存在定義という神スキルが最強すぎて、異世界がイージー過ぎる。

つうばく

第9話 「やり過ぎたようだった」

「シン様、今日集めた魔物達はどうするのですか?」

「Cランクの狼はクリスに渡すとして、それ以外は……冒険者ギルドで売るか」

「なら、私も付いて行ってよろしいでしょうか?」

「うーん……いや、今日はもう帰った方が良いんじゃないか? 疲れとかあるだろうし。それに、ガルバさんやノールさんが心配してるぞ」

「そうですね……」

 そんなしょぼくれるなよ。
 お前の事を考えて言ってるのに。

 けどまぁ、クリスにとったらそんなのいらないお世話なんだろうけど。

「分かりました。シン様が私の事をそこまで考えての決断なら、断るわけにはいきません!」

「分かってくれて、ありがとうな」

「いえいえ」

「じゃあ、一気に帰るか」

【転移魔法】発動
 俺の足元には、魔法陣が出てきた。

 クリスとなので。少しデカ目に。

 クリスが二度目なのでなれたのか、俺が出した時に、ピョンと魔法陣に飛び乗った。

「じゃあ。 ──── 転移」






 クリスの家の前。
 門番のように二人の武装した人が立っている所に、魔法陣は現れた。

「うわぁ!? ……なんだ、貴様達は!」

 門番が武器を取り出し言う。

 ……クリスと俺という事を気付いていないのだろうか?
 まぁ、パニクってとかだろう。

「私ですよ。それとシン様に武器を向けるのはおやめください」

「お嬢様!? 失礼しました! ということは、シン様ですね。急な事だったため少々パニックを起こしてしまいました。すみません」

「大丈夫ですよ。俺がこんな所に急に転移したのが原因ですから」

「そう言ってもらえると有り難いです」

 この門番は優しい人なのだろう。
 ここまで、礼儀正しい門番は中々いないぞ。
 俺の中の門番像と比べるともう、ヤバイほど違い過ぎる。

「じゃあ、クリス。ここまで来たら、大丈夫だろ。俺は帰るな」

「はい。ありがとうございました、シン様」

【転移魔法】発動

 ちなみにひとりの時は魔法陣を使わずに転移出来る。

 それに実は、転移と言わずとも転移が出来る。
 言っている理由は、なんだか、それっぽくなるから。

「──── 転移」







「はぁー。久し振りに我が家だー!」

 まぁ、1日ぶりだけど。
 それでも、今日は疲れたぜー。

 冒険者ギルド持っていくの明日にしようかな……。

 けど、ヒナさんに行くって言ってしまったしな。

「仕方ないか。昨日の部屋にでも ──── 転移」






 ポン、と俺はソファーに着陸した。
 うん。位置が正確になってきたな。

「……誰もいないな」

 部屋は静まり返っていた。
 いや、少しだけ話し声が聞こえる。

 ……近付いてきている。

「おにーさんこないなー。向こうで殺されたかー?」

「いや、それはないだろ。お前はあいつもステータスを見てないから分からないかもしれないが、あれは普通に殺されるはずないぞ」

 結構、あのギルマスのヒナさんは俺を買ってくれているようだ。
 嬉しい嬉しい。

 そして、それが美少女と思うとまた嬉しい。

 すると、扉が開いた。

「おっす。魔物持ってきたぞ」

「…………………」

「…………………」

 あれ? 何か登場の仕方を間違えただろうか。

「おーい。お二人さーん」

「……お前はどこからこの部屋に入った」

「転移でだけど?」

「……来る時は入り口から来やがれ!」

「だって、面倒くさかったし」

 そう言うとヒナさんは、はぁー、と小さい溜息を吐いた。
 そこかで、常識外れなことをしたつもりはないのだが。

「まぁ、良い。私も言っていなかったしな。次からは入り口から入れ」

「はーい」

 次も転移で来てやる。

「それで、魔物はどこだ? その様子だと、お前は手ブラで来たようだが……」

「ああ。アイテムボックスの中」

「…………………………………へ?」

「だーから。アイテムボックスの中だって」

 ……待てよ。

 この世界でアイテムボックスは国宝級までなるぐらいの代物。
