人喰い転移者の異世界復讐譚 ~無能はスキル『捕食』で成り上がる~

kiki

51  いつか辿り着く未来のために

 




 モンスからしばらく南下すると、そこはもう戦場。
 国境線までは多少の距離があるものの、帝国側が押している現状、戦線は王都でアイヴィから説明を聞いた時よりも北上していると考えるべきだ。

 そもそも、アニムス製造の重要な拠点であるモンスに、軍が駐留していないのがおかしな話だ。
 しかも、労働者ギルドと商人ギルドの対立までもが表面化しているというのに、誰かが仲裁に入った形跡すらない。
 それだけ王国が商人ギルドとズブズブの関係だということを意味しているのかもしれないけど――帝国が一気に攻め込めば、ゾウブの存在しないこの町は瞬く間に占領されてしまうはず。
 近隣にあるミスリル鉱山まで奪われれば、もはや王国の敗戦は決定的だ。

 大体、商人ギルドの人間が40人も殺されてる時点で十分に非常事態なわけで。
 それでも軍に助けを求めない――いや、助けを求められない・・・・・・ということは、モンスの防衛に人員を割く余裕すら残っていない、ということなのかもしれない。

「フォードキンさん、まだ起きていたんですか。あんなことがあったばかりだから眠れな――あぎゅっ」

 ブジュッ!
 真正面から男の首にナイフを突き立てる。
 素早く引き抜くと、次は確実に心臓を潰し、命を奪った。
 僕は親愛なる友スウィンドラーを解除すると、「ふぅ」と一息つく。

「ひとまずこれで良し、っと」

 軍を呼ばれる可能性は低いものの、念には念をということで、アニマで暴れまわる前に可能な限り相手の戦力を削いでおくことにした。
 彼は、労働者ギルド本部を警邏けいらしていたアニムスのパイロットらしい。
 ま、プルムブムが1機増えた所で何ら困ることは無いんだけどさ。
 死体を引きずり、近くにあった棚の中に隠しておく。

 フランは単身、商人ギルドの施設へと侵入していた。
 彼女にはラビーの入手した商人ギルド施設の見取り図を渡してある。
 まずは施設内の人員を殺し、軍との連絡手段を断った上で、アニマを呼び出し町を破壊しつくす。
 彼女に見取り図が読み取れるのか、という不安はあるものの……説明したから大丈夫だと思いたい。

 僕たちは、フランがアニマを発現させたのを合図にして行動を開始することになっていた。
 まずは探知スキルで生命反応を探りながら、町を破壊しソレイユをおびき出す。
 そして彼女が出てきたら、行動不能にした上でフォードキンとラクサを殺害。
 ついでに商人ギルド側のアニマ5機も捕食する、という算段だ。

 労働者ギルド本部での仕事を終えた僕は外に出る。
 すると、百合が穏やかな笑顔で僕を迎えてくれた。
 一方でエルレアは、遠足前の子供のようにそわそわしている。
 そんなにこの町を壊すのが楽しみなのか。

 3人で商人ギルド側を眺めながら、フランのアニマが現れるのを待っていると――

「来ましたっ!」

 すぐに姿を現したアニマを見て、エルレアが興奮気味に言った。
 子供の無邪気さを表すような、空にも似た水色の機体。
 スマートな胴体と足に――だからこそ映える、アンバランスなごつい腕。
 そのいびつさが、彼女の人格を如実に表しているように思えた。
 手に持っているのは、彼女自身が生身でも扱っていたあの巨大なニッパーのような武装。
 あれでアニマすら真っ二つにするんだろう。

