俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?
34 記憶と言う夢
休み時間。俺は学園の中庭にあるベンチに腰掛けていた。空は雲が少なく、日差しが少し強い。
あのローサムの攻撃の所為で骨折した左腕はもう直っている。直っているのだが、まだ筋肉に違和感が残っている。
「ハァ……まだ午前だけど疲れた………次は座学だっけ?面倒だ…………」
深くベンチに腰を下ろしていても、リラックスできない。幸い、中庭には人気が無いのでだらけることができるが。
前言撤回。
「ん?」
足音がした。音の大きさと質からして同い年の女子生徒だろう。さらに厳密?に予想すると、身長は一六五センチぐらいで髪色は白。弱い花の香りを纏い、小動物の様に可愛い娘だ。
「やあキリカ。どうしたの?」
俺がそう声を背後にかけると、明らかに驚いた様な反応をした音が聞こえる。当たりのようだ。
瞼は閉じたままだが、俺は笑顔を作り再び口を開く。
「その制服、似合ってて可愛いよ」
目を見開きながらそう言い振り返ると、視界には顔を紅潮させて恥ずかしがるキリカが居た。…………あれだね。こう…紅潮して恥じらう娘とか見てると愛でたくなるね。
っと、よくよく見ると、キリカはバスケットを抱えていた。おそらくその中身は昼食だろう。そう言えばキリカって貴族だけど貴族らしく無い気がする………
「うぅ……あ、あの………良かったら一緒に食べませんか…………?」
「勿論。むしろ俺から頼みたかったくらいだったよ。さ、そこで突っ立ってないで隣に座りなよ」
恥じらうキリカをもっと身近で見たいと思い、そう言う。キリカは紅潮させながら俺の隣に座り、バスケットに被せてある布を退かす。
バスケットの中には簡易的だが、サンドイッチが敷き詰められていた。ジャムサンドからBLTサンドまで種類豊富に用意するには時間が足りなかったのだろう。ただ、それでも美味しそうに焼かれたベーコンの香りなどが、嗅覚を刺激して食欲を湧かせる。
「あの、ケイト様のクラスはどうですか……?」
「んー?まあまあ…かな」
特に印象に残った事がないので、そう答える。
「そう…ですか……」
「何?キリカは俺が一緒のクラスが良かったのかな?」
少し儚げな彼女に、俺はふざけてみる。まぁ、言った内容は本心?でもあるんだけど。
「はうっ!そ、そんな事はなくも……ない…ですよ?」
それって、肯定してるよ。まぁ、可愛いからどうでもいいけど。
「ふーん……ま、いいか。さ、もう食べようか」
「は、はい!」
こうしてやっと俺は昼食に辿り着けた。
えっと、まずはサンドイッチの感想を言わせてくれ。
美味しかった。
一言だけど、これが俺の全力だ。この味をなんと表せばいいのか、正直言って分からない。いや、別に美味しくないわけなんじゃないよ?一応、前にキリカの寮の部屋に行った時にも確認したけど、台所があったから手作りだという事はわかる。(因みに俺が貰った部屋には無かった。何か違いでもあるのかな?)もし、これが本当に才能ならこんな味にはならないし、だからと言って下手でもこの味を作れない。そう、表現出来ないのだ。美味しくとも不味くもない。しかし、普通ではない心の底から何かを動かすような味…………
そこでふと気が付いた。俺の頬に何かが流れている。さらに、目頭は暑くなり、視界が少し燻んでいる。そう、『涙』だ。俺は泣いた。原因はおそらくキリカが作ったサンドイッチだろう。しかし、その理由がわからない。俺は何かを忘れているのだろうか?
「ケイト…様?」
「あ、ああごめん。何故か涙がね……うん、美味しいよ」
俺は涙を拭いながら、不安げなキリカを安心させる。そして以前から思っていた事を、この場になって何故か訊きたくなった。
「ねえキリカ。前から思っていたけれど、どうして俺に……その…何だ?……その………好意を示してくれているんだ?」
その質問をした瞬間、キリカは下を向く。その様子は俺に対する謝罪の様な感情が漂っている。そして長い静寂の時間が現れる。
「ごめん、今のは忘れ―――」
「似ているんです」
俺が謝罪しようとした時、やっとキリカの口が開いた。
「似ているんです…………初恋の相手に……」
その台詞聞いた瞬間、俺は何故か顔がカッと熱くなった。この感情は『照れ』ではない。『怒り』だ。何故、この感情が湧いたのかは分からない。だが、この怒りの感情はグツグツと全身を支配してくだけで、特にキリカへ攻撃しようとはしない。そう、ただじっと、俺の体を侵食するだけだ。
「別にその人と面識はありませんよ。ただ、たまに見る夢の中ででしか会った事はありません。それに……それに、告白してきたのはもう顔の分からない彼からなんです。何故か消えかけている私に……」
知っている。キリカのその夢の内容を。今も覚えている。ハッキリと。あの白い空間、幽体の自分、消えかけている桐花様……まだ、あの時からそう離れていないのに懐かしい。
「もう……大丈夫だよ」
俺の怒りの感情はすっかり収まり、残った感情は『無』。確かに嬉しい事だ。だが、それと同時に何も思わない。表面上での台詞しか頭に浮かばない。嫉妬の感情が湧かない。何故だ?
