現人神の導べ
49 第4番世界 天使降臨?
ソコソコ距離があるが東に森があり、王国2番目に栄えるという事で冒険者ギルドもそれなりの規模があるランテース。よって建物も中々の大きさである。
まあ、ギルドの建物なんていくつの受付を用意するかと、素材の保管場所をどれぐらい用意するかで大体のサイズは決まるのだが。
走っていく勇者達を……追わず、入っていったのを見てからギルドの入り口へと転移し、中を眺める。
「あっちから悪魔達が真っ直ぐ来てるから防衛準備を!」
「えぇ? あ、悪魔ですか……?」
「……ドン引きされてるよ?」
「何でドン引きされてるのか分からないんだけど!?」
3人は受付嬢に突撃し長嶺が伝えるが、肝心の受付嬢がドン引き状態であった。
「ここは皆慌てて防衛準備に向かうところじゃないの!?」
「「いや、うん。確かにそう思ったけど……」」
「おいガキ共、ここは遊び場じゃねぇぞ」
「ガキなのは認めるけどこれが遊んでいるように見えると!?」
「他に何だってんだクソガキが! 悪魔とか何言ってやがる邪魔だ!」
「「「えー……」」」
「なんか凄いやる気が無くなった……」
「うん……防衛参加しなくていいかな……」
勇者達のやる気が一瞬で萎れていった。
まあ、悪魔の襲撃を知らせに来たのにこれなのだから、仕方ないが。
「このギルドは悪魔を知らないの? 随分と平和ボケしているわね」
「悪魔ぐれぇ知っている! 伝承の存在が何だってんだ!」
「はぁ……」
「「「えー……」」」
シュテルによるあからさまなため息と、勇者達からの何言ってんだこいつという抗議の声と、可哀想な者を見る目をしているヒルデや眷属騎士である。
「な、なんだってんだよ!」
「その『伝承』に載ってる魔王の復活の予兆がとっくに出ているのを『知っている』にも関わらず、その『伝承』に載っている悪魔をなぜ信じられないのか。頭悪くても冒険者になれるのは知っていたけれど、ギルド職員すらも頭悪くてもなれるようね。普通確認ぐらいはすると思うのだけれどねぇ? 本当だったらどうするのかしら」
『誰一人として動かなかったのだから、全員そうなのだろう?』
有無も言わさぬシュテルの存在感である。
「ガキの言う事を信じろってか!」
「同業者の言葉を信じられないと? 内容的にも真偽はともかくまず確認するべき内容でしょうに。今こうしている間にも奴らはこちらに向かってきており、こちらは防衛のための準備時間が減っているのだけれど?」
「いきなりガキが悪魔がやって来たとか言ったところで―――」
バンッ!
先程から冒険者の男がでかい声で喧嘩売ってきている最中に、奥の扉が荒っぽく開きやたら人相の悪い……簡単に言えば悪人顔のおっちゃんが出てきた。
「おい、今悪魔っつったか?」
「『し、支部長……』」
「そのガキ共が真っ直ぐ悪魔が来てるとか吐かすんだよ」
「ほう、で?」
ただでさえ悪人面が、冒険者の男と一言交わすごとに更に凶悪になっていく。
子供泣くぞあれ。
更に返事がないどころか目を泳がせるもんだから、より凶悪になっていく。
「あ゛? おめぇらがいるってことは来てねぇって事で良いんだな?」
「…………」
「こいつら確認すらしてないわよ。だから3人が拗ねてるんじゃない」
「……どっちだ?」
「あっちよ」
そして勿論シュテルが油を注ぐ……と言うか、情報を与えるだけだが。
窓からそちらを見た支部長の顔はどこまで行くのか、盗賊も真っ青なレベルに変わり、振り向いで超低い、ドスの利いた声で喋りだす。
「守備隊と魔導開発施設への連絡は?」
「私達が来てから誰一人として動いてないわ」
「何で確認すらしてねぇんだ馬鹿共が! そしたらもう少し余裕があったろうがよ! さっさと動け!」
建物が揺れんばかりの怒声でやっと慌てて動き出す冒険者達。
それを見ながらでかいため息を吐いている支部長。
残ったのはギルド職員と勇者達だけである。
ギルド職員は数人が守備隊や魔導開発施設など、街の緊急防衛時の決まりに従い知らせに走っている。
「……お前さん達……強いな? 特に嬢さん達、底が知れん」
「さて? 私達はすっかりやる気が削がれてしまったわ」
「まさか確認すらしねぇとはな……」
