~大神殿で突然の婚約?!~オベリスクの元で真実の愛を誓います。
数年前にも見た。同じ悪夢
「わ、わわわわわわわわ」クフは慌てて翅を払った。
「いやだいやだいやだいやだ!」
神殿全体に黒い翅が降り注ぐ。マアト神だ。オベリスクの頂点に人影が見えた。
クフは王の体裁を捨て、しゃくり上げて、ティティに縋り付いた。
「嫌だ、ティティ、裁きは嫌だ! ねえ、左眼が痛いよ。僕には悪意なんか、ないんだ……本当だ、兄が、兄が全て悪いんだああああああ……!」
クフはフラフラとオベリスクを通り過ぎ、重なった階段に躍り出た。黒い翅は止まることなく、神殿を滅ぼす勢いで増え続け、クフの足元は膝までもが黒い翅に覆われた。クフはにっこりと笑ってティティに手を伸ばした。
「ティティ、ごめんなさい! 謝るよ! だから、ふふ、きみなら、僕を助けられるんだろ! みんな、聞け! 数年前の裁きは、全部兄と、この女が――嫌だ! 僕の霊魂を返せ! 火の海なんか、嫌だあああああああ!」
数人が絶叫するような複数声帯の声。
凄まじい裁きの音と、絶叫を残し、神殿内でのターナ王妃の激しい悲鳴を最後に、裁きは止んだかに思えた。しかし、轟きは収まらず、テネヴェ全体に拡がってゆく。
大きな羽音と共に、マアト神が降りてきた。
「――テネヴェ。金輪際世界に不要」
数年前にも見た。同じ悪夢が再び起きようとしていた。
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