私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
十七話『破滅へ向かう道とは』
ブラックホール―――《ゲート》がいくつもあちらこちらで開き、ライテリアが手を向ける所から順々に開くことを止めようとしない。
引力も大きく、アリアとリゼは後ろへ後退することを命じられる。
「本気を出しちゃったみたいだね……そうなったら終わりだと言ってるのに」
フラネスが両手を広げると、全ての《ゲート》が威力を失って消えてなくなる。怒りに染まっていたライテリアも、驚きで声も出ない。
魔王の技を簡単に退かせるのは、簡単なことではないからだ。
「放っておくとそろそろ必殺技を出してきそうだから―――《破壊》」
「がはっ―――」
「やっぱりね。ライテリア、君はその力をちゃんと扱えていないんだよ……その分際で魔王の剣が何ちゃら言ってる場合じゃないんだからね」
「あ、アリア! 魔王様をお願い、撤退よ!!」
破壊のスキルとは、指定したものを全て破壊するスキル―――オーバーキルなチートだ。ライテリアは全身を切り刻まれ、血肉を《破壊》される。
リゼは必死に剣を振るいながらも倒れるライテリアを支えるアリアに決死の覚悟で叫ぶ。のどが擦れるまで叫んだ声は裏返ってしまう。
アリアも必死に魔術で盾を作りながらライテリアを守って撤退する。
魔族は皆使える転移魔術を使ってリゼを心配そうに、涙で潤った瞳で見ながらアリアは転移した―――。
―――どうしてこんなに弱いのだろうか。
アリアは唇を噛み―――無力な自分を呪った。
「ふうん、忠実な部下なんだ。じゃあそのまま死んでくれる《破か―――」
「させませんわよ、《砂塵》!」
「わっ」
サテラとライトだ。
二人とて勝てるとは思っていないが、転移で逃げるつもりだ。
サテラが砂の壁を作り、負傷したリゼをライトに受け渡す。
「どうするんっすか! 逃げられる確率も低いっすよ!?」
「―――その場合は、命は捨てればいいんですのよ。私たちは、所詮魔王様のために産まれた人形なんですのよ、覚悟なさい」
「ごめんなさい……サテラさん……魔王様を……守れずに……」
「ううん、いいんですのよ。魔王様は無事、それが分かればいいのですわ」
サテラの作った砂塵の壁が、崩れた。フラネスの操る真っ白な剣が、きらりと砂の石の光に反射して光る。
少しでもそれを見つめていた時間が、長かったようだ。
気付けばフラネスは目の前に居て、振り下ろされる剣に何とか耐える。
「へえ、君、やるじゃん。少なくともあの愚かな魔王よりはね―――」
「愚かだと言われる義理はありませんわ! あの方は貴方よりは立派な人ですのよ! 私たちが一番よく分かっていますわ!」
「へぇ、知った気どりか。あいつに魔王の座を持つ権利がないんだよ。力にしても性格にしても、魔王となるにはほど足りない」
「貴方なんかに―――!」
「最近は終わっているな。魔王の血を引いたからって魔王になれるだなんて、バカげた仕組みだ。僕が魔王になってもいいくらいだよ」
サテラは、何も言えなかった。
魔王の血を引いたくらいで、何を。自分の父の方が遥かに強いのに、どうして。昔は彼女もそんな時期があったからである。
確かに、フラネスは強い。
確かに、フラネスの言葉をサテラは否定することができなかった。
「それは、無駄ですわ」
でも、フラネスにも魔王の座は務まらない――――――。
サテラは剣を構えなおした。
絶対に教えてやらねば。
魔王様の素晴らしさを、この愚かな反発者に、叩き込まねばならない。
「許しませんのよッ!」
だから、魔王のために、サテラは幾度も幾度も剣を振る――――――。
ある部屋で薄い青の髪を肩まで伸ばした少女の目の前には、鬼族の住む場所の地図があった。昔、族長がくれたものだ。
少女―――イリス。
魔王軍の主に司令官を務める、幼い顔をした少女である。十六歳である反面、スイッチを切り替えると残酷冷酷の女神と称されるまでに変わる。
くしゃり、とイリスは地図を握り潰してごみ箱に捨てた。
「ふん、まるで意味がないな。今と昔がどうなっているか、分かりようもない。……さて、フラネスは放っておくか」
「待ってよ姉さん。本当に私が行かなきゃダメなのかよぉ」
「エリス、君は魔王より強いのだから、行っても死にはせんだろう?」
「むう。でもけがはするじゃないか。痛いじゃないか」
「……文句は言わないで、早く行きな。魔王に叱られたいのか?」
イリスは現在、その妹のエリスにフラネスを任せている。エリスは将軍―――大将軍だ。エリスを指揮するのがイリス。
イリスもエリスも、実力では申し分ない。
この二人が合わさって攻めてくれば、魔王城は瞬く間に消え去る。