 それの中に入っているとは軽々しく言ってはいけないのではないだろうか。

 やってしまったな。

「お前……アイテムボックス持ってるのか?」

 俺は無言で頷いた。

「はぁー。マジでお前は規格外か」

 褒められてる気がしない。

 ……やってしまったな。

「とりあえず、ギルドの裏に行くぞ」

「……なんで?」

「どうせー、すげぇ数の魔物がいるんだろ」

「いえ。俺はクリスの付き添いなのであまり倒していませんよ」

「…………本当だな。嘘じゃないな」

 そう言われると自信がなくなってきた。

「数を数えても良いか?」

「ああ。逆にそうしてくれ」

 これって、見れるのかなぁー。


【鑑定】


 これで、アイテムボックスに詳細と。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前:アイテムボックス
 ランク:S
 内容量:139/ーー
 特徴:内容量が無限
 時間停止
 何でも入る

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……………」

 ヤバかった。
 あの外にはまさかの物凄い数が溜まっていたようだ。

「どうなんだ? ここに出せる量か?」

「……すみません。裏に行きましょうか」

 俺は諦めて、渋々とギルドの裏に行くのだった。
 ギルドの外を出て、裏にまわって行った。

 しかし、裏には金属で出来た建物があり、出せるような開けた場所ではなかった。

「ここで、やるんですか?」

「馬鹿か。こんあ所ただの草むらじゃねーか。やるのはこの倉庫だよ。冒険者が持ってきたものを溜めるな」

 つまりは、俺にみたいに持ってきた人のを入れる場所という事なのだろう。
 ……冷凍だろうし、中は寒そうだなぁ。

 まぁ、仕方ないか。

「ほら、さっさと行くぞ」

「あっ、はい!」

 俺はヒナさんに付いて、倉庫の中に入っていった。
 やっぱり、想像通りの寒さだった。

 だが、ヒナさんを見るとなんとも無いように平然としていた。

「……ヒナさんは寒く無いんですか?」

「まぁな。そいうスキルがあんだよ」

 スキルって便利だなー。
 俺も欲しい。

 寒いのを慣れたい……というか、どうせなら全ての天候に慣れたいな。

「【温度適応】」

 おぉー!
 寒くなくなった。

 これで、いつも通りに活動できるぞ。

「じゃあ、ここに出してくれ」

「はい。分かりました!」

 アイテムボックス ──── オープンと。
 これで、クリスが倒したあの狼だけを残してそれ以外を出すと。

「……ほい」

 その、自分でも分かるほどの呑気な声とは裏腹に、多種多様、形様々、の魔物達が一斉に現れた。

 ……多過ぎだな。
 こんなデカイ倉庫にやっと入るレベルだぞ。


 ……ちょっと待て。
 ゴブリンやオークの間にドラゴンに似た生物や、鳥型の鋭い牙を持った生物がいるぞ。

 まさかの気付かない内に、強いものをゴロゴロと倒していたようだ。

 大丈夫だろうか。

 俺はそんな心配と共に、恐る恐るとヒナさんの方を向いてみた。
 ヒナさんは、目を疑うように何度も何度も凝視しては止め、凝視しては止めを繰り返していた。

「……大丈夫ですか?」

「……………あっ、ああ。大丈夫だ。流石にこの量を1日で持ってくる奴は初めてだからな。少し驚いただけだ」

 少し所では無かった気がするのですか……?

 まぁ、そんな事は口が裂けても言わない。
 言ったら、絶対俺に不幸が舞い降りる。

「とりあえず、今日は預かっておくわ。流石にこの量を今、はかるのは無理だ」

「大丈夫です。俺も急いでいる訳では無いので」

「そうか。なら、今日中に終わらせるから、明日にでも取りに来てくれ」

「分かりました。じゃあ、俺はもう帰りますね」


【転移魔法】──── 転移
 俺は家まで転移した……。



「あいつ。あの勇者でも1日に100体が限界だったて言うのに。軽く超えてやがるぜ。本当に一体何者なんだ」

 そう、一人残った倉庫でヒナは呟いた。

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