俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?

まさみゃ〜(柾雅)

18 聖剣と魔剣の姉妹

 暗い。自分の身体がどうなっているのか分からない。転生してから人の身体は捨てた今の俺は身体は無い。言わば幽体だ。だから、少し怖い。そのまま意識が霧散して消えてしまうのか怖い、とか。次、目覚めたら彼女キリカはいるのか、とか。そんな小さな恐怖が身体にこびり付いている。
 ふと、光が見えた。しかし、それはすぐに消えてしまった。
 その光が見えた後、少ししてから小さな波が俺を揺らした。
 その揺れに身を委ねていると声を聞いた。その声は男性の様な低さは無く、女性の様な高さでは無く、子供の様な張りが無く、老人の様な萎れた声でも無かった。ただ表現出来ないが、その声は聴いていると自然と心が休まる優しさと美しさの様なものがあった。しかし、聴き惚れていると少し正気が危うくなる。。そして、次第に声が何を言っているのか聞き取れる様になった。

 『アナタは何故、認めないの?』

 ―認める?一体、何を認めなければならないんだ?―

 『何故、分からないの?』

 ―まず、俺に話しかけてくるお前は誰なんだ―

 『そんな事より貴方は早く認めなさい…アナタの ︎ ︎を……』

 ―ん?なんて言ったんだ?てか何処から声をかけているんだ―

 『そう…認めないのね……ならば仕方ない。お前の問いに答えよう』

 ―認めるも何も、まず何を認めなければならないのか聞こえなかったんだが……―

 『だからそれは、アナタがそれを認めないからよ……』

 何この矛盾している様な感じ。てか、口調も声量も女性寄りになってるし。

 『……アナタ、さっき私を誰だと訊きましたわよね?』

 ―ん?あ、ああ。そう言えばさっきそんな事を訊いたっけ。で、教えてくれるのか?―

 ちょっと考え事をしていたら、呆れた様な構って欲しそうな声色でそれは話しかけてくる。

 『何ですかその反応は……まあ良いですわ。私は聖剣。《聖剣:ゼーン=レウコン》』

 え?レンコン?…………っていうボケは止めておこう。多分女性だろうし。てか聖剣?レウコンって確か希国ギリシャで白っていう意味だっけ?まあ良いか。

 ―聖剣?聖剣が何故、魔剣の俺に声をかけるんだ?しかも助言の様な感じだし―

 『あら?アナタ、最近やっと目を覚ましたかと思えば記憶が無いのですか?父上の事も?』

 父上って製作者の事かな?でも何で聖剣が俺の事を知っているんだ?製作者が同じなのか?

 ―もしかして、俺とアンタは同じ父上に造られたのか?―

 『そうですわ。で、何処まで覚えているのですか?』

 ―全く思い出せない……―

 ここはあえて本人だと言うことにしておこう…………後々面白くなりそうだし。

 『そう……自分の存在を否定して眠りに就いたがやっと起きて嬉しく思いましたのに……』

 ん?妹?アハハハー、オカシイナー。オレハオトコナノニー…………―

 ―えっと、俺は昔にアンタの事をお姉様って呼んでいたか?―

 『呼んでいた?呼んでいたも何も、今さっきからお姉様って呼んでいるじゃ無い』

 うーん……鎌をかけられていると思ったが、今のキョトンとした反応から実際にそうなんだろうな……

 『私の事をずっとお姉様って呼んでいたから、てっきり忘れたふりでもして私を揶揄っていたと思っていましたのに……』

 あゝなんか拗ね?始めた。なんか何処かの武具の女神の相手をしているみたいで疲れる……

 ―ごめんなさいお姉様。でも、本当に何も覚えてないの……―

 うう……女口調ってちょっと喋っている自分が気持ち悪い………でも我慢しないとなぁ…………

 『し、仕方の無いい、妹ね。この私が何でも質問に答えて差し上げますわ!』

 おおー意外とチョロい。向こうはどんな風に聞こえたか気になるけど。

 ―えっとまず始めに、この世界の特徴について教えてくれる?―

 うん、今のは抵抗が無くてすんなり言えた。

 『うーん……簡単に言いますと侵食と抵抗ですわ』

 ―侵食と抵抗?―

 侵食と抵抗がこの異世界世界ってどう言う事だろうか?