エリスは魔王に叱られることを恐れ、転移で蒼い顔をしながら去っていった。全くエリスはこの状況で穏やかなものだ、とイリスは少し笑う。
「リタ」
「はい」
「五千人の魔王軍を組み合わせろ、全員攻撃型だ。鬼族が来る前に終わらせろよ」
「はっ」
リタという名のイリスの側近に命じ、リタは走り去る。リタの実力も申し分は無いのだが、剣の扱いに癖があって色んな敵に通じるわけではないのだ。
今の所将軍を命じられてはいるが、いつ下がるかはわからない身分だ。
どちらかというとイリスのおかげで存在しているとも言えるので、彼は忠実だ。
「私の戦術がどこまで通用するか、試してみようじゃないか」
イリスの分析によると、フラネス達鬼族はただ強いだけだ。しかし、戦略だけで勝てる相手というわけでもない。
勝率は五分五分だが、後ろに控えているのは最強なる幼女、フィリア。
「魔王が終わったとなると、フィリアも怒るかもしれないな」
ふふ、とイリスは微笑む。
エリスの代わりにとどめを刺すのがフィリアの役目だ。何故ならエリスはフラネスに勝てるほどの実力ではないからだ。
魔王より強いにしても、とどめまで刺すことはできない。
エリスの役目は極限までフラネスを弱らせることだ。
「すべてが五分五分―――さて、破滅は、どっちだ」
久しぶりに楽しくなりそうだ―――
イリスは長年味わってこなかった震え上がる熱気を、感じた。
《戦闘狂》
《冷酷女神》
昔は色々な肩書を貰っているのをイリスは鮮明に覚えている。
「まあ―――どちらにせよどちらも破滅までは向かわんとは思うがな」
イリスの小さなつぶやきは、戦争の音にかき消されて空気に包まれ消えた。
引力も大きく、アリアとリゼは後ろへ後退することを命じられる。
「本気を出しちゃったみたいだね……そうなったら終わりだと言ってるのに」
フラネスが両手を広げると、全ての《ゲート》が威力を失って消えてなくなる。怒りに染まっていたライテリアも、驚きで声も出ない。
魔王の技を簡単に退かせるのは、簡単なことではないからだ。
「放っておくとそろそろ必殺技を出してきそうだから―――《破壊》」
「がはっ―――」
「やっぱりね。ライテリア、君はその力をちゃんと扱えていないんだよ……その分際で魔王の剣が何ちゃら言ってる場合じゃないんだからね」
「あ、アリア! 魔王様をお願い、撤退よ!!」
破壊のスキルとは、指定したものを全て破壊するスキル―――オーバーキルなチートだ。ライテリアは全身を切り刻まれ、血肉を《破壊》される。
リゼは必死に剣を振るいながらも倒れるライテリアを支えるアリアに決死の覚悟で叫ぶ。のどが擦れるまで叫んだ声は裏返ってしまう。
アリアも必死に魔術で盾を作りながらライテリアを守って撤退する。
魔族は皆使える転移魔術を使ってリゼを心配そうに、涙で潤った瞳で見ながらアリアは転移した―――。
―――どうしてこんなに弱いのだろうか。
アリアは唇を噛み―――無力な自分を呪った。
「ふうん、忠実な部下なんだ。じゃあそのまま死んでくれる《破か―――」
「させませんわよ、《砂塵》!」
「わっ」
サテラとライトだ。
二人とて勝てるとは思っていないが、転移で逃げるつもりだ。
サテラが砂の壁を作り、負傷したリゼをライトに受け渡す。
「どうするんっすか! 逃げられる確率も低いっすよ!?」
「―――その場合は、命は捨てればいいんですのよ。私たちは、所詮魔王様のために産まれた人形なんですのよ、覚悟なさい」
「ごめんなさい……サテラさん……魔王様を……守れずに……」
「ううん、いいんですのよ。魔王様は無事、それが分かればいいのですわ」
サテラの作った砂塵の壁が、崩れた。フラネスの操る真っ白な剣が、きらりと砂の石の光に反射して光る。
少しでもそれを見つめていた時間が、長かったようだ。
気付けばフラネスは目の前に居て、振り下ろされる剣に何とか耐える。
「へえ、君、やるじゃん。少なくともあの愚かな魔王よりはね―――」
「愚かだと言われる義理はありませんわ! あの方は貴方よりは立派な人ですのよ! 私たちが一番よく分かっていますわ!」
「へぇ、知った気どりか。あいつに魔王の座を持つ権利がないんだよ。力にしても性格にしても、魔王となるにはほど足りない」
「貴方なんかに―――!」
「最近は終わっているな。魔王の血を引いたからって魔王になれるだなんて、バカげた仕組みだ。僕が魔王になってもいいくらいだよ」
サテラは、何も言えなかった。
魔王の血を引いたくらいで、何を。自分の父の方が遥かに強いのに、どうして。昔は彼女もそんな時期があったからである。
確かに、フラネスは強い。
確かに、フラネスの言葉をサテラは否定することができなかった。
「それは、無駄ですわ」