「私はしっかり言ったのだけれど。『本当だったらどうするの?』と」
「はぁ……ランク下げてやろうか……後給料」
とか呟きながらギルド職員を睨んでいる。職員達は大変気まずそうにしている。
だがいつまでも睨んでいても仕方ないと思ったのか、こちらに向き……なんと頭を下げた。
「少しでも戦力がほしい……すまないが助太刀頼む……」
「だそうよ?」
「……まぁ? 一応? これでも勇者だし……やるけどさー……」
「は、え? 勇者なのか?」
黙ってドッグタグを渡す宮武である。
「まじか! 全員か?」
「そうよ。こっちの大人組は召喚された世界が違うけれど、そっちの子供達に混じって召喚されたのよ」
「そう言えば結構な人数登録されてたな……まあ、強けりゃなんでも良いや」
『ちょっと待ってな』とか言いながら奥に引っ込み、少ししたら武装して出てきた。ギルド職員は元冒険者もそれなりにいるので、現役時代の装備だろう。中々年季の入った見た目をしている。
「おし、行くか! 指揮しねぇとならんからな」
「へーい」
支部長と勇者達が走っていくのを見送りつつ、いつも通り歩く。
「って来ないのか!?」
「ああ、ユニエールさんは放置で大丈夫」
「なんだそりゃ」
走って付いて来ない事に気づいた支部長に、いつもの事だと言う清家。勇者達はそのまま走って行くので、それを追う支部長。
そして支部長と3人が現場に着くと、一番後ろで優雅にティーカップを傾けるシュテルの姿が。
「あん?」
「私《空間魔法》が大得意なのよ」
「転移か!」
そうこうしているうちにぞろぞろと東の平原へと集まってくる。主にローブの人間が大量に……。同じ鎧を着た騎士達も街に最低限を残し集まる。
騎士達は防衛隊、ローブは魔導開発組だ。それ以外が冒険者達となる。
支部長は早速指揮するための仮拠点へと向かっていった。
少し離れているだけだが。
「ユニエールさんは最初様子見?」
「今回はどうしようかしらねぇ」
「あれ、珍しく迷ってる?」
「『人類と魔物種の争いに首を突っ込むのは無粋』とか『最初から手を出したら育たない』とか『定住するつもりは無いのだから、その程度なら問題ない』とかね。どうせ答えなんて無いのだから、基本的にその時の気分よ」
「ユニエールさんでも迷うんだねー」
「迷うと言うか、今日はどうしようかといった感じだけれどね。それに人の時とは違って、『できないことはしない』という選択が取れなくなった。やろうとすれば大体ができる。逆に今は『どこまでするか』という問題ね」
「なるほど……」
「まあ、本来の立場からすれば『手は出さない』一択なのだけれど。この街が滅んだところで『世界』的には大した問題じゃないし」
「結構重要な街だと思うんだけど……」
「それはあくまで『人間社会』では、でしょう? 『世界』的には問題無いわ」
「あー……見てる規模が全然違うのか」
「私も清家もどちらも『正しい』のよ。『立ち位置や見る視点の違い』ね。人間が人間社会を気にするのは当たり前。神々は世界規模で見るのが当たり前。ただ、私は前世の人だった記憶もあるから、『今日はどうしようかな?』という選択肢が生まれる」
「それが『女神の気紛れ』かー」
「そうなるわね。とは言え今回はフィーナもいるし、エリザとイザベルが動きたそうにしてるから、私は出番無しかしらね」
「やっていいのー?」
「良いわよ、数も多いし」
「よーし」
「2人も、行ってきて良いわよ」
「「畏まりました」」
「よし、丁度いいしポンポン砲先に置いてこよう」
「あ、そうだね」
フィーナは弓を取り出し、悪魔を待つ。
清家と宮武は悪魔が来る今のうちに、前線へポンポン砲を何個か設置するようだ。
そして魔導開発組の魔法使い達も準備を始める。
1人を中心に複数人が周囲に散り……中心にいる1人から巨大な、円形ではない少々特殊な形をした魔法陣が展開される。
その展開された魔法陣へ周囲に散っていた者達が配置に付き……全員が杖を掲げ詠唱を始めた。
「『聖なる光よ、守護なる者よ……舞い降りたまえ……"天使生成"』」
展開された魔法陣がエネルギーを貰い光り輝き、溶けて消えると同時に白い光が集まり、2対の翼が生えた無表情の少女達が出現する。