 『どう表現すれば良いのかわかりませんが……まず、この世界には人族、魔族、神族、亜人族、亜神族、蛮族、龍(竜)族が存在するのはもう知っていますわよね?』

 ―ええ。起きた後ある程度は本で調べましたから―

 『その中で希に魔王と言う存在が発生するのだけど、今は居ないみたいですわね。その魔王の対になる者が勇者。よく王都の神官が魔王の発生を神託で知った時に召喚しますわ。まあ今後は未だそう言う事は無いでしょう』

 あー。聖剣がさり気無く説明の中で魔王発生フラグ立てましたわー

 『で、その魔王の目的があらゆる生物の支配ですわ。魔王は神族と亜神族以外の種族で発生するのですが、今は関係ありませんわね』

 ―じゃあ次の質問なんだけど、お姉様と私の父上の事について聞いても良いですか?―

 『正直、私も父上の事はあまり知りませんわ。ですが、最後に貴女を作った時は後悔している顔でしたわ』

 アハハハハハハハハハハハハハハハハハ……後悔?そもそも生と神水の聖剣を作ったんだから当然、次作るのはその反対の属性になるだろう?生命全ての幸運は不幸と縄の網目の様に交差しているんだ。当然の結果じゃ無いか!

 『他には聞きたい事はありまして?』

 ―じゃあ、最後に二つ。お姉様の現在地と一つの物に二つの魂はやどうことが可能か―

 『一つ目は王都。二つ目の答えは可能ですわ。可能なのだけれど魔王同様に希にですわ』

 ほう…聖剣は王都に居るのか……これは女装が必要かな?

 ―ありがとうございますお姉様。早めに会える様頑張ります―

 『そうね、私も少し楽しみにしておきますわ』

 そう言って声はしなくなった。それにしてもまだ俺の意識は魔剣に戻らない……
 暫くして、また声が聞こえた。今度はハッキリと女性だとわかる声だ。そして姿も見える。姿は腰までの水銀色みずがねいろの髪に黒いドレス、ツリ目に紫色の瞳、足は裸足で肌は色白だ。

 『やっと貴方と話せますね。織界おりさか 圭人けいとさん』

 ―ああ、やっと話せるな。《魔剣:メラン=サナトス》―

 『お姉様が相変わらず頭が少し抜けてて良かったわ』

 ―俺も本当にそう思う。てか、昔もそうだったのか?―

 『ええ。昔っから』

 何で俺が今、驚かずに会話をしている理由は簡単だ。彼女は俺であって俺では無い。俺は彼女であって彼女では無い。そう言う関係だと直感的に感じたからだ。

 ―なあ、お前は今の自分の名前をどう思う?―

 『どう思うって?』

 ―あれだ。俺がアンタを「お前」や「アンタ」って呼ぶのはちょっと扱いずらいなと思ってな。そのまま、魔剣の名前で呼んでも良いけど姿を見てハッキリと思った。アンタには他の呼び方で呼びたいって―

 『そ、それは……あ、貴方が私に名前を付ければ……』

 メラン=サナトスは少し顔を紅潮させて言う。

 ―それは別の呼び名でいいってことだね?―

 俺の問いにメラン=サナトスは首を縦に振る。

 ―じゃあ「サナ」って呼ぶよ。サナトスからとったから安易なネームだけど良いかな?それと、俺の事も好きに呼んでも良いから―

 『わ、私はそれでも構わないわ……(ありがとう…ケイト……』

 最後辺りは聞き取れなかったが気に入ってもらえて何よりだ。

 ―気に入って貰えて嬉しいよ。それじゃあ本題。サナが認めたく無いことって何?―

 『それは◼︎◼︎。ま、言っても貴方には聞き取れないけどね』

 ―そうか……なら仕方ない。地道に答えを導くか……―




 その後は、サナとたわいも無い世間話をして時間が過ぎた。

 『貴方、そろそろ起きた方がいいわよ?』

 ―そうか?じゃあそうするよ。またこんな機会があったらそれまでのお土産話を沢山用意しておくよ―

 こうして俺は目が覚めた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品