二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、入学試験を受ける。

昨日、ライングランの観光?をした俺たちは、入学試験に向けての準備を行なっていた。
現在の時間は8時、試験の開始は9時30分である。試験は筆記、魔法実技、模擬戦の3つに分かれていて、
丸一日かけて行われる。
「ああー緊張してきた」
ユーリは今朝、起きた頃からソワソワし始め、先程からずっと部屋の中をくるくる回っている。
「大丈夫だよ。お父さんにお母さん、セバスチャンにメイドのみんなに授業をして貰ったろ?みんなと自分の実了を信じてやれば絶対受かるよ」
「そうだね!5年間頑張って勉強したもんね。これで受からないわけないか。そう思ったらだいぶ落ち着いてきた。ありがと、シード」
「別にどうってことないさ」
俺も、全く緊張していないといえば嘘になる。前世、俺は魔法学校の試験を受けたことがあるのだが
見事に落ちてしまったのだ。
「そろそろ、出ようかユーリ」
「そうだね」
現在俺たちの住んでいる宿から魔法学校までは約20分かかる。さらに試験番号の受け取りなどに30分かかる。さらに試験会場に入るのに10分ほどかかる。結果、1時間ほどかかってしまうのだ。
「ああー、やっぱり緊張してきたー」
「大丈夫だって!まあ緊張するのはわかるけどさ」
「えー?シードも緊張するの?」
「当たり前だろ!俺をなんだと思ってるの?」
「将来有望な私の旦那様」
カッと顔が赤くなる。ユーリも、言って恥ずかしくなったのか、身悶えている。
「ごほん!」
とりあえず咳き込んで場の雰囲気を変える。
「ま、まあともかく、ユーリだって絶対受かるよ」
「そ、そうだね」
なんとなく、ピンク色の雰囲気をまとっている気がするが、いつも通りたわいもない会話をしながら、魔法学校へ向かうのだった。


しばらくすると、ライングラン魔法学校が見えてきた。
「やばい………心臓破裂しそう」
「心配しすぎ!」
ポンっとユーリの頭に手を乗せる。
「ほら、行くぞ」
俺とユーリは、受付に向かった。
「受験生でしょうか?」
「はい。それでは、こちらの受験票受け取り用紙に、必要事項を記入してください」
「はい。わかりました」
俺とユーリは、必要事項を記入していく。
「「できました」」
「ありがとうございます。少々確認作業がございますのでお待ちいください」
5分ほどして受付の女性が戻ってきた。
「こちらが試験番号になります」
俺とユーリは、試験番号を受け取った。
「それでは、こちらから筆記試験会場に向かいください」
「「ありがとうございました」」
俺とユーリは、指示された道から筆記試験会場に向かった。
「シード、試験番号何番だった?」
「俺か?俺は、S-2003だな。ユーリは?」
「S-0303だよ」
試験番号は、S、A、B、C、D、E、F、Gの8つに分かれ、さらに確認S~Gまで全てが、0001~3000に分かれている。
「シード、ここが筆記試験会場だよ」
「ここか」
ふう、やっときたか。前世では落ちたが、今回は絶対受かってみせる。
俺は、自分の受験番号が書かれた席に座った。すると、不意に隣から柔らかい声が聞こえた。
「すいません」
「どうかしましたか?」
「いえ、何か用事があったわけではないんですが、ちょっと気になることがありまして」
話しかけてきたのは、俺やユーリより少し小さいくらいの金髪の可憐な少女だった。
「あなた、もしかして全属性適性がありませんか?」
…………やべえ、バレた。せめて入学まではバレないようにしようと密かに思っていたのに。
だらだらと冷や汗をかきながら、せめてもの抵抗をする。
「な、なんのことだかわからないな〜」
明後日の方向を向いて口笛を吹く。
「嘘をつかなくたって結構ですよ?全属性適性なんて、世間に知られれば大変なことになりますからね」
「だったら嘘をつかないけど、どうして君はそれがわかったんだ?」
「これは、あなたの全属性適性と同じで秘密にして欲しいんですが、私、魔導を司る大精霊と適性があって
人の魔法適性がわかるんです」
「大精霊?」
「ええそうです」
そこまで言ったところで監督官の先生が入ってくる。
「詳しいものは、次の魔法実技の時に」
こそっとそう言って、自分の席に戻って行った。
「それでは、試験を始める。時間は30分、質問は一切受け付けない。それでは、はじめ!!!!」
こうして、筆記試験が始まった。
筆記試験は結構簡単で、ある2問を除いて10分と少しで解くことができた。
・魔法とは何か
・魔法において最も重要なものは何か
この2問は、とてつもなく考えさせられた。なんせ家族以外の人の魔法を見たことがないのでよくわからなかった。俺はこの2問について、このように答えた。
・可能性
・イメージ
全くもってあっている保証などないが、他の問題は全てあっている自信があるので問題はない。と思う……
ボーッとして待っていると、監督官が前に立った。
「そこまで!!回答を集める」
試験会場からは、難しかったーや、全部出来なかったーなどの声が口々に上がっている。
そんなに難しくなかったと思うが、ユーリは、大丈夫だろうか?
そう思ってユーリの方を見ると、たくさんの受験生に囲まれていた。どうしたんだ?
「おい!ユーリ」
少し大きめの声でユーリを呼ぶ。
「なーにぃ?」
たくさんの受験生の隙間を縫って一瞬で俺の前に姿を現わす。スピードだけなら俺よりも早いんじゃないだろうか?
「いや、大したことじゃないんだけどな、試験できたか?」
「完璧だよ!!」
「本当か?まあできたんなら良かった。それじゃ、魔法試験の会場に行くぞ」
「オッケー」
俺とユーリは、魔法試験の会場に向かった。


試験会場では、おそらく魔法の先生であろういかつい試験官が待っていた。
「全員揃ったか?揃ってなくての始めるが。この魔法試験では、今から俺の作る的を、10発以内に破壊すれば満点だ。それでは、名前を呼んだやつから始める。一番、イリーナ・グラン」
「はい」
前に出てきたのは、さっき俺に話しかけてきた少女だった。
「それでは始めてくれ」
イリーナといった少女は、右手を前に出し、魔力を集中させる。
暴風竜巻ウィンド・ハリケーン
集約された魔力が巨大な竜巻となり的に直撃する。的はあっけなく破壊された。
「よし、次のライブ・ソーマ」
「はい」
まあ、魔法学校に入学するものならあれくらいできんのかな?
「我が手に集いし紅蓮の炎よ、矢を成し的を打ち砕け、紅蓮矢ファイヤーアロー
的に直撃し、的に穴を開けた。
放ったやつはというとはあはあと息を切らしながら、ドヤァ
なぜにドヤ顔!!?ファイヤーアローって初級魔法だろ?
それからというもの、ファイヤーがアクアになったり、アローがランスになるだけで、イリーナのようなやつは、ユーリ以外いなかった。
そうして俺の番がやってきた。
「シード・グリシャス、お前は、6つ的を用意する。それを6属性の魔法で破壊しろ」
試験会場がざわめき出す。6属性とか無理だろとか、あいつは不合格かなとか聞こえてくる。
「わかりました」
俺は、大気中の魔力と俺自身の魔力を右手に集約させる。イメージは伝説の6属性を操る聖龍。
聖龍魔槍せいりゅうまそう六式ろくしき
俺の右手から放たれた魔法は、6つの首を持つ巨大な龍を成し、全ての魔槍を打ち砕いた。
会場はまるで、風のない日の水面のように静まり返った。
少しやりすぎた気もするがまあ良いだろう。
こうして、残す試験は模擬戦だけとなった。





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