二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、観光を楽しむ。

「はあ、ユーリ?まだかー?」
「まだー。もうちょっと待って」

俺は、観光を楽しんでいた。否、観光を楽しむお手伝いをしていた。
なんで女子の買い物はこんなに長いのか…………すでに、一軒目で1時間も経過していた。
俺としては、武器屋とか観光名所とか見て回りたかった。
しかしまあ、現実は洋服屋に1時間だ。このペースだとまだまだかかりそうだ。さっさとしてくれないかな。
「シード!この2つならどっちがいい?」
ユーリは、同じような白のワンピースを並べる。
「どっちでもいいんじゃない?」
ジト目でユーリはこっちを見ている。
「違う違う。どっちを着てもユーリならかわいいってことだよ」
今度は、パッと笑顔を輝かせて、
「ありがとう!」
ほんとに忙しいやつだなあ。

「ありがとうございました」

あれからさらに1時間ほど経った後に洋服屋を後にした。
「シード?どっかいきたいとこない?」
「そうだなぁ、明日の試験に備えて武器とか防具とか整えたいな」
「それじゃ、武器屋だね」
ユーリは、鼻歌交じりで歩いて行く。しばらく歩くと、武器屋が見えてきた。
「シード、どこにする?」
俺は、空絶眼を発動し、たくさんある武器屋の中から最も性能が良いものを売っているところを探す。
「あそこの、突き当たりにあるところにしよう」
「あんなぼろっちいとこでいいの?」
「ああ。古い店ほどいいものを売ってそうだろ」
俺が選んだ武器屋の店名は、「賢竜鍛冶屋」なんとも微妙な名前だ。
「すいませーん。誰かいませんか?」
「うるさいのう。そんなに大きい声を出さんでも聞こえとる」
店の奥から白いひげをたっぷりと蓄えた、筋骨隆々とした年寄りが出てきた。
「で?このわしになんのようじゃ?」
「武器屋を探していたらたまたま目についたので武器を見せていただけないかと」
「見るだけなら構わんが、わしは自分が認めたものにしか売らんぞ?いいのか?」
「はい」
「構わんのならいい。それで?何が見たいんじゃ?」
「えっと僕は防具を、彼女は、装備全般を」
「わかった。しかしお主は武器はいらんのか?」
「ええ。これがありますから」
俺は、神聖龍神剣・極氷を出す。
「なっ!お主、これをどこで?」
「父の貰いました」
「お主の父の名は?」
「ロスト・グリシャスです」
「ロストじゃと!」
ロストの名前にすげえ食いついた。なんでだ?
「よかろう。お主らにならこの店の防具を売ろう」
「ありがとうございます。可能なら適当に見繕ってもらえますか?」
「お安い御用じゃ」
店主は店の奥に消えていった。
「なんであんなにお父さんの名前に食いついたんだろう?」
「わかんない」
しばらくすると、店主がいくつかの装備を持って帰ってきた。
「こっちがお主の、こっちが嬢ちゃんのじゃ」
俺とユーリにそれぞれ装備を差し出す。
「お主の装備は、魔力を通しやすいミスリルを魔法で繊維化しそれを編み込んだ装備じゃ。可能な限り関節の可動を邪魔せんように、金属類を可能な限り取っ払っておる。魔法耐性と物理攻撃無効を付与しておるから防御力はお墨付きじゃ!」
防具のステータスを確認する。
 
名前 ミスリル・アーマー零式 レア度 神話級ゴッツ

<スキル>
物理攻撃無効 魔法耐性 

本当についてる。しかもゴッツとはまた。
「おっちゃん!これ買うよ。いくら?」
「本当なら白金貨10枚くらいとるんじゃが、ロストには世話になったからのう。金貨3枚で良いぞ!」
「ええ!?本当に?それは悪いよ……」
「いーや!金貨3枚といったら三枚じゃ!そうでなきゃ売らん!!」
「わかったよ……はい、金貨3枚」
「確かに」
「おっちゃん、ユーリの方は?」
「ああ、嬢ちゃんのやつか?それはな、見た所嬢ちゃんは、魔術師っぽかったから魔力増強と、詠唱短縮を付与したローブと、胸当て、それに魔法杖じゃ」
「え?私魔術師じゃないよ?」
「なぬ?じゃなんなのじゃ?」
「魔法闘士」
「はっはっはっは!まさか魔法闘士とはな!ちっとまちょれ、すぐに新しいのを持ってくる」
「ありがとう、おじーちゃん!」
「ぬおお!なんか胸を奥がポワポワするんじゃぁ」
おじーちゃんに反応してる。
また、おっちゃんが、新しいのを持ってくる。
「これでどうじゃ?魔獣の皮で作った防具に、黄金龍のインゴットを混ぜたアイアンナックルじゃ」
「ありがとう!これにするー」
「よっしゃ!これも金貨3枚じゃ」
俺は金貨3枚を手渡す。
「お主ら名前は?」
「シード、こっちがユーリ」
「シードにユーリ嬢ちゃんか。わしは、ラカンじゃ。これからも賢竜鍛冶屋をよろしくな!」
「はい。それではまた、ラカンさん」
「バイバーイラカンジイちゃん!」
俺とユーリは、ようやく装備を揃え賢竜鍛冶屋を後にした。もう日は傾き、夕暮れ時になっている。
「ごめんなユーリ。時間かけちゃった。これじゃもうどこにも行けないな」
「いいよ!シードと一緒にお買い物できたし!そうだ!シード。手繋ごう?」
ユーリが上目遣いで俺の目を覗き込んでくる。
「いいよ」
ユーリと手を繋いで帰った宿への道は、昨日よりも少しだけ明るく見えた気がした。

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