのは六百年前と三百年前、ちょうど三百年周期ってわけか
それで、三百年経った今、また戦争をしているというわけか...
あいつらがこの世界に来てから半年、行方不明になってから俺が召喚されるまでは二日
ということは六百年前っていったら大体俺達の世界での二日がこの世界での半年だから......六年と半年ってところか?
んで、三百年前は三年と少しか...
確かにその時期くらいに行方不明者がいた気がするな...
名前までは流石に覚えていないが確かにいたはず...
だけどその後見つからなかったことを考えると、元の世界には帰れなさそうだな
まぁ覚悟はしていたが...しょうがないか
俺はこの世界で生きていくとしよう

灰斗はそんなことを考えながら、様々な種類の本を読み進めていた
そして昼頃になると何百冊もの本を読み終えていた

「久々にこんなに読んだなぁ...ちょっと疲れた」

そんな独り言をしていると、誰かが来た
格好を見る限り、メイドさんだろうな

「失礼致します。カイト様、お食事の準備が出来ました」
「わかった、すぐ行く。場所はどこだ?」
「玉座の間でございます」
「わかった、教えてくれてありがとう」
「これが仕事ですので、それでは失礼致します」

そう言ってメイドは去っていった

「...とりあえず飯だな」

そのまま灰斗は玉座の間に向かった


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こ、これは......

「美味いな...」
「ふふっ、そうでしょう?」

今俺は、食事を摂っているのだが...
まずはこの肉
食感は鶏肉のようで、ちょうどいい塩加減、外はカリカリ、内はジューシー、そして肉汁が止まらない
それに加えてお好みでタレもついているんだが、このタレがまた美味い
甘ダレと辛ダレがあって、どちらもこの鶏肉みたいなやつに合う
これは日本でも相当なレベルだな...それこそ高級料理店で出てきてもおかしくないレペルだ

「これはなんの肉なんだ?」
「それはコカトリスというBランク魔獣の肉だ。コカトリスはこの付近に大量に生息している」

コカトリス?
あぁ、多分ニワトリみたいなやつか

「この肉は相当美味いな。素材のうまさもあるだろうが、これはシェフの技術が凄いから肉だけでここまでの美味さなんだろうな...」
「そう言ってもらえると嬉しいわね」
「え?」

なんでイブが喜んでんだ?
まぁ自分の家臣が褒められたら嬉しいかもしれないが...

「それ、私が作ったのよ」

...................................................え?

「こ、これを...イブが?」
「そ、そんなに驚く?」
「いや、だって魔王でしょ?」
「えぇ、でもみんな私の作る料理が食べたいって言ってるから作ってるの」
「ま、マジか...」

イブって料理上手だったんだな

「イブはいいお嫁さんになれるな」
「お!?およよよよ、お嫁さん!?」
「そうだろう?だってこんなにも料理が上手だし、自分の身近な人の面倒も見れるからな」
「.........ふふふふふ...」

な、なんかイブの笑い方がおかしくなってるぞ?

「ど、どうした?」
「はっ!だだ、大丈夫よ!心配しないで!」
「そうか?ならいいが...」
「......カイトは料理上手な人が好きなのね...練習しててよかった...」

なんなんだ?

「...カイト殿はあの反応を見て気づかないのか」
「え?何にだ?」
「...まぁそれもまた一興か、今は気にしなくていいぞ」
「?」

本当になんなんだ?
...まぁいいか
飯も食い終わったことだし、さっさと訓練しますか

「イブ、アネス、訓練よろしくな」
「あ、はい!」
「こちらこそ、よろしく頼む」

三人はそのまま訓練場に向かった


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「さて、じゃあ今日は黒炎と魔装を試してみるか」
「本当!?どんな能力か見ものね...」
「そうですな陛下」

期待する程じゃないと思うんだが...

「じゃあ行くぞ?...『黒炎』」

灰斗がそう言うと、灰斗の手のひらからは黒い炎が出てきた
灰斗はその炎を持ってきたバケツのなかの水に入れてみた
普通の炎だとすぐに消えるのだが...