「行きましょう。ミサキ、ユリ」

 その姿に見惚れていた僕と百合は、エルレアの言葉で現実に引き戻される。
 あんまり待たせるとフランの機嫌を損ねてしまう。

「そうだね、始めようか。ウルティオ!」
「イリテュム!」
「テネリタスッ!」

 夜の帳を割き、モンスの町を明るく照らす3本の光の柱。
 そこから姿を表わすのは、3機の巨人。

 高くなった視界で周囲を見渡し、町の景色を目に焼き付ける。
 ほどなくしてこの町並みは全て消え失せる。
 ほんの少しセンチメンタルな気分に浸りながら――僕は数日間お世話になった宿に、ウルティオの手のひらを押し付けた。
 店主はとても人の良いおばさんで、気も効いていて、お風呂も広いしベッドもふかふか、これまで泊まってきた王国の宿の中じゃ一番良い所だった。
 本当に残念だ。
 ここが王国で無ければ、また来たいと思える宿だったのに。

「料理も美味しかったですよ。ありがとうございました、おばさん……アグニ」

 ゴオオォォォッ!
 手のひらから吹き出す炎が、宿の内側を埋め尽くし、ことごとく焼き尽くす。
 生死の確認すら必要ないほど、徹底的に。

「スキル発動ブート独り歩きする嘘アフェクテーション!」

 百合は分身を作り出すと、同時にダガーミサイルを射出する。
 射出された短剣は曲線軌道を描きながら町へとばらまかれる。
 ドドドドドドドッ!
 着弾し、炸裂し、モンスの町はみるみるうちに火の海と化してゆく。
 百合はエルレアのステータスを見てへこんでたみたいだけど、やっぱり僕にはそんなに差があるとは思えない。
 分身の耐久に難はあるものの、単純に火力が倍になって弱いわけが無いんだから。

 轟音に気づいた住民たちが、ちらほらと通りに姿を見せはじめる。
 町を破壊する3機のアニマを見上げる人間たち。
 そんな彼らを、エルレアは触腕――スキュラーで次々と串刺しにしていった。

「ひとーり」

 ドスッ!

「ふたーり」

 グチュッ!

「さんにーん」

 ドチャアッ!

 触手に突き刺され、持ち上げられ、苦しそうにもがく人間たちの姿を見て、エルレアは「あは」と笑い声を漏らす。

「駄目だよエルレア、ちゃんと殺してあげないと。人間って割としぶとかったりするから」
「あら、突き刺しただけでは死なないのですか?」
「意外とね」
「わかりました、ではもう少し入念にやってみますね」

 エルレアがそう言うと、テネリタスの触手を勢い良く振り回し始めた。
 その先端には、成人男性が突き刺さっている。
 そのまま男の体をハンマーのヘッドのように、走って逃げる女性に振り下ろした。
 バギィッ!
 両者の頭部が衝突し、頭蓋骨が盛大に陥没する。
 無論、そこまでやって生き残るはずがなく、両者はその場で絶命した。

「これでどうでしょうか?」
「完璧っ」

 僕がぐっと親指を立てると、それで調子に乗ったのか、エルレアは次々と同様のやり方で住人たちを殺していく。
 一方、商人ギルドの方は、フランの存在にまだ誰も気づいていないらしい。
 工具めいた武装を使って次々と破壊されていく施設。
 アニマ使いたちが異変に気づくのはいつだろうか、発現させるまで殺さないで欲しいとは伝えてあるけどちょっと不安だ。

 しかし、こちらの本命はソレイユ。
 彼女を呼び出すまでは、僕もぼーっとしているわけには行かない。

「可変ソーサリーガン、殲滅形態モードブリューナク

 手元に黒き銃が現れる。
 まだイリテュムのダガーミサイルの被害が及んでいない地域――モンス南東へと銃口を向けると、躊躇せず引き金を引いた。
 ドウンッ!
 放たれる楕円形の魔力の塊。
 それはほぼ無音で緩やかな放物線を描き、地表に着弾する。
 ドオオオォォオオンッ!
 瞬間――盛大な爆発音と共に、広い範囲が爆炎に包まれた。
 続けて2発目を放つ。
 それを見届けたら3発目も。
 銃口付近が赤熱する、これ以上連続で放つのは無理みたいだ。
 けど、もはや南東地域に建物らしき形跡も、生命らしき反応も残っていなかった。

