二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、転生する。

 俺は、気がつくと、真っ白な部屋にいた。目の前には、テーブルと椅子があり、この世のものとは思えないほど美しい女性が腰かけている。その女性は、俺の意識が覚醒したことに気がつくと微笑みを向ける。それはまるで、凍りついた大地を暖かい太陽の光が溶かしていくような、安心する微笑みだった。
「目が覚めましたか?」
「ええ。でも何で俺はこんなとこにいるんですか?こんなところにこれるほど、立派ではありませんよ?俺は」
「そう自分を卑下しないでください。まあ、あなたが立派な人間じゃないことに変わりはないんですが」
自分でいったとはいえ、失礼な奴だな。
「というか、ここがどこか以前にあなた誰ですか?」
「ああ、すいません。自己紹介が遅れました。私の名前は、グリスです」
グリス?どっかで聞いたことがあるような
「ああ!思い出した グリスって四大天使の 」
「はい。そのグリスです」
「ならなおさらですが、俺になんのようで?」
「それはですね、突然ですが、あなたには転生してもらいます」
「はあ?俺の耳が間違ってなかったら、転生って聞こえたんですが」
「はい。その転生です。あなたは、生前ただの村人でした。なんの特技もない、別段かっこいいわけでもないただの村人でした。しかし、あなたは神聖なる審査によって、転生者に選ばれたのです 」
「はあ。転生ですか」
「あれ?思ったより落ち着いてますね。もっと取り乱すと思ったんですけど」
「俺だって、困惑していますよ?でもそれじゃことが進まないと思ったから落ち着けてるだけで」
「そうだったんですか。それじゃあ少し考えますか?」
「いえ、結構です。転生しますから」
「あらまたあっさり」
「だってもう一回人生をやり直すチャンスもらったんですよね!!だったら使わなきゃ損でしょ!」
「そういっていただけるとありがたいんですが。それでは、僭越ながら私供から祝福ギフトを差し上げたいと思います」
そう言うと、グリスはカタログを持ってきた。
「この中から、好きなものを一つ選んでください」
うーん、悩むな。カタログをめくると、様々な能力が載っている。これは色々目移りしちゃって決められないやつだな。目を瞑って、指差したやつにするか。
俺は、適当なページを開いて、目を瞑ると指差した。
「これでお願いします」
「はい、わかりました。ええっと?空絶眼くうぜつがんですね。それでは、転生の準備をしますので少々お待ちください」
俺は、新たなる人生に胸を膨らませ、そして空絶眼に期待を寄せながら転生を心待ちにしていた。
「それでは、準備が整いました。あなたの人生が素晴らしいものになることを、影ながら祈っています」
グリスのその言葉が頭の中でリフレインされる。さあ!俺の新しい人生の始まりだ!!
決意を改めるとほぼ同時に、足元がまばゆい光を放ち、俺の視界を覆う。それからそう時間も経たないうちに、俺は、自らの意識を手放した。



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