あなたと咲かせる恋の花。

しっちぃ

Another sight:ルピナス―『あなたは私の安らぎ』

 江川と『恋人』になってから、もう3か月近くになる。
 誰かを恋して、愛することは、この身から溢れそうになるほど教えてもらえたけれど。その温もりで、私が一生信じられないと思っていた気持ちを、再び胸に抱くことができたけれど。

 あの男に穢されかけたとき、私は誰かを愛するという気持ちを信じられなくなった。歪んだ、一方的で醜い「愛」で、私の全てを壊されそうになったときから。あの忌まわしい記憶は、心を何度拭ったって消えない。
 でも、私の凍った心を溶かしてくれたのは、江川の、純粋で、私にだけ向けてくれる温かい「愛」だった。でも、それを言ったら、「私のおかげなんかじゃないですよ」なんて謙遜してくるんだろうな。顔を真っ赤にして。……そんなことを自然に思えるようになるくらいには、私も江川のこと、恋してるみたいだ。

 でも、まだ分からない、どうすれば、もっと距離を近づけられるんだろう。母さんのおかげで、できなかったことなんてなかったから、こんなに手探りなのは、なんだかじれったい。でも、一緒にいる時間は、ほっとして、柔らかくて甘い。江川のほうから近づこうとしてくれたときもあったけど、それも、嬉しいのに、なぜかあるはずのない寂しさが胸に居座る。もっと近づきたいって思ってるのは、きっと江川もなのに、すぐ頬を染めて、恥ずかしそうに唇を求めてくることしかしてこない。私も、どうやって誘えばいいか、まだ掴めてない。本当なら、私からすべきなのだろうが。

 ……そう言えば、あの日、江川が私に想いを伝えた日から、私の呼び方が「倉田先生」から「邑先生」になった。もしかしたら、……こういうのでも、近づけられるのかもしれない。

 ……智恵。

 心の中で、そっとその名前を呼ぶ。それだけで、胸の奥がくすぐったくて甘くなる。自然に頬が緩む。自然に笑えたのは、江川のことを感じてるときくらいしかなくて。
 そっか、名前で呼ぶのは、「近づきたい」ってメッセージだったんだ。でも、これでいいのかの答え合わせは、まだできない。
 でも、心で言った瞬間の、こころをくすぐられる感触に、一瞬で虜になってしまう。――私も、恋してるんだ。江川のこと、お互い同じくらいに。
 せめて、心の中だけなら、「智恵」って呼ばせて。……それなら、別にいいだろ?
 たった二文字の組み合わせに、こんなにも心が悶えて、頭の奥から熱くなる。それが、たまらなく心地いい。乱れてる気持ちは、どうしたって止められない。止め方も、分かるわけがない、私にとって、これが「初恋」だから。
 智恵から、教えてほしい。恋をすることも、どうすればうまく気持ちが伝わるのかも。『恋人』として、お互いを愛し合えるくらい、智恵とつながっていたいから。

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