 呼び水はこれで十分、そろそろ出てくるはずだ。

「ウェールスッ!」

 彼女の叫ぶような声と共に、本部付近に光の柱が現れる。
 ほら来た、予定通り。
 光が消えると、そこには黄色いアニマが立っていた。
 赤く鋭い眼光が、彼女の怒りを象徴しているようだ。

「なに……やってんだよ。なんで、どうしてこんなことをやってんだよおおおおぉぉぉぉっ!」

 そう言いながら、ウェールスが僕にチャージを仕掛けてくる。
 やっぱ早いな。
 けど――

「ナグルファルッ!」

 ガギンッ!
 宣言と共に開く腕部の三つ爪クロー。

「ハイソーサリーサーベル!」

 僕は強化されたソーサリーサーベルを握る。
 刀身の長さ、太さは以前の2倍ほどにまで伸びている。
 クローとサーベルのリーチ差は歴然、しかもそれが伸びているとなればッ!
 ブゥンッ!

「っぐぅ……!」

 薙ぎ払われたサーベルをナグルファルで受け止めるソレイユ。
 ”ただのサーベルなら”とお構いなしに突っ込むつもりだったんだろう。
 けど、ハイソーサリーサーベルはそこまでヤワな武装じゃない。
 ナグルファルでは受け止めきれなくなったウェールスは、いなすようにサーベルを受け流すと、若干後退して動きを止めた。
 奇襲は未成立、これでソレイユの唯一の勝ち筋は消えた。

「くそっ、くそっ、くそおおぉっ! わけわかんねえよ、ミサキはあたしたちの味方じゃなかったのかよ!」
「タヴェルナに依頼されただけだよ、彼が死んだ時点で労働者ギルドのために戦う理由は無くなった」
「だからって、こんな……こんなことっ! みんなを殺して何になる!? 殺人鬼だって居るんだぞ!?」
「殺人鬼なら友達になったよ、ほら」
「何……?」

 ウルティオで商人ギルドの方を指差す。
 彼女はその時、初めてそこに煙が上がっていることに気づいたらしい。

「うそ……だろ? なんで商人ギルドまでやられてるんだよ、だったらミサキたちは一体何のためにこんな真似をしてるんだよ!?」

 なるほど、労働者ギルドを裏切って商人ギルドに付いたと思われてたわけか。
 その二択しか無かったわけだ。

「ソレイユと一緒だよ」
「あたしと?」
「復讐」
「一体誰に!?」
「幼馴染を殺し、その罪を僕になすりつけた王国そのものに。この国を滅ぼすまで、僕は止まるつもりなんて無いから」
「だから……だから、この町も滅ぼすのか?」
「その通り」

 それだけとは言わないけど。
 まあ、今はどうでもいいことだ。

「ふざけるな、やらせるもんかっ、ここはあたしの故郷だ! あたしの全てだ! あんたたちがモンスを滅ぼすって言うんなら、あたしが止めてみせる!」

 その愛情は本物だ。
 けど強すぎる想いであるがゆえに、彼女を縛り付ける。
 命を救ってやる、開放してやる、なんて善人ぶるつもりはない。
 僕は僕の都合のためにこの町を滅ぼし、ソレイユに恨まれてみせよう。

「やってみなよ、できるもんならね」
「おおおおぉぉぉおおおおおっ!」

 再びウェールスが特攻をしかけてくる。
 基本的に近接武装しか持たないアニマだ、距離を取ってヴァジュラなりガーンデーヴァなりでちまちま削ればいつか倒れる。
 けど、それじゃあちょっと物足りないかな。

「ふっ!」
「甘いっ!」

 あえてソーサリーサーベルで接近戦を挑む。
 振り下ろしたサーベルは回避され、懐にまで入り込まれた。
 クローがウルティオの胴体を掴もうと迫る。

「足、もらったァッ!」

 僕は膝を立ててそれをガードする。

「フリームスルスッ!」

 そして脚部冷却機構の発動。
 本来なら、開いた三つ爪は足を掴むために閉じるはずだった。
 けれど足に触れたことでナグルファルは氷付き、機能不全を起こしてしまう。
 戸惑い、生じる隙。
 そこを見逃さず、僕はウェールスの肩めがけて回し蹴りを放つ。
 ガギンッ!

