私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
七話『だいけんじゃさまのおうちへ!(2)』
元々、大賢者テーラ、ボクと《運命体》は二重人格ではない。ボクが進化を重ねて《運命体》と化しただけなのだ。
なので、生きて来た年は魔王初代が出来るそのずっと前だ。
別れ、憎しみ、恨み、楽しみ、失敗も成功も何度も何度も――――――。
ライテリアは凄いと思った。
従来の魔王の風習を一気に吹き飛ばした。まあ、そこまではいいものの人間たちからは「陰謀だ」「殺せ」とかいい顔されていないけれど。
「仕方ないよ。これが人間だからね。作った時から期待していなかっただろうし」
人間を作ったのはボクじゃない。
原初神アイテールがなんちゃらだった気がするが、ボクはそれに興味がない。
今ボクが一番興味を持っているのは、フィリアだ。
ボクですらも正体がわからない、どちらかというと存在してはいけないバグのような。運命体ながらの無力さも思い知った。
でもフィリアがどれだけ成長してもボクに追いつかないのは分かっている。
何か特別なことがなければ、の話だが。
「わっかんないなあ……この世界に下りてきても未だ分からない」
魔力を充満させて、ボクがいる部屋には誰にも上ってこれない。ボクの弟子たちでさえも、無理だ。その間ボクは運命線の上に眠っている。
その間はボクの反対運命体テーリスが活動を進めていく。
月と太陽。
テーリスとボクは一言でいえばそんな関係だ。テーリスは……性格が悪い。
ボクはミステリアスなことばかり言ってるといつも指摘される。
まあ、二人して変な性格とばっさり切り捨てることもできるな―――。
「でもいつ出てけばいいんだろう」
テーリスを置いて、ボクは最近表に出ることが多くなっている。
フィリアに会うためなのだが、長い間表に出ていないのでどうすればいいかわからない。
テーリスは所詮裏なので、ボクが出ている間会話することはできない。
《「よいしょ……うーん、毎回大変だなあ」》
「嘘。フィリア?」
モニターに映ったのは、ボクの魔力に怯みすらしないフィリアの顔だった。
まあ、こんな弱い魔力では怯まないだろうな。
どんな神でも触れれば殺してしまえるような魔力濃密度だが、ボクにとっては一生垂れ流したままでも生きていけるくらいの小さな量だ。
「それにしてもストレートに言うなあ」
パチンと指を鳴らすと、フィリアの登る崖に転移した。
ボクはフィリアのストレートな所が好きだ。
まあライテリアも十分ストレートだが。
いろんな言葉を言いくるめてボクの機嫌をとりたいと見るからに分かるような者達は、大嫌いだ。だからフィリアとライテリアと仲が良い。
「ごめんなさいねー、ボクの家がすごーく入りにくくて」
「あ、ううん! そういうわけじゃなくて」
「……まあ、フィリアちゃんが入ってくるときだけ魔力を少なくしとくよ。ボクなんか存在してるだけで歩く破壊兵器なんだもの」
「そんなことないよ。ふぃりあ、テーラ様のことすごく好きだよ!」
「嬉しいなあ、ボクはこんなこと言われるの初めてだよ」
それは本当だ。本当の本当だ。
すごく好き―――言葉そのものは何度も言われたけれど、純粋に言われたことなんて一度もない。いや、一度は会ったかもしれないがあれは―――。
血しぶきが、飛んだ。
銀色の髪が、絶望を宿した瞳と共に崩れ落ちる。
前には、絶対に殺させないと誓った、 の姿が。
全体的に大量出血しているこの体では、誓いは果たせない。
手を、向ける。
覚醒の光は、高く高く―――――――。しかし、何かを代償に―――。
(ううん、思い出したらだめ。これが一回目なの。これが一回目なんだよ)
《何やってんだかねー。そんなこと思うなら僕と代わってくれればいいのにさ》
《テーリスはただこっちに来たいだけでしょ》
つい最近、また覚醒した。そして一瞬だけ裏に戻り、《テーラ》の体を魂を抜いた状態にすることが出来るようになった。
それも一瞬だけなので、テーリスの声はすぐに聞こえなくなる。
回想は、夢に、頭に出てくるたびにやはりボクの心を傷つけていく。
だめだ。
何回も別れと死を経験したボクではあるが、あの事件だけは、心が晴れない。
―――今は、何処にいるのだろう。
『必ず帰ってくるから。それまで待ってろって』
『狙っているようにしか―――思えないよ……』
『はは。そんなこと言って、知らない間に涙が流れてるじゃないか』
『うれし涙だよ、さっさと行ってこい、伝説になる予定の勇者さんよ!』
笑顔で見送った―――そのはずなのに、帰ってくるって言ったはずなのに。
伝説にはなった。彼の名前は誰だって知っている伝説だ。ボクと知名度を競うくらいには有名な名となっている。
彼は不死身。
よっぽどなことがないかぎり、消えることは無いのだが―――。
「バグの、存在」
「どうしたの? テーラ様?」
「ううん。何でもない。ちょっと昔のことを思い出しちゃったみたいでさ」
ぎゅ、と知らない間にフィリアの手を強くつかんでいたようだ。
加えてフィリアに意味が解らないつぶやきは、少し疑われてしまったようだ。
伝説に勝るバグが生まれた原因で、 が消えてしまった可能性は―――?
