二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、初依頼を受ける。

「うーん、どれがいいかなぁ」

俺は、冒険者ギルドの依頼掲示板を前に、悩みに悩んでいた。
校長から、冒険者として実力を磨けと言われたのは良いのだが、どんな依頼を受ければいいのか全く分からない。

「シード!これは?」
「これがいいんじゃないかしら」

ユーリとイリーナが俺のもとに依頼を持ってくる。
ユーリが持ってきたのは、「黒龍の渓谷に現れた謎のドラゴンの討伐」
うん、無理
イリーナが持ってきたのは、「薬草の採取」
簡単すぎだろ!

「お前らな、もっと考えて持って来いよ」
「失礼ね!ユーリはともかく、私は考えて持ってきたわよ!!」

イリーナが食ってかかる。

「えー?私もちゃんと考えて持ってきたよー?」
「どこがだ(よ)!!」

見事にイリーナとセリフが被る。
しかし、謎のドラゴンの依頼なんて新人が受けるような依頼じゃないだろう。

「ともかく、イリーナの依頼は簡単すぎるし、ユーリのは難しすぎる」

そういって俺はまた依頼掲示板に目を戻す。
ふとある一つの依頼が目に留まった。

「ゴブリンの群れの討伐」
場所 安眠の森
報酬金 銀貨5枚

なかなかいい依頼じゃないだろうか?

「これなんてどうだ?」
「どれどれー?」

ユーリとイリーナが寄ってくる。
どちらも悩むようなしぐさをしていたが、決意したようにこちらを見る。

「いいんじゃない(かしら)」

二人の了承も得たところで、受付に依頼を持って行く。

「この以来受けたいんですけど」
「はいはーい」

受付の奥から、おれが冒険者登録をしたときに担当してくれた受付嬢、クミンさんがやってくる。

「ええっと?ゴブリンの群れの討伐ですね。まあ皆さんならモインだいないと思いますが、無理はなさらないでくださいね」
「「「はい」」」

俺たち三人は、初めての依頼を受注したのだった。
依頼を受注した後、イリーナを連れて俺たちは、賢龍鍛冶屋に向かった。
イリーナの装備をそろえるため、そしてユーリの武器の新調の為だ。

「よおきたのう、小僧とユーリ嬢ちゃん。後、そこにおる小娘は誰じゃ?」
「俺たちのクラスメートだよ」
「シード君のクラスメートのイリーナ・グランです。以後お見知りおきを」
「ほう、それで今日は何しに来たんじゃ?クラスメートを連れてきたっちゅうことは何となく察しがついてはおるがのう」
「そりゃあ良かった。ユーリの武器の新調と、イリーナの装備を買いに来た」
「やはりか。それで?おぬしはどうするんじゃ?」
「そりゃあ、良い武器があれば買うけど、極氷を超えるような武器はないんじゃないかな?」

俺は、あえてラカンを煽るような物言いで答える。

「おぬしならそういうじゃろうと思って、新武器を開発しておいた派は!!」

ラカンは、新武器を開発したと言い残して、店の奥に消えていった。
しばらくして、税院分の装備をもって帰ってきた。

「まず、これがゆーり嬢ちゃんの分じゃ」

ラカンは深紅の色をしたガントレットをユーリに手渡す。

「このガントレットは、溶岩龍の素材をふんだんに使い、さらにミスリルを混ぜ込むことによって魔力を通しやすくしたわしの作ったガントレットの中では最高傑作ともいえる代物じゃ」