でも、フラネスにも魔王の座は務まらない――――――。
サテラは剣を構えなおした。
絶対に教えてやらねば。
魔王様の素晴らしさを、この愚かな反発者に、叩き込まねばならない。
「許しませんのよッ!」
だから、魔王のために、サテラは幾度も幾度も剣を振る――――――。
ある部屋で薄い青の髪を肩まで伸ばした少女の目の前には、鬼族の住む場所の地図があった。昔、族長がくれたものだ。
少女―――イリス。
魔王軍の主に司令官を務める、幼い顔をした少女である。十六歳である反面、スイッチを切り替えると残酷冷酷の女神と称されるまでに変わる。
くしゃり、とイリスは地図を握り潰してごみ箱に捨てた。
「ふん、まるで意味がないな。今と昔がどうなっているか、分かりようもない。……さて、フラネスは放っておくか」
「待ってよ姉さん。本当に私が行かなきゃダメなのかよぉ」
「エリス、君は魔王より強いのだから、行っても死にはせんだろう?」
「むう。でもけがはするじゃないか。痛いじゃないか」
「……文句は言わないで、早く行きな。魔王に叱られたいのか?」
イリスは現在、その妹のエリスにフラネスを任せている。エリスは将軍―――大将軍だ。エリスを指揮するのがイリス。
イリスもエリスも、実力では申し分ない。
この二人が合わさって攻めてくれば、魔王城は瞬く間に消え去る。
エリスは魔王に叱られることを恐れ、転移で蒼い顔をしながら去っていった。全くエリスはこの状況で穏やかなものだ、とイリスは少し笑う。
「リタ」
「はい」
「五千人の魔王軍を組み合わせろ、全員攻撃型だ。鬼族が来る前に終わらせろよ」
「はっ」
リタという名のイリスの側近に命じ、リタは走り去る。リタの実力も申し分は無いのだが、剣の扱いに癖があって色んな敵に通じるわけではないのだ。
今の所将軍を命じられてはいるが、いつ下がるかはわからない身分だ。
どちらかというとイリスのおかげで存在しているとも言えるので、彼は忠実だ。
「私の戦術がどこまで通用するか、試してみようじゃないか」
イリスの分析によると、フラネス達鬼族はただ強いだけだ。しかし、戦略だけで勝てる相手というわけでもない。
勝率は五分五分だが、後ろに控えているのは最強なる幼女、フィリア。
「魔王が終わったとなると、フィリアも怒るかもしれないな」
ふふ、とイリスは微笑む。
エリスの代わりにとどめを刺すのがフィリアの役目だ。何故ならエリスはフラネスに勝てるほどの実力ではないからだ。
魔王より強いにしても、とどめまで刺すことはできない。
エリスの役目は極限までフラネスを弱らせることだ。
「すべてが五分五分―――さて、破滅は、どっちだ」
久しぶりに楽しくなりそうだ―――
イリスは長年味わってこなかった震え上がる熱気を、感じた。
《戦闘狂》
《冷酷女神》
昔は色々な肩書を貰っているのをイリスは鮮明に覚えている。
「まあ―――どちらにせよどちらも破滅までは向かわんとは思うがな」
イリスの小さなつぶやきは、戦争の音にかき消されて空気に包まれ消えた。
「私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
3,548
-
5,228
-
-
2,860
-
4,949
-
-
3万
-
4.9万
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
3,653
-
9,436
-
-
344
-
843
-
-
2,629
-
7,284
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
218
-
165
-
-
86
-
288
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
23
-
3
-
-
14
-
8
-
-
9,173
-
2.3万
-
-
408
-
439
-
-
614
-
221
-
-
164
-
253
-
-
34
-
83
-
-
51
-
163
-
-
2,799
-
1万
-
-
88
-
150
-
-
42
-
14
-
-
614
-
1,144
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
220
-
516
-
-
5,039
-
1万
-
-
1,301
-
8,782
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
2,430
-
9,370
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント