私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
二十四話『まだ平穏である…』
腰に差した剣はミスリルで作られている、魔王城で最も価値が高いものだ。これは魔王様に白銀の杖をあまり出さないで欲しいと頼まれたからだ。
余程の敵でなければ、シルヴィアを出す必要はない。
逆にシルヴィア出ないと倒せない敵が向かってくるのなら、それは人間界が魔王軍をはめた、それかとても危ない国になっているのかのどちらか。
まあ、どちらにせよそうなれば人間界に協力することはできない。
「フーラぁー! 名無しー! こっちこっちー!」
「ふふ、フィリアお嬢様、はしゃいでいますね。何せ、魔王城から出たことがないですからね」
「僕は人間界、行ったことあるよ。戦争の時に今のフィリアと同じく偵察を任されてね」
「それって終焉の戦? 魔王様のおじーちゃんの時代でしょー?」
代が変わるたびに毎度毎度戦争は起きる。しかもそれの全てに名前が付くのだからまた覚えるのが面倒くさい。
名無しは私の記憶力に苦笑いをして頷いた。
魔王様と私はこういうのを覚えるのに現在奮闘しているのだ。
毎度毎度起きた戦争で、人間界は負ける。しかし毎度毎度魔王は死ぬ。勇者と太刀打ちしている間に人間界は落とされるが、勇者に殺される。その後その勇者は後から来る大魔王に攻められるか邪神に祟られるかで同じく死ぬ。
しかし例外があった。
魔王様のおじいちゃんは勇者を殺した。後から来る大魔王も祟る邪神も、いつも通りのエピローグもまた訪れることは無かった。
魔王様のおじいちゃんは一度世界を壊し練り直し、おじいちゃんの代に居た人々を全て抹消し新たな人々を生み出した。それと共に魔王様のおじいちゃんも死んだ。
ラグナログが一番の戦いであり、歴史にも大きく乗っている。何故すべてが抹消されたのにデータが残っているかというと、魔王初代から今まで生きている運命体がデータを残したからだ。
と、そこまでは学習してある。
そこまで学習した時、魔王様が『俺もこれくらい強ければな』と言って苦笑いしていたのを覚えている。
「黙示録は失われましたが、現在人間界に甦ったそうです。マヤ大帝国女王クラウディアの手に」
「人間界に、そんな強いものがよみがえっていいの?」
「ええ、大丈夫です。いまフィリアお嬢様が手にしているシルヴィアは、初代『世界壊しの杖』に認定されておりますので」
世界壊しの杖は四本。初代世界皇、つまり世界を作り上げた王が作り上げた杖。そのうち一番の傑作がシルヴィアだ。
黙示録はシルヴィアの次に作られた杖である。
もうひとつ、第三の杖氷帝についても魔王城にある。
初代世界皇の持つ力は『魔』である。真にその力を引き継ぐものは魔王のどの者にもいなかった。しかし私は信じている。
―――私は、信じているんだ。魔王様がそうだということを。
もうひとつ、第四の杖魔杖も魔王城にて保存されている。
しかし第二の杖である黙示録が人間界に存在することが危険であることは、フーラの冷汗と名無しの険しい顔から感づける。
「おっとフィリア、マヤ大帝国王都―――王都フリーディングについたよ」
「フリーディング……ここが」
大門をくぐると、大商人がいたり、あちこちで屋台が開かれていたり、数々の宿屋が呼び込みをしていたり、子供たちがはしゃいでいる。
鼻に絶えず入ってくる肉の香りは、悪いものではなかった。
人々の喧噪の声を気にせず歩くと、色んな店を見た。冒険者用の服装を売る者、武器専用の店、あと変態チックな店もあった。
ちなみに変態チックな店についてはフーラと名無しが二人がかりで見せてくれなかった。
マヤ大帝国の中心地、王都フリーディング。
治安もそこまで悪くなく、商売も良く出来る地であり商人たちにも人気だ。
「いいところだね。でも名無し、報告によると色々被害を受けてるって言ってなかったっけ?」
「ああ、受けてるよ、でもここはきっと影響を受けない。少し奥に行ってみればどうしてなのかわかるはずだよ」
名無しに言われた通りもっと奥に行くと、ギルドの大きな建物が見えた。それを境に、道が削れ、人もまばらになる。
あちこちで魔物が出たりするのをフーラは軽々と切り裂く。
私を十五歳の姿で、茶色の髪をポニーテールにしたのは魔王様のスキルだ。十五歳らしくしなければ怪しまれる。
ギルドの下には柵があり、明らかに結界がかかっている。
ギルドに出入りするためには特別なカードを持つ必要があるのだが、それについては名無しがいるので心配はない。
「ギルド登録がしたいんですけど」
名無しの格好が怪しすぎて、周りの少し怖そうな……いや、とっても怖い冒険者さんたちがざわついている。
その名無しのまわりにいるのがフーラさんみたいな美少女だと、さすがに名無しをにらむ人も出て来るよねー。
(まてあの十五歳くらいの子、可愛いぞ……?)
(いや、あっちのメイド服の子の方が好きだな)
(オレは断然ポニーテールちゃんだな)
(でも私あの黒い人のミステリーチックな感じ好きだわぁ)
実は三人とも人気があったのは、冒険者達軍団だけの話になるだろう。
受付に立つと、緑色の髪をショートカットにしたお姉さんが「はあい」と受付の奥からばたばたと走ってきた。
「登録ですね。了解しました。ではこちらに名前を記しましたら、登録は終了です」
現実怖し。血で登録も、住所登録もなく、名前だけでよいとは。名無しに小声で『偽名だよ』とささやかれ、慌てて『ティラ』と書く。
フーラは『セルカ』、名無しは『ゼロ』と書いた。
何故『ゼロ』なのか聞くと、友人の名が『ゼロ・ヴァタニス』だからだそうだ。
どこかで聞き覚えがあるような名前だが、今は考えないようにした。
それから、お姉さんは自分の名前を、ミルフィと紹介してくれた。
「まず、冒険者ランクには一番下でGからSSのランクがあります。その上に完全名誉賞でMランクがありますが、そこまで達したものは一人しかいません」
「いるんですか?」
「現在の運命体様です!」
そう言ってミルフィは誇らしげに、自分のことかのように胸を叩いた。
―――どうやら、ミルフィさんは運命体を信じる信仰者のようだ。
余程の敵でなければ、シルヴィアを出す必要はない。
逆にシルヴィア出ないと倒せない敵が向かってくるのなら、それは人間界が魔王軍をはめた、それかとても危ない国になっているのかのどちらか。
まあ、どちらにせよそうなれば人間界に協力することはできない。
「フーラぁー! 名無しー! こっちこっちー!」
「ふふ、フィリアお嬢様、はしゃいでいますね。何せ、魔王城から出たことがないですからね」
「僕は人間界、行ったことあるよ。戦争の時に今のフィリアと同じく偵察を任されてね」
「それって終焉の戦? 魔王様のおじーちゃんの時代でしょー?」
代が変わるたびに毎度毎度戦争は起きる。しかもそれの全てに名前が付くのだからまた覚えるのが面倒くさい。
名無しは私の記憶力に苦笑いをして頷いた。
魔王様と私はこういうのを覚えるのに現在奮闘しているのだ。
毎度毎度起きた戦争で、人間界は負ける。しかし毎度毎度魔王は死ぬ。勇者と太刀打ちしている間に人間界は落とされるが、勇者に殺される。その後その勇者は後から来る大魔王に攻められるか邪神に祟られるかで同じく死ぬ。
しかし例外があった。
魔王様のおじいちゃんは勇者を殺した。後から来る大魔王も祟る邪神も、いつも通りのエピローグもまた訪れることは無かった。
魔王様のおじいちゃんは一度世界を壊し練り直し、おじいちゃんの代に居た人々を全て抹消し新たな人々を生み出した。それと共に魔王様のおじいちゃんも死んだ。
ラグナログが一番の戦いであり、歴史にも大きく乗っている。何故すべてが抹消されたのにデータが残っているかというと、魔王初代から今まで生きている運命体がデータを残したからだ。
と、そこまでは学習してある。
そこまで学習した時、魔王様が『俺もこれくらい強ければな』と言って苦笑いしていたのを覚えている。
「黙示録は失われましたが、現在人間界に甦ったそうです。マヤ大帝国女王クラウディアの手に」
「人間界に、そんな強いものがよみがえっていいの?」
「ええ、大丈夫です。いまフィリアお嬢様が手にしているシルヴィアは、初代『世界壊しの杖』に認定されておりますので」
世界壊しの杖は四本。初代世界皇、つまり世界を作り上げた王が作り上げた杖。そのうち一番の傑作がシルヴィアだ。
黙示録はシルヴィアの次に作られた杖である。
もうひとつ、第三の杖氷帝についても魔王城にある。