ユーリはまるで神様でも見つけたかのようなまなざしでガントレットを見つめている。

 名前 溶岩龍の魂の鉄拳ラバーズソウル レア度 神話級ゴッツ

〈スキル〉
火属性強化大 腕力上昇 魔力消費量減

相当良い装備だと思う。

「おっさん!なかなかいい装備じゃないか!」
「じゃろう、じゃろう」

褒められてのがそんなにうれしかったのか、めっちゃ機嫌が良くなった。

「こっちがイリーナ嬢ちゃんの装備じゃ」

ラカンが装備をイリーナに手渡す。

「ありがとうございます」

ラカンがいイリーナに手渡した装備はまさしく魔術師と言った見た目の装備だった。
しかし、ラカンが渡した魔法杖だけは異質であった。

 名前 慈愛深き女神の魔法杖セイン・ハーティア レア度 神話級ゴッツ

〈スキル〉
光属性強化大 魔力量増加特大 魔力消費量減

イリーナと魔法適正とピッタリなのも相まってとんでもないことになりそうである。

「おっさん!俺の新武器は?」
「聞いて驚け!!魔法によってさまざまな属性の刃を生成する7魔法剣じゃ!!!」

ババーン

そんな効果音がどこかから聞こえてきたような気がした。
新武器と言われた魔法剣は剣身が無く、柄しかないような形状をしていた。

「どうやってこれ使うんだ?」
「自分が出したい属性の魔力を込めるだけじゃ」

とりあえず俺は、水属性の魔力を込める。
柄から水があふれだし数舜で刃の形を成した。

「「「おおー」」」

いつの枚かやってきていたイリーナとユーリも歓声を上げる。
魔法剣のステータスを確認してみる。

 名前 ??? レア度 測定不能アンノウン
〈スキル〉
属性剣 飛斬 攻撃力強化特大 魔力回復量強化特大 

はい、きましたー。なんかよくわからないのきましたー。

「おっさん、これ名前付いて無いぞ」
「おぬしが自由につけとくれ」
「そうだな、混沌の属性剣マカハドマとかどうかな?」
「いいんじゃないか」
「よし、こいつは今日からマカハドマだ」
「これで装備は大丈夫か?」
「ああ、ありがとな。また来るよ」
「ちゃんと嬢ちゃん二人もつれてくるのじゃぞ」
「わかってるよ」

こうして俺たちは新武器とともに賢龍鍛冶屋を後にした。
しかし、ラカンは何者なのだろうか?
そこいらの鍛冶師に神話級ゴッツの装備は打てないだろう。
やはり、元王宮勤めの鍛冶師だったりしたのだろうか?
疑問は残るが、気持ちを切り替え、ゴブリンの討伐に向かった。

「ねえ、シード?ゴブリンの討伐にアイテムは持ってかないの?」

おそらく、モンスターの討伐初めてと思われるイリーナが素朴な質問をしてくる。

「持って行くには持って行くよ。でも非常用にほんの少し持って行くだけだよ」
「そうなんだ。今から買いに行くの?」
「いや、もうかってある」

冒険者登録をした後、雑貨屋でポーションや回復薬など人数分買い込んでいたのだ。

「それじゃあ、今から出発ね!」

イリーナが珍しく年相応のかわいらしい笑顔を浮かべる。
不覚にもそんなイリーナにドキッとしてしまったのは内緒である。(特にユーリには)
しばらく歩くと、門が見えてきた。

「今回は、安眠の森に行きます。安眠の森は謎のドラゴンが出現したとされる黒龍の渓谷にとても近いです。と言うわけで、ゴブリンとは言え気を引き締めていきましょう!!」

イメージはメアリ先生で、二人に注意を呼びかけてみる。

「そんなこと言われなくてもわかってるよ~。ゴブリンなんて何度も家にいた時に何度も買ったじゃない」
「確かにそうかもしれないが、ここでゴブリンを狩るのは初めてだろ」

ユーリは少し自信過剰すぎる傾向がある。
何とかして直さないといけないだろう。

「そうよ、ユーリ。そういう慢心が思わぬミスにつながるのよ」

イリーナその面しっかりしているので心配はなさそうだ。
しかし、パーティー戦闘となると、初めてなので俺もうまく出来るかわ全くわかったもんじゃない。

「まあ、ユーリの自信過剰は何とかして治すとして、今回は馬車で行くので今から予約を取っておいた馬車の所に向かいたいと思います」
「馬車の予約まで取ってるの?すごい準備がいいのね」
「まあな」

実を言えば、久々にモンスターを狩るので結構楽しみなのだ。
さらに歩くと、門の近くに馬車が止まっているのが見えてきた。

「おーい。あんたが予約のシード・グリシャスさんですか?」
「ええ、予約の通り安眠の森までお願いします」
「はいよ、早く乗り込んでください。早くしないとモンスターが活発に動き始めてしまうので」

現在9時半依頼を受けてからもう一時間もたってしまっていた。
確かにモンスターが活動し始める時間帯ではある。

「分かりました。おい、早く乗り込むぞ!!」
「「はーい」」

さっと馬車に乗り込む。
馬車はほどなくして、ライングランから安眠の森に向けて出発した。

「そういえば、今回のゴブリンの討伐は、パーティー戦闘をするの?それとも個人で狩れるだけ狩るの?」

ユーリが単純だがとても大切なことを聞いてくる。

「今回は、パーティー戦闘を中心に戦っていくつもりだよ」
「じゃあ、どんな配置で戦うの?」
「そうだな……」

パーティー戦闘は初めてだからどんな配置にすればいいのか全く分からない。

「イリーナ、お前パーティー戦闘時の配置ってわかるか?」
「あなたたちはそんなことも知らずにパーティー戦闘をしようとしていたの?馬鹿ね」

イリーナがまさに軽蔑と言った言葉がぴったりな目でこちらを見てくる。
さっき不覚にもかわいいと思った自分を殴りに行きたい。

「パーティーは基本、前衛と後衛に分かれて行うの。このメンツだったらそうね……」

少しイリーナが考え込む。

「あなたとユーリ、あとユーリの使い魔フェンリルが前衛、私とイーリア、グリス様は後衛ね」
「そうか。だったら本番もその配置で行くか」
「そうね」

そういうとイリーナはまた窓の外に視線をやった。
俺も特にすることが無いので窓の外に目をやる。ウサギ何羽か、草を食べている。
こんな風景を見ると、モンスターがいるのかどうか不安になるくらいだ。
そんなことを考えながら馬車に揺られていると、おれの意識は深い眠りの中に沈んでいった。



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