―貴方、壊れてるわね―
うるさい。サナの哀れんだ台詞と言う空耳が頭に響く。俺は壊れていない。正常だ。ちゃんと心からの言葉を送れるし、心からの感情も表情にできる。
「キリカの気持ち……分かったから」
都合悪く塔の鐘がなる。後味の悪い空気と時間に、口の中はお昼のサンドイッチのベーコンの味がしつこく残って、離れてくれなかった。
この位で次話は明日の午後くらいに(−_−;)
あのローサムの攻撃の所為で骨折した左腕はもう直っている。直っているのだが、まだ筋肉に違和感が残っている。
「ハァ……まだ午前だけど疲れた………次は座学だっけ?面倒だ…………」
深くベンチに腰を下ろしていても、リラックスできない。幸い、中庭には人気が無いのでだらけることができるが。
前言撤回。
「ん?」
足音がした。音の大きさと質からして同い年の女子生徒だろう。さらに厳密?に予想すると、身長は一六五センチぐらいで髪色は白。弱い花の香りを纏い、小動物の様に可愛い娘だ。
「やあキリカ。どうしたの?」
俺がそう声を背後にかけると、明らかに驚いた様な反応をした音が聞こえる。当たりのようだ。
瞼は閉じたままだが、俺は笑顔を作り再び口を開く。
「その制服、似合ってて可愛いよ」
目を見開きながらそう言い振り返ると、視界には顔を紅潮させて恥ずかしがるキリカが居た。…………あれだね。こう…紅潮して恥じらう娘とか見てると愛でたくなるね。
っと、よくよく見ると、キリカはバスケットを抱えていた。おそらくその中身は昼食だろう。そう言えばキリカって貴族だけど貴族らしく無い気がする………
「うぅ……あ、あの………良かったら一緒に食べませんか…………?」
「勿論。むしろ俺から頼みたかったくらいだったよ。さ、そこで突っ立ってないで隣に座りなよ」
恥じらうキリカをもっと身近で見たいと思い、そう言う。キリカは紅潮させながら俺の隣に座り、バスケットに被せてある布を退かす。
バスケットの中には簡易的だが、サンドイッチが敷き詰められていた。ジャムサンドからBLTサンドまで種類豊富に用意するには時間が足りなかったのだろう。ただ、それでも美味しそうに焼かれたベーコンの香りなどが、嗅覚を刺激して食欲を湧かせる。
「あの、ケイト様のクラスはどうですか……?」
「んー?まあまあ…かな」
特に印象に残った事がないので、そう答える。
「そう…ですか……」
「何?キリカは俺が一緒のクラスが良かったのかな?」
少し儚げな彼女に、俺はふざけてみる。まぁ、言った内容は本心?でもあるんだけど。
「はうっ!そ、そんな事はなくも……ない…ですよ?」
それって、肯定してるよ。まぁ、可愛いからどうでもいいけど。
「ふーん……ま、いいか。さ、もう食べようか」
「は、はい!」
こうしてやっと俺は昼食に辿り着けた。
えっと、まずはサンドイッチの感想を言わせてくれ。
美味しかった。
一言だけど、これが俺の全力だ。この味をなんと表せばいいのか、正直言って分からない。いや、別に美味しくないわけなんじゃないよ?一応、前にキリカの寮の部屋に行った時にも確認したけど、台所があったから手作りだという事はわかる。(因みに俺が貰った部屋には無かった。何か違いでもあるのかな?)もし、これが本当に才能ならこんな味にはならないし、だからと言って下手でもこの味を作れない。そう、表現出来ないのだ。美味しくとも不味くもない。しかし、普通ではない心の底から何かを動かすような味…………
そこでふと気が付いた。俺の頬に何かが流れている。さらに、目頭は暑くなり、視界が少し燻んでいる。そう、『涙』だ。俺は泣いた。原因はおそらくキリカが作ったサンドイッチだろう。しかし、その理由がわからない。俺は何かを忘れているのだろうか?
「ケイト…様?」
「あ、ああごめん。何故か涙がね……うん、美味しいよ」
俺は涙を拭いながら、不安げなキリカを安心させる。そして以前から思っていた事を、この場になって何故か訊きたくなった。
「ねえキリカ。前から思っていたけれど、どうして俺に……その…何だ?……その………好意を示してくれているんだ?」
その質問をした瞬間、キリカは下を向く。その様子は俺に対する謝罪の様な感情が漂っている。そして長い静寂の時間が現れる。
「ごめん、今のは忘れ―――」
「似ているんです」
俺が謝罪しようとした時、やっとキリカの口が開いた。
「似ているんです…………初恋の相手に……」
その台詞聞いた瞬間、俺は何故か顔がカッと熱くなった。この感情は『照れ』ではない。『怒り』だ。何故、この感情が湧いたのかは分からない。だが、この怒りの感情はグツグツと全身を支配してくだけで、特にキリカへ攻撃しようとはしない。そう、ただじっと、俺の体を侵食するだけだ。
「別にその人と面識はありませんよ。ただ、たまに見る夢の中ででしか会った事はありません。それに……それに、告白してきたのはもう顔の分からない彼からなんです。何故か消えかけている私に……」
知っている。キリカのその夢の内容を。今も覚えている。ハッキリと。あの白い空間、幽体の自分、消えかけている桐花様……まだ、あの時からそう離れていないのに懐かしい。
「もう……大丈夫だよ」
俺の怒りの感情はすっかり収まり、残った感情は『無』。確かに嬉しい事だ。だが、それと同時に何も思わない。表面上での台詞しか頭に浮かばない。嫉妬の感情が湧かない。何故だ?
―貴方、壊れてるわね―
うるさい。サナの哀れんだ台詞と言う空耳が頭に響く。俺は壊れていない。正常だ。ちゃんと心からの言葉を送れるし、心からの感情も表情にできる。
「キリカの気持ち……分かったから」
都合悪く塔の鐘がなる。後味の悪い空気と時間に、口の中はお昼のサンドイッチのベーコンの味がしつこく残って、離れてくれなかった。
この位で次話は明日の午後くらいに(−_−;)
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