その少女達は全員が同じ白銀の鎧に身を包み、白い翼を広げ待機している。
それぞれ手には剣や盾、ハルバードや杖を持っていた。
「ほう、ほうほう。これはまた面白いわね」
「ドミニオンズ……天使召喚? にしては違ったような……」
「あれは《使役魔法》でも《人形魔法》に近いわね。しかしなるほど、考えたわね。儀式魔法とは」
「特殊な魔法陣形状かつ複数人で特定の配置に着き行う魔法ですね。更にチェイン狙いですか。七重奏……ですね?」
「そうね。中々高度な事をする。儀式魔法かつ同じ魔法を使用する事によるチェイン狙いで増幅。結果的に中々上の、強い個体を多数用意できると……」
「ふむ、中々有効ですね。光属性のようですし」
「対策はしていたようね」
10番世界には《使役魔法》である《召喚魔法》の中に"天使召喚"と"悪魔召喚"があるが、4番世界は天使と悪魔の扱いがそもそも10番世界と違うのだ。
この状況10番世界で"天使召喚"をした場合、召喚されたら真っ先に動き出し悪魔と戦闘を始めるだろう。
だが、今回のこれは《人形魔法》に近いため、勝手には動かない。
チェインとは複数人でタイミングを合わせ同じ魔法を使った場合に、威力が増幅する事を言う。ただしこれ、配置の指定があるため簡単とは言い難い。
今回は七重奏。威力は実に6.5倍にもなる。今回は儀式魔法での利用のため配置が特殊だが、六芒星配置の中心に1人立ち行われた。
儀式魔法に関しては勇者達からすれば《防御魔法》で4番世界だと《結界魔法》になる中級、封印がそうだ。
まあ対象によって必要人数は変わり、物によっては1人でも使えるのだが。
基本的にはより封印を強固にするため複数人で行われる。
まあつまり、人工天使と言えなくもない存在が多数空に現れた。
まあ、ギルドの建物なんていくつの受付を用意するかと、素材の保管場所をどれぐらい用意するかで大体のサイズは決まるのだが。
走っていく勇者達を……追わず、入っていったのを見てからギルドの入り口へと転移し、中を眺める。
「あっちから悪魔達が真っ直ぐ来てるから防衛準備を!」
「えぇ? あ、悪魔ですか……?」
「……ドン引きされてるよ?」
「何でドン引きされてるのか分からないんだけど!?」
3人は受付嬢に突撃し長嶺が伝えるが、肝心の受付嬢がドン引き状態であった。
「ここは皆慌てて防衛準備に向かうところじゃないの!?」
「「いや、うん。確かにそう思ったけど……」」
「おいガキ共、ここは遊び場じゃねぇぞ」
「ガキなのは認めるけどこれが遊んでいるように見えると!?」
「他に何だってんだクソガキが! 悪魔とか何言ってやがる邪魔だ!」
「「「えー……」」」
「なんか凄いやる気が無くなった……」
「うん……防衛参加しなくていいかな……」
勇者達のやる気が一瞬で萎れていった。
まあ、悪魔の襲撃を知らせに来たのにこれなのだから、仕方ないが。
「このギルドは悪魔を知らないの? 随分と平和ボケしているわね」
「悪魔ぐれぇ知っている! 伝承の存在が何だってんだ!」
「はぁ……」
「「「えー……」」」
シュテルによるあからさまなため息と、勇者達からの何言ってんだこいつという抗議の声と、可哀想な者を見る目をしているヒルデや眷属騎士である。
「な、なんだってんだよ!」
「その『伝承』に載ってる魔王の復活の予兆がとっくに出ているのを『知っている』にも関わらず、その『伝承』に載っている悪魔をなぜ信じられないのか。頭悪くても冒険者になれるのは知っていたけれど、ギルド職員すらも頭悪くてもなれるようね。普通確認ぐらいはすると思うのだけれどねぇ? 本当だったらどうするのかしら」
『誰一人として動かなかったのだから、全員そうなのだろう?』
有無も言わさぬシュテルの存在感である。
「ガキの言う事を信じろってか!」
「同業者の言葉を信じられないと? 内容的にも真偽はともかくまず確認するべき内容でしょうに。今こうしている間にも奴らはこちらに向かってきており、こちらは防衛のための準備時間が減っているのだけれど?」
「いきなりガキが悪魔がやって来たとか言ったところで―――」
バンッ!
