現人神の導べ

リアフィス

01 プロローグ

アトランティス帝国、神都アクロポリス。
その中央には大神殿と呼ばれる建物があり、1階の一部のみ……礼拝堂は一般開放されている。
他は政を行う者達が使用し、それと同時にこの国を治める女帝の家である。

大神殿の中庭は立入禁止となっている。窓から眺めることは可能だ。
何故かと言うと……アトランティス帝国建国の女帝のお気に入りの場所だから。
お気に入りと言うか、むしろ大体そこにいる。
大神殿中庭で優雅にティータイムを楽しむ女帝は、非常に絵になる。

シャンパンゴールドの綺麗な、サラサラの腰まである長い髪。
背に純白の、見ただけでふさふさだろうと分かる大きな翼。
銀の瞳と万華鏡のような綺羅びやかな瞳のオッドアイは、光を発している。
明らかに見た目は幼い少女なのに、少女らしからぬ落ち着きと雰囲気を醸し出す。
動く芸術品とも言える整った顔と体を持つ。

ただ、女帝だけではない。女帝を護る女騎士2人と、女帝のお世話をする者が1人側に待機している。身じろぎ一つせず、ただ真っ直ぐ立っているのだ。

ちなみに、アトランティス帝国は建国から既に400年近くとなっている。
そして中庭で優雅にティータイムを過ごす少女は、建国の女帝だ。
つまり、400歳を超えている。
女帝の名はシュテルンユニエール。アトランティス帝国はこの女帝の独裁政治である。周囲3大国の王が変わる中、約400年この国を治めている。

北のテクノスはドワーフの国であり、技術大国だ。この国の王はハイドワーフと言われる古代種であり、不死ではないが不老である。アトランティスができる前からテクノスの王は変わっていない。シュテルより王としては先輩になる。
中央5大国の仲は非常に良好。アトランティスの大神殿にて、月一王家だけが集まった息抜きパーティーがあるほどである。


「さて、今日は何をするか……」

ダンジョン……と言う気分ではないな。ピアノも……違うな。
眷属達との模擬戦は……一昨日したし……。
はて、何しようか。

そう思った時、大神殿の方からパタパタと白銀の竜の翼、竜の尻尾を持った幼女が走ってきた。
シュテルよりはちょっと薄いが似たようなシャンパンゴールドの髪を持ち、ツインテールにしている。瞳は金の竜眼だ。
服は黒ベースに白と黄色が使われたワンピースを着ている。
体型は幼児体型。

騎士達に止められる事無く、幼女は座っているシュテルに飛びついた。
椅子ごとひっくり返りそうになるが、お世話役のブリュンヒルデに椅子を抑えられ、倒れるのは回避された。
幼女はむふふーとすりすり甘えていた。

幼女の後を追ってくるように2人の美女もやってくる。
1人はクリーム色のハーフアップ。1人は薄紫色をした背中辺りまでのロングだが、下の方はロールになっていた。
クリーム色なのがジェシカ、薄紫はエブリンだ。
ジェシカの目は浅葱色あさぎいろ、エブリンは空色とどちらも青系である。
着ているのは2人共侍女服だ。
ブリュンヒルデは背中まである金髪ロングを一つ結びにしている。瞳も金色。
こちらも侍女服であり、シュテルにはこの3人が付いている。


幼女をムニムニ撫で撫でしながら、何をするかと考える。
そしてやることを決め、行動しようとした時、それはおきた。

「よし、今日は……む?」

すぐに感知したシュテルは自身の眷属達へと即座に指示を出す。

『世界外からの次元干渉だ、警戒しろ』
『はっ!』

シュテルンユニエールには2つの立場がある。
1つはアトランティス帝国建国の女帝。
そしてもう1つが……現人神である。

『時空と自然を司る神』
時空神と自然神の力を併せ持つ万物の女神。
そしてブリュンヒルデ、ジェシカ、エブリンは勿論……女帝直々の騎士達10人。
それと、今シュテルに抱えられ甘えている幼女……シロニャンの合計14人が女神の眷属である。正確には13人とペット1匹だが。
シロニャンはペット枠だ。幼女の姿をしているが、一応本来の姿はハリネズミ。
ふさふさの金の毛を持ち、手のひらサイズだ。毛一本一本を強化し針とする。

時空神の能力が、世界を隔てる次元の壁に外部からの干渉を察知した。
それを眷属達へ念話で知らせる。眷属達だけなのは思考速度と対応力の問題だ。
女神の眷属だけあって、地上の生物を遥かに凌駕している。

そして、シュテルの足元に魔法陣が現れた。
その魔法陣を即座に解析していく。

『……召喚だと?』

魔法陣の中にシロニャンとヒルデを入れ、分身体を生成し魔法陣の外へ。
この世界にある召喚魔法とは違う構成だが、召喚の魔法陣であることに間違いはないだろう。そして、世界の外からの干渉を感じたので異世界召喚魔法だ。
目立ちすぎる翼は消しておく。

魔法陣が出現してから3秒後、シュテル、シロニャン、ヒルデの姿が魔法陣と共に消えた。


残された者達は……大慌てするわけもなく、むしろ残されて寂しそうだった。
分身体だけど、シュテルいるし。
残った者達の思いはただ一つ『一緒に異世界行きたかった!』

「私も行きたかったですよユニ様ー」
「気持ちは分かるが全員で行くわけにもいかないだろう。召喚陣小さかったし。どんな世界かも分からんから一応な」
「むむー」
「それより、ヒルデがいなくなったからこっちはお前達だぞ」
「「はーい」」

時空神は個人で次元転移が可能なため、面倒なところだったらガン無視して帰る気満々であった。

さて、いったいどこに……どんな方法で召喚されたのか……。

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コメント

  • りり

    最初から気になります!面白い!

    0
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