私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
二十八話『討伐参加者大集合』
翌朝、私は騎士様に連れられて、またもギルドにたどり着いた。相変わらずのギルドの扉をくぐると、そこにはBランク以上の冒険者たちがいた。
Bランク以下の冒険者たちはその威圧感に、隅に追いやられている。そして私とフーラと名無しの登場により、全体的にざわめきが起きる。
『おい……あいつらだよな……来て早々ギルマスに呼ばれたってのは』
『実力ご拝見だぜ? 俺らまだ死にたくねえから後ろに隠れるわ』
『バカじゃないの? あんな小さい子たちの後ろに隠れるつもりなの?』
『いや、あの威圧感……半端ねえ気がする。年齢という物差しは捨てろとギルマスに宣言してたほどだしな……』
さすがは経験値の高いBランク以上の冒険者たち。喧嘩をしなくても相手の実力がおのずとわかるくらいには実力がある。
私たちは視線になれているのでそのまま騎士様に連れられてVIPの席にどす、と座る。VIPの席はフィオが用意してくれた私達にしか使えない席だ。
受付にはいつも通りミルフィがいるわけではなく、今日の受付の席には誰もいなかった。何分か待っていると、フィオが奥から出てきた。
「皆、集まってくれてありがとう。ギルドマスターのフィオだ」
「こんにちは。私は賢者のシオンです。今回の神龍討伐は死傷者をなるべく少なくするため私が出ていくことになりました」
鉛色の瞳が全てを射抜く。フィオより圧倒的な存在感がギルド内を埋め尽くした。隣の名無しがこそっと私に声をかける。
「賢者シオンはこの地帯で一番有名な賢者だよ。彼女を怒らせたら間違いなくこの地域の人々を敵に回す」
「うん、分かった、怒らせないように頑張る……!」
私の意気込みと共に、誰が何処でどう行動するかの話が着々と進められていく。フーラがちゃんと聞いているので名無しがさぼっている。
私もちゃんと聞きたいのだが、シオンの話す言葉が難しすぎて意味が分からない。
薄いスカイブルーの髪をポニーテールにした彼女の顔は、フィオと似ていた。少し失礼かもしれないがシオンの方が確かに可愛い。
可愛いというより、綺麗だ。
経験も綺麗さも強さも全てがフィオを上回っていることが分かった。
フィオの方を見ると、圧倒的存在感と人気に苦笑いしているのが見えた。
「それでは、話は全て終わりましたので、私とフィオについてきてください。長旅にはならないのでご安心ください」
『『『『うおおおおおおおおおおおっ!!』』』』
雄叫びがたくさん、色んなところで上がる。確かにすごい人気だ。しかし、シオン自身は圧倒的人気に苦笑いをしている。
彼女としては迷惑だと思っているのだろうか、でも私にとってはシオンを目指している。目立たなければ魔王様と合流できないしね。
ああ。
少し魔王様のことを考えてしまったら寂しくなってしまった。シオンとフィオについていくも、少し涙を流してしまう。
「フィ……ティラお嬢様?」
「ううん、大丈夫だよセルカ……ちょっと思い出しちゃっただけだから」
「どうなさいましたか?」
「騎士様、私は大丈夫。気にしなくていいよ」
最近宿ではフィリアお嬢様と言っているのだからフーラが一瞬間違えてしまうのも無理はない。私もセルカの名を呼ぶときぎごちない。
しかし、名無しの『ゼロ』を呼ぶときは不思議と全く違和感がしないのだ。
名無しを見つめていると、名無しに不思議そうな顔で見つめ返された。騎士様は何が何なのかよくわからず黙っている。
フーラも魔王様のことを考えているようで、空を見て寂しそうにしている。
十分、ニ十分、三十分と時間は過ぎていく。
山脈は近づき、体力もそこまで消耗はしていない。
―――しかし、魔王様成分が足りない。ストレスがたまる。さみしい。
「仕方ない、暴れて来るしかないよ」
「おっと、ティラお嬢様がストレス発散かな? こりゃ僕とフーラの活躍現場は減っちゃったようだね……仕方ないか」
「わたくしは活躍現場が減っても問題はありません。ティラお嬢様の御意向でしたら、わたくしが口をはさむ義理は無いのです」
―――相変わらずフーラは堅苦しい。
しかし今日はまた違った意味で、心がごちゃごちゃいしているからだろう。魔王様がちゃんと無事に此処に近づいているのか、私もずっとそれだけを考えていた。
ふと名無しの方を見ると、ぞくり、と背筋が冷たくなった。
―――何かある、何かある何かある!!
背後に広がるのは何だか見覚えがある暖かくも苦しくのどを締め付ける闇。
覚えているはずなのに、どうしてそれの名が思い出せない?
「ねえゼロ、今魔力放出してる?」
「うん? ……ははっ、してないよ。今したら……全員死んじゃうでしょ」
気を抜いたら取り込まれてしまうような深い闇の声が、私の心臓をどくん、と波打たせている。名無しの方は何も気にしていないようだ。
しかし、彼が自分から闇を放出しているのは私も気付いた。
―――僕は魔王様を裏切ることは無い、でもね。
―――君を見過ごすわけには行かないんだよ。
心の中に、名無しは私にそう語りかけてきた。何を意味するのか分からない。
「どうしたんです? ゼロがまた何か吹き込んだんですか? 帰ったらぶちのめしますのでお機嫌を直してくださいまし」
「ちょ、ちょっと! なにさりげなく僕をぶちのめそうとしているんだい? 僕の命は無限じゃないんだからね!?」
「……早く行こう、もうすぐ着くから!」
必死に感情を抑え込んで、私はフーラと名無しの手を引いた。
いつもは暖かい名無しの手が、今日は心を冷やすように冷たかった―――。
Bランク以下の冒険者たちはその威圧感に、隅に追いやられている。そして私とフーラと名無しの登場により、全体的にざわめきが起きる。
『おい……あいつらだよな……来て早々ギルマスに呼ばれたってのは』
『実力ご拝見だぜ? 俺らまだ死にたくねえから後ろに隠れるわ』
『バカじゃないの? あんな小さい子たちの後ろに隠れるつもりなの?』
『いや、あの威圧感……半端ねえ気がする。年齢という物差しは捨てろとギルマスに宣言してたほどだしな……』
さすがは経験値の高いBランク以上の冒険者たち。喧嘩をしなくても相手の実力がおのずとわかるくらいには実力がある。
私たちは視線になれているのでそのまま騎士様に連れられてVIPの席にどす、と座る。VIPの席はフィオが用意してくれた私達にしか使えない席だ。
受付にはいつも通りミルフィがいるわけではなく、今日の受付の席には誰もいなかった。何分か待っていると、フィオが奥から出てきた。
「皆、集まってくれてありがとう。ギルドマスターのフィオだ」
「こんにちは。私は賢者のシオンです。今回の神龍討伐は死傷者をなるべく少なくするため私が出ていくことになりました」
鉛色の瞳が全てを射抜く。フィオより圧倒的な存在感がギルド内を埋め尽くした。隣の名無しがこそっと私に声をかける。
「賢者シオンはこの地帯で一番有名な賢者だよ。彼女を怒らせたら間違いなくこの地域の人々を敵に回す」
「うん、分かった、怒らせないように頑張る……!」
私の意気込みと共に、誰が何処でどう行動するかの話が着々と進められていく。フーラがちゃんと聞いているので名無しがさぼっている。
私もちゃんと聞きたいのだが、シオンの話す言葉が難しすぎて意味が分からない。
薄いスカイブルーの髪をポニーテールにした彼女の顔は、フィオと似ていた。少し失礼かもしれないがシオンの方が確かに可愛い。
可愛いというより、綺麗だ。
経験も綺麗さも強さも全てがフィオを上回っていることが分かった。
フィオの方を見ると、圧倒的存在感と人気に苦笑いしているのが見えた。
「それでは、話は全て終わりましたので、私とフィオについてきてください。長旅にはならないのでご安心ください」
『『『『うおおおおおおおおおおおっ!!』』』』
雄叫びがたくさん、色んなところで上がる。確かにすごい人気だ。しかし、シオン自身は圧倒的人気に苦笑いをしている。
彼女としては迷惑だと思っているのだろうか、でも私にとってはシオンを目指している。目立たなければ魔王様と合流できないしね。
ああ。
少し魔王様のことを考えてしまったら寂しくなってしまった。シオンとフィオについていくも、少し涙を流してしまう。
「フィ……ティラお嬢様?」
「ううん、大丈夫だよセルカ……ちょっと思い出しちゃっただけだから」
「どうなさいましたか?」
「騎士様、私は大丈夫。気にしなくていいよ」
最近宿ではフィリアお嬢様と言っているのだからフーラが一瞬間違えてしまうのも無理はない。私もセルカの名を呼ぶときぎごちない。
しかし、名無しの『ゼロ』を呼ぶときは不思議と全く違和感がしないのだ。
名無しを見つめていると、名無しに不思議そうな顔で見つめ返された。騎士様は何が何なのかよくわからず黙っている。
フーラも魔王様のことを考えているようで、空を見て寂しそうにしている。
十分、ニ十分、三十分と時間は過ぎていく。
山脈は近づき、体力もそこまで消耗はしていない。
―――しかし、魔王様成分が足りない。ストレスがたまる。さみしい。
「仕方ない、暴れて来るしかないよ」
「おっと、ティラお嬢様がストレス発散かな? こりゃ僕とフーラの活躍現場は減っちゃったようだね……仕方ないか」
「わたくしは活躍現場が減っても問題はありません。ティラお嬢様の御意向でしたら、わたくしが口をはさむ義理は無いのです」
―――相変わらずフーラは堅苦しい。
しかし今日はまた違った意味で、心がごちゃごちゃいしているからだろう。魔王様がちゃんと無事に此処に近づいているのか、私もずっとそれだけを考えていた。
ふと名無しの方を見ると、ぞくり、と背筋が冷たくなった。
―――何かある、何かある何かある!!
背後に広がるのは何だか見覚えがある暖かくも苦しくのどを締め付ける闇。
覚えているはずなのに、どうしてそれの名が思い出せない?
「ねえゼロ、今魔力放出してる?」
「うん? ……ははっ、してないよ。今したら……全員死んじゃうでしょ」
気を抜いたら取り込まれてしまうような深い闇の声が、私の心臓をどくん、と波打たせている。名無しの方は何も気にしていないようだ。
しかし、彼が自分から闇を放出しているのは私も気付いた。
―――僕は魔王様を裏切ることは無い、でもね。
―――君を見過ごすわけには行かないんだよ。
心の中に、名無しは私にそう語りかけてきた。何を意味するのか分からない。
「どうしたんです? ゼロがまた何か吹き込んだんですか? 帰ったらぶちのめしますのでお機嫌を直してくださいまし」
「ちょ、ちょっと! なにさりげなく僕をぶちのめそうとしているんだい? 僕の命は無限じゃないんだからね!?」
「……早く行こう、もうすぐ着くから!」
必死に感情を抑え込んで、私はフーラと名無しの手を引いた。
いつもは暖かい名無しの手が、今日は心を冷やすように冷たかった―――。
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