先程から冒険者の男がでかい声で喧嘩売ってきている最中に、奥の扉が荒っぽく開きやたら人相の悪い……簡単に言えば悪人顔のおっちゃんが出てきた。
「おい、今悪魔っつったか?」
「『し、支部長……』」
「そのガキ共が真っ直ぐ悪魔が来てるとか吐かすんだよ」
「ほう、で?」
ただでさえ悪人面が、冒険者の男と一言交わすごとに更に凶悪になっていく。
子供泣くぞあれ。
更に返事がないどころか目を泳がせるもんだから、より凶悪になっていく。
「あ゛? おめぇらがいるってことは来てねぇって事で良いんだな?」
「…………」
「こいつら確認すらしてないわよ。だから3人が拗ねてるんじゃない」
「……どっちだ?」
「あっちよ」
そして勿論シュテルが油を注ぐ……と言うか、情報を与えるだけだが。
窓からそちらを見た支部長の顔はどこまで行くのか、盗賊も真っ青なレベルに変わり、振り向いで超低い、ドスの利いた声で喋りだす。
「守備隊と魔導開発施設への連絡は?」
「私達が来てから誰一人として動いてないわ」
「何で確認すらしてねぇんだ馬鹿共が! そしたらもう少し余裕があったろうがよ! さっさと動け!」
建物が揺れんばかりの怒声でやっと慌てて動き出す冒険者達。
それを見ながらでかいため息を吐いている支部長。
残ったのはギルド職員と勇者達だけである。
ギルド職員は数人が守備隊や魔導開発施設など、街の緊急防衛時の決まりに従い知らせに走っている。
「……お前さん達……強いな? 特に嬢さん達、底が知れん」
「さて? 私達はすっかりやる気が削がれてしまったわ」
「まさか確認すらしねぇとはな……」
「私はしっかり言ったのだけれど。『本当だったらどうするの?』と」
「はぁ……ランク下げてやろうか……後給料」
とか呟きながらギルド職員を睨んでいる。職員達は大変気まずそうにしている。
だがいつまでも睨んでいても仕方ないと思ったのか、こちらに向き……なんと頭を下げた。
「少しでも戦力がほしい……すまないが助太刀頼む……」
「だそうよ?」
「……まぁ? 一応? これでも勇者だし……やるけどさー……」
「は、え? 勇者なのか?」
黙ってドッグタグを渡す宮武である。
「まじか! 全員か?」
「そうよ。こっちの大人組は召喚された世界が違うけれど、そっちの子供達に混じって召喚されたのよ」
「そう言えば結構な人数登録されてたな……まあ、強けりゃなんでも良いや」
『ちょっと待ってな』とか言いながら奥に引っ込み、少ししたら武装して出てきた。ギルド職員は元冒険者もそれなりにいるので、現役時代の装備だろう。中々年季の入った見た目をしている。
「おし、行くか! 指揮しねぇとならんからな」
「へーい」
支部長と勇者達が走っていくのを見送りつつ、いつも通り歩く。
「って来ないのか!?」
「ああ、ユニエールさんは放置で大丈夫」
「なんだそりゃ」
走って付いて来ない事に気づいた支部長に、いつもの事だと言う清家。勇者達はそのまま走って行くので、それを追う支部長。
そして支部長と3人が現場に着くと、一番後ろで優雅にティーカップを傾けるシュテルの姿が。
「あん?」
「私《空間魔法》が大得意なのよ」
「転移か!」
そうこうしているうちにぞろぞろと東の平原へと集まってくる。主にローブの人間が大量に……。同じ鎧を着た騎士達も街に最低限を残し集まる。
騎士達は防衛隊、ローブは魔導開発組だ。それ以外が冒険者達となる。
支部長は早速指揮するための仮拠点へと向かっていった。
少し離れているだけだが。
「ユニエールさんは最初様子見?」
「今回はどうしようかしらねぇ」
「あれ、珍しく迷ってる?」
「『人類と魔物種の争いに首を突っ込むのは無粋』とか『最初から手を出したら育たない』とか『定住するつもりは無いのだから、その程度なら問題ない』とかね。どうせ答えなんて無いのだから、基本的にその時の気分よ」
「ユニエールさんでも迷うんだねー」
「迷うと言うか、今日はどうしようかといった感じだけれどね。それに人の時とは違って、『できないことはしない』という選択が取れなくなった。やろうとすれば大体ができる。逆に今は『どこまでするか』という問題ね」
「なるほど……」
「まあ、本来の立場からすれば『手は出さない』一択なのだけれど。この街が滅んだところで『世界』的には大した問題じゃないし」
「結構重要な街だと思うんだけど……」
「それはあくまで『人間社会』では、でしょう? 『世界』的には問題無いわ」
「あー……見てる規模が全然違うのか」
「私も清家もどちらも『正しい』のよ。『立ち位置や見る視点の違い』ね。人間が人間社会を気にするのは当たり前。神々は世界規模で見るのが当たり前。ただ、私は前世の人だった記憶もあるから、『今日はどうしようかな?』という選択肢が生まれる」
「それが『女神の気紛れ』かー」
「そうなるわね。とは言え今回はフィーナもいるし、エリザとイザベルが動きたそうにしてるから、私は出番無しかしらね」
「やっていいのー?」
「良いわよ、数も多いし」
「よーし」
「2人も、行ってきて良いわよ」
「「畏まりました」」
「よし、丁度いいしポンポン砲先に置いてこよう」
「あ、そうだね」
フィーナは弓を取り出し、悪魔を待つ。
清家と宮武は悪魔が来る今のうちに、前線へポンポン砲を何個か設置するようだ。
そして魔導開発組の魔法使い達も準備を始める。
1人を中心に複数人が周囲に散り……中心にいる1人から巨大な、円形ではない少々特殊な形をした魔法陣が展開される。
その展開された魔法陣へ周囲に散っていた者達が配置に付き……全員が杖を掲げ詠唱を始めた。
「『聖なる光よ、守護なる者よ……舞い降りたまえ……"天使生成"』」
展開された魔法陣がエネルギーを貰い光り輝き、溶けて消えると同時に白い光が集まり、2対の翼が生えた無表情の少女達が出現する。
その少女達は全員が同じ白銀の鎧に身を包み、白い翼を広げ待機している。
それぞれ手には剣や盾、ハルバードや杖を持っていた。
「ほう、ほうほう。これはまた面白いわね」
「ドミニオンズ……天使召喚? にしては違ったような……」
「あれは《使役魔法》でも《人形魔法》に近いわね。しかしなるほど、考えたわね。儀式魔法とは」
「特殊な魔法陣形状かつ複数人で特定の配置に着き行う魔法ですね。更にチェイン狙いですか。七重奏……ですね?」
「そうね。中々高度な事をする。儀式魔法かつ同じ魔法を使用する事によるチェイン狙いで増幅。結果的に中々上の、強い個体を多数用意できると……」
「ふむ、中々有効ですね。光属性のようですし」
「対策はしていたようね」
10番世界には《使役魔法》である《召喚魔法》の中に"天使召喚"と"悪魔召喚"があるが、4番世界は天使と悪魔の扱いがそもそも10番世界と違うのだ。
この状況10番世界で"天使召喚"をした場合、召喚されたら真っ先に動き出し悪魔と戦闘を始めるだろう。
だが、今回のこれは《人形魔法》に近いため、勝手には動かない。
チェインとは複数人でタイミングを合わせ同じ魔法を使った場合に、威力が増幅する事を言う。ただしこれ、配置の指定があるため簡単とは言い難い。
今回は七重奏。威力は実に6.5倍にもなる。今回は儀式魔法での利用のため配置が特殊だが、六芒星配置の中心に1人立ち行われた。
儀式魔法に関しては勇者達からすれば《防御魔法》で4番世界だと《結界魔法》になる中級、封印がそうだ。
まあ対象によって必要人数は変わり、物によっては1人でも使えるのだが。
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