「ぐあぁっ!」

 ソレイユの苦悶の声、横に吹き飛ばされるウェールス。
 さらに回し蹴りをモロに食らった肩まで凍りついてしまった。
 ウェールスのパワーならしばらくすれば壊せるだろうけど、そんなインターバルを与えるつもりはない。
 地面に転がる彼女に接近、サーベルを突き刺す。
 ウェールスは転がり、破壊された家をさらに砕きながらそれを回避した。
 だが体勢はまだ整えられないまま。
 僕は頭部ハイソーサリーガンで追撃。
 ドドドドドッ!
 以前と比べ、明らかに威力と弾速の増したソーサリーガンは、もはや牽制用とは呼べない威力になっていた。

「ちくしょうっ、ちくしょおおおおっ!」

 凍りついていない腕でガードしようとするも、体をカバーすることはできない。
 一方的にHPを減らされていく現状に、悔しがることしか出来ないソレイユ。

「エルレア、ちょっといい?」

 僕は少し離れた場所にいるエルレアを呼び出す。
 彼女は僕の声を聞いた途端に、すぐさま駆け寄ってきてくれた。

「どうしたのですか、ミサキ」
「テネリタスの触手でウェールスを縛り上げて欲しいんだ」
「わかりました、お安い御用です!」

 テネリタスの両手の触手がウェールスに伸びる。
 そして四肢を縛り、そのまま体を持ち上げた。

「離せええぇぇぇっ!」

 もちろんソレイユは抵抗したが、ウェールスがもがいた所で触手は外れない。
 さて、彼女のHPは残りどれぐらいだろうか。
 手の感触で判別するために、僕はソーサリーサーベルを一旦収納し、手甲剣シヴァージーを展開した。
 そして縛られたウェールスに近づき、おもむろに振り下ろす。

「あぐぅっ」

 ザシュッ! ザシュッ!
 僕は何度も何度も斬りつけた。
 その度にソレイユから苦しそうな声があがり、正直に言うと少しだけ楽しかった。
 けど、目的は彼女を殺すことじゃない。
 斬りつける感覚でわかる、少しずつウェールスの障壁が弱まっていることに。
 かれこれ10回以上斬りつけてもHPが無くならないあたり、かなり丈夫なアニマであることは間違いないみたいだ。
 これだけの強さがあれば、1人でだって生きていけるはず。

「あ、ぐあああぁぁぁぁぁっ!」

 ひときわ大きな叫びがあがる。
 ウェールスの肩口には傷跡が刻まれていた。
 どうやら、HPが0になってしまったみたいだ。
 これ以上続けると死んでしまう、僕はシヴァージーを収めた。

「ここからどうするのですか?」
「一旦下ろしてもらっていいよ、エルレアは予定通り2人を連れてきて」
「わかりました、”仕上げ”ですね」

 ウェールスがテネリタスの触手から開放される。
 ガシャアンッ!

「ぐぇっ」

 勢い良く地面に叩きつけられ、ソレイユが呻く。
 HP0とはいえ、まだ活動を停止したわけじゃない。
 逃げられないよう、僕はウェールスに近づくと、その胴体を足で踏みつけた。

「ぐ、ぁ……ミサキぃ……なんでだよぉ……!」

 それは、僕が初めて聞くソレイユの泣き言だった。
 せいぜい数日の付き合いなのに、まさかそこまで懐かれてたとは。
 まあ、それは僕も一緒か。

「なんで、か」
「わけわかんねぇよ……気が合うやつだと思ってたのに、一緒に戦ってくれると思ってたのにぃ……!」
「僕もそう思ってた」
「じゃあ、なんで!?」
「だからだよ」
「……は?」
「ソレイユのことが気に入ってた、だからこういうことになった」
「ふざけるなっ、真面目に答えろぉおおっ!」

 これ以上無いほど誠実に答えたつもりなんだけどな。
 エルレアも戻ってきたし、無駄話はこれぐらいにしよう。

「連れてきましたよ」

 戻ってきたテネリタスの触手の先には、フォードキンとラクサの姿があった。

「なぜだい、どうしてこんなことを!?」
「やめなさいっ、もうこんなことはやめてぇっ!」

 ソレイユと似たような事を言うフォードキンとラクサ。

「まさか……」

 そんな2人を見て、ソレイユは何かに気づいたみたいだ。
 そう、その通りだよ。
 僕は――ソレイユに復讐を成し遂げて欲しいと思ったんだ。
 今は君に真実を伝えることはできないけれど、それでも。

「やめろっ、やめろよおぉおっ! その2人だけはっ、頼むからぁ!」
「どうして?」
「あ、あたしの、両親が死んだあたしの、唯一の家族だからだっ! フォードキンとラクサが居なかったら、あたしは今まで生きてこれなかった!」

 まあ、この2人が居なかったら両親も死ななかったんだけどさ。

「だから、だから頼む。あたしの命でもなんでも捧げるから、その2人だけは!」
「うーん、エルレアどうする?」
「殺しましょう」
「だってさ」
「あ、ああぁ、あああああああぁァァァああっ!」

 悲痛な叫びが轟く。

「じゃあ始めよっか」

 フォードキンとラクサの体は、地面に倒れ身動きの取れないウェールスに近づいていく。
 僕はウェールスの腕を掴むと、そのテネリタスの触手をその手のひらに誘導した。
 大きな手に、2人の体がすっぽりと収まる。

「やめろ……やめろぉおおおおおおおおお!」

 やめないよ。
 だってこれは、ソレイユの復讐なんだから。
 ソレイユが成さなければ、何の意味もない。

「もうだめか……ソレイユ、お前は、私たちの自慢の娘だった……」

 諦めたフォードキンが、別れの言葉を告げる。

「ソレイユちゃん……あなたと一緒に生きてこられて、私幸せだったわ……」

 続けてラクサまでも。
 ああ、なんて吐き気のする茶番だろうか。
 彼女の両親を殺しておいて、こいつらはどんなつもりでそんな言葉を吐いているんだろう。

「あ、あああぁぁっ、フォードキン、ラクサぁぁぁぁぁぁっ!」

 ウルティオの両手でウェールスの手のひらを包み込む。
 そしてそのまま、ぎゅっと力を込め――
 ぐじゅっ。
 折れ、潰れ、砕ける。
 そんな感覚をウェールスの手のひらごしに感じながら、2人にとどめを刺した。
 手の内で、フォードキンとラクサの体が潰れ、混ざり合う。
 ウェールスの手のひらから、ドロリとした血が滴り、体に落ちた。
 ぽたり、ぽたりと。
 ソレイユはその光景を唖然として眺めている。
 僕がその手を開放すると、ソレイユは恐る恐るウェールスの手のひらを開き、フォードキンとラクサの亡骸を見てしまった。

「あ、あぐ……ぐぅぅぅうううう、あああああぁぁぁっ、ああっ、うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 涙混じりの咆哮。
 その死体がどんな有様だったか、僕は見ていない。
 けど、手のひらに伝わってきた感触から想像できないこともない。
 もはや、人としての原型も留めていなかっただろう。
 どちらがフォードキンで、どちらがラクサかもわからなかっただろう。
 人を殺し、その娘を利用し続けた悪党に相応しい末路じゃないか。

 きっといつか、ソレイユが僕に感謝する日がやってくる。
 その日を今から、楽しみにしているよ。

 心の中でそう呟き、僕はウェールスに背中を向ける。
 商人ギルドの方では、フランがすでに3機のアニマを破壊し、興味深そうにこちらを眺めていた。
 さて、メインディッシュも終えた所だし、食事のデザートと行こうか。





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