「...消えないの!?」
「こ、これは驚きですな...」
「なんでもこの炎は俺が意図的に消すか聖水をかけるか対象を燃やし尽くすまで消えないらしい」
「そ、そんな炎が...かなり強いわね」
「実践では相手に当てるだけで燃やし尽くせますからね...」

二人から見ても相当強いようだ

「じゃあ次は魔装だな...『魔装・玄武』」

灰斗がそう言うと、緑の炎が灰斗の体を覆った
その炎は顔も覆っている

「これが...魔装?」
「これだけだと判断しにくいが...」
「実は魔装は四種類あってな。これは物理攻撃によるダメージを激減する魔装だ」
「なるほど...ちょっと殴ってみても?」
「あぁ、いいぞ。俺もこれの強度を試してみたいしな」

灰斗の言葉と同時にアネスは距離をとった

「では...はぁぁぁぁ!」

そしてそのまま突進して...

ゴッ!

という音がなるくらいの勢いで灰斗の魔装を殴った
しかし...

「これは結構な防御力だな。手加減したとはいえ、あれだけの勢いで殴ったのに無傷ですんでいる」
「ちょっと痛かったけどな。まぁそれだけですんだだけマシか」
「他の魔装はどのような効果なんだ?」
「朱雀が自己回復能力上昇、青龍が魔法攻撃によるダメージを激減、白虎が相手の防御力を無視した攻撃ができるってところか」
「どれも反則級に強いな...」

確かに反則級だが、欠点があるはずだ

「ちょっと試してみるか...『魔装・青龍』」

そう言って灰斗は『魔装・玄武』を発動している状態で『魔装・青龍』を発動した
すると青の炎が灰斗を覆う
だが...

バチィッ!

と音がなって、青の炎が弾かれた
緑の炎はまだ灰斗の体を覆っている
つまり...

「どうやら、二つ同時に発動するのは無理らしい。それに、纏っている魔装を解かないと次の魔装を纏えない」
「なるほど...戦い方が一辺倒になってしまうのが欠点か」
「さっきの黒炎も操作できる範囲が少し狭い、半径十メノルくらいが限界だな...」

メノルはメートルと同じだ
ちなみに、センチメートルはセノル
キロメートルはキノルとなっている

「十メノルか...すこし射程が短いな...」
「といっても、さっきの普通の形状の黒炎だとだから、工夫すれば射程は伸ばせるだろうし、近距離で戦えばどうにかなるだろうが......今は難しいだろうな」

よし、とりあえず欠点はわかった
あとは...

「アメイズスキルか...これはまた今度でいいや。まだ使いこなせなさそうだし」
「いいの?」
「あぁ、今は魔剣を使いこなせるようにしないとな。じゃあ模擬戦といくか」
「ではまずは私から行かせてもらおうか」

アネスが自分から名乗り出た

「昨日よりはマシになってると思うけど...まだ弱いから手加減よろしくな」
「あぁ、本気という名の手加減をしてやるから安心しろ」
「ちょっ!?それは安心できないから!」
「大丈夫だ、死にはしない」
「ってことは半殺しにはされるよね!?」
「心配するな、それで?ルールはなんだ?」
「不安だなぁ...ルールは魔法なしで戦うこと。勝敗は相手を気絶させるか降参させるまでだ」
「わかった、では...いでよ、我が魔槍よ!」

アネスがそう言うと、下の魔法陣から赤黒い槍が出てきた

「これが我が槍、『魔槍ゲイボルグ』だ」

見るからにすごいな...
なんて言えばわかんねぇけどすごいな...
そんなことを思いながら灰斗も魔剣を出した

「じゃあ、二人共?準備はいい?」

その言葉に灰斗とアネスはコクリと頷いた

「では...始めぇ!」
「参るっ!」
「来いやぁぁぁ!!!」

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