茶師のポーション~探求編~
予想外の出来事
「なぁ、サブマスターさんや。コレ、どうみる?」
付喪神が戻ってきてすぐに男が口を開いた。
「……まずいな。纐纈さん、上の人に教えて。短期決戦でいくしかない」
付喪神と契約している男――今回マスターは初めて名前を知ったのだが――から映像を見せられたサブマスターが顔色を変えた。
そして、その映像はマスター他、数名が見る羽目になった。
「弟子」
「なにー?」
「いつでも突入できる準備を。他の人にも伝えるように」
「りょーかーい」
間延びした返事を何とかしろ、などという余裕すらあっという間になくなった。
「魔法職にマナポーションを渡しておきます。これでしのいでください」
マナポーションはその名の通り、体内にある「魔力」を回復させるためのものだ。そしてその魔力は、契約した精霊や妖精と意思をつなぐために必要なものだ。意思をつながなくては、魔法を使えない。
魔力も一応、休めば回復するが、休む暇はほとんど取れないだろう。
これまでに集めた水の半分を使い、毒を抜いた薬草でポーションや解毒薬を作っていく。
ここから先、マスターは最前線でポーションの補給を行うことになる。
しくじった、マスターはそう思った。
薬草が少なすぎる。類を見ない大暴走ということで今まで作りすぎたツケが来ただけだ。残った薬草では心許ない。
付喪神と契約している男、纐纈にのみその旨を伝え、薬草のありかをついでで教えてもらえるようにした。
すぐに降りて来た後続部隊も、映像を見て言葉を失っていた。
まさか、ここまで酷くなっているとは思わないし、どうして一般人と思わしき人物が喰われているのかが分からない。
「……あのさぁ、俺あのヒト見覚えあるんだけど」
再度角度を変えて纐纈が飛ばした映像を見た弟子が呟いた。
そう、ここにいる面子は皆、見覚えがある。
ギルドで難癖をつけて来た依頼人と、ギルドマスターである。
「……俺は何も見ていない」
誰かが呟いた。気持ちはわかる。そして、一部生存者がいるあたりで、上級ポーションの行方が知れるというものだ。
「何のためのランク制だと思ってるんだろうね」
「本望だろ。何せ『ランクB』と『B級グルメ』の違いも分からないおまぬけだったし」
春麗の言葉にウーゴがあっさりと返していた。
そこにいる誰もが「同感」としか言わないだろう。
ここに一般人がいるということは、どこかに抜け道がある、もしくはこいつらが作ったということだ。
それが一番にまずい問題であり、どこに繋がっているか分からないというのが、探求者たちの頭を悩ませる。
だが、迷宮外を見回れる戦力などない。
「探求者ギルド本部にSOS流すよ」
サブマスターは既に投げやりである。ギルドマスターの首一つで済む問題ではないのだ。
「流したよーー」
本部から来た探求者が言うとともに、サブマスターが突入の合図を出した。
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