初代世界皇の持つ力は『魔』である。真にその力を引き継ぐものは魔王のどの者にもいなかった。しかし私は信じている。
―――私は、信じているんだ。魔王様がそうだということを。
もうひとつ、第四の杖魔杖も魔王城にて保存されている。
しかし第二の杖である黙示録が人間界に存在することが危険であることは、フーラの冷汗と名無しの険しい顔から感づける。
「おっとフィリア、マヤ大帝国王都―――王都フリーディングについたよ」
「フリーディング……ここが」
大門をくぐると、大商人がいたり、あちこちで屋台が開かれていたり、数々の宿屋が呼び込みをしていたり、子供たちがはしゃいでいる。
鼻に絶えず入ってくる肉の香りは、悪いものではなかった。
人々の喧噪の声を気にせず歩くと、色んな店を見た。冒険者用の服装を売る者、武器専用の店、あと変態チックな店もあった。
ちなみに変態チックな店についてはフーラと名無しが二人がかりで見せてくれなかった。
マヤ大帝国の中心地、王都フリーディング。
治安もそこまで悪くなく、商売も良く出来る地であり商人たちにも人気だ。
「いいところだね。でも名無し、報告によると色々被害を受けてるって言ってなかったっけ?」
「ああ、受けてるよ、でもここはきっと影響を受けない。少し奥に行ってみればどうしてなのかわかるはずだよ」
名無しに言われた通りもっと奥に行くと、ギルドの大きな建物が見えた。それを境に、道が削れ、人もまばらになる。
あちこちで魔物が出たりするのをフーラは軽々と切り裂く。
私を十五歳の姿で、茶色の髪をポニーテールにしたのは魔王様のスキルだ。十五歳らしくしなければ怪しまれる。
ギルドの下には柵があり、明らかに結界がかかっている。
ギルドに出入りするためには特別なカードを持つ必要があるのだが、それについては名無しがいるので心配はない。
「ギルド登録がしたいんですけど」
名無しの格好が怪しすぎて、周りの少し怖そうな……いや、とっても怖い冒険者さんたちがざわついている。
その名無しのまわりにいるのがフーラさんみたいな美少女だと、さすがに名無しをにらむ人も出て来るよねー。
(まてあの十五歳くらいの子、可愛いぞ……?)
(いや、あっちのメイド服の子の方が好きだな)
(オレは断然ポニーテールちゃんだな)
(でも私あの黒い人のミステリーチックな感じ好きだわぁ)
実は三人とも人気があったのは、冒険者達軍団だけの話になるだろう。
受付に立つと、緑色の髪をショートカットにしたお姉さんが「はあい」と受付の奥からばたばたと走ってきた。
「登録ですね。了解しました。ではこちらに名前を記しましたら、登録は終了です」
現実怖し。血で登録も、住所登録もなく、名前だけでよいとは。名無しに小声で『偽名だよ』とささやかれ、慌てて『ティラ』と書く。
フーラは『セルカ』、名無しは『ゼロ』と書いた。
何故『ゼロ』なのか聞くと、友人の名が『ゼロ・ヴァタニス』だからだそうだ。
どこかで聞き覚えがあるような名前だが、今は考えないようにした。
それから、お姉さんは自分の名前を、ミルフィと紹介してくれた。
「まず、冒険者ランクには一番下でGからSSのランクがあります。その上に完全名誉賞でMランクがありますが、そこまで達したものは一人しかいません」
「いるんですか?」
「現在の運命体様です!」
そう言ってミルフィは誇らしげに、自分のことかのように胸を叩いた。
―――どうやら、ミルフィさんは運命体を信じる信仰者のようだ。
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