先程から の名前を思い出すたび打ち消されてしまう原因は―――?
運命体ならわかるはずだ。必死に記憶を呼び起こす。
名前を打ち消される―――これは、その名が存在しない物に変わっているから。
(しかしそれは存在していないだけだ、居ればいい)
存在が消えていても、誰にも見えないだけで『いる』可能性はある。
ボクはそう考えるしかなかった。あまり残酷な結果は考えたくなかった。
なので、生きて来た年は魔王初代が出来るそのずっと前だ。
別れ、憎しみ、恨み、楽しみ、失敗も成功も何度も何度も――――――。
ライテリアは凄いと思った。
従来の魔王の風習を一気に吹き飛ばした。まあ、そこまではいいものの人間たちからは「陰謀だ」「殺せ」とかいい顔されていないけれど。
「仕方ないよ。これが人間だからね。作った時から期待していなかっただろうし」
人間を作ったのはボクじゃない。
原初神アイテールがなんちゃらだった気がするが、ボクはそれに興味がない。
今ボクが一番興味を持っているのは、フィリアだ。
ボクですらも正体がわからない、どちらかというと存在してはいけないバグのような。運命体ながらの無力さも思い知った。
でもフィリアがどれだけ成長してもボクに追いつかないのは分かっている。
何か特別なことがなければ、の話だが。
「わっかんないなあ……この世界に下りてきても未だ分からない」
魔力を充満させて、ボクがいる部屋には誰にも上ってこれない。ボクの弟子たちでさえも、無理だ。その間ボクは運命線の上に眠っている。
その間はボクの反対運命体テーリスが活動を進めていく。
月と太陽。
テーリスとボクは一言でいえばそんな関係だ。テーリスは……性格が悪い。
ボクはミステリアスなことばかり言ってるといつも指摘される。
まあ、二人して変な性格とばっさり切り捨てることもできるな―――。
「でもいつ出てけばいいんだろう」
テーリスを置いて、ボクは最近表に出ることが多くなっている。
フィリアに会うためなのだが、長い間表に出ていないのでどうすればいいかわからない。
テーリスは所詮裏なので、ボクが出ている間会話することはできない。
《「よいしょ……うーん、毎回大変だなあ」》
「嘘。フィリア?」
モニターに映ったのは、ボクの魔力に怯みすらしないフィリアの顔だった。
まあ、こんな弱い魔力では怯まないだろうな。
どんな神でも触れれば殺してしまえるような魔力濃密度だが、ボクにとっては一生垂れ流したままでも生きていけるくらいの小さな量だ。
「それにしてもストレートに言うなあ」
パチンと指を鳴らすと、フィリアの登る崖に転移した。
ボクはフィリアのストレートな所が好きだ。
まあライテリアも十分ストレートだが。
いろんな言葉を言いくるめてボクの機嫌をとりたいと見るからに分かるような者達は、大嫌いだ。だからフィリアとライテリアと仲が良い。
「ごめんなさいねー、ボクの家がすごーく入りにくくて」
「あ、ううん! そういうわけじゃなくて」
「……まあ、フィリアちゃんが入ってくるときだけ魔力を少なくしとくよ。ボクなんか存在してるだけで歩く破壊兵器なんだもの」
「そんなことないよ。ふぃりあ、テーラ様のことすごく好きだよ!」
「嬉しいなあ、ボクはこんなこと言われるの初めてだよ」
それは本当だ。本当の本当だ。
すごく好き―――言葉そのものは何度も言われたけれど、純粋に言われたことなんて一度もない。いや、一度は会ったかもしれないがあれは―――。
血しぶきが、飛んだ。
銀色の髪が、絶望を宿した瞳と共に崩れ落ちる。
前には、絶対に殺させないと誓った、 の姿が。
全体的に大量出血しているこの体では、誓いは果たせない。
手を、向ける。
覚醒の光は、高く高く―――――――。しかし、何かを代償に―――。
(ううん、思い出したらだめ。これが一回目なの。これが一回目なんだよ)
《何やってんだかねー。そんなこと思うなら僕と代わってくれればいいのにさ》
《テーリスはただこっちに来たいだけでしょ》
つい最近、また覚醒した。そして一瞬だけ裏に戻り、《テーラ》の体を魂を抜いた状態にすることが出来るようになった。
それも一瞬だけなので、テーリスの声はすぐに聞こえなくなる。
回想は、夢に、頭に出てくるたびにやはりボクの心を傷つけていく。
だめだ。
何回も別れと死を経験したボクではあるが、あの事件だけは、心が晴れない。
―――今は、何処にいるのだろう。
『必ず帰ってくるから。それまで待ってろって』
『狙っているようにしか―――思えないよ……』
『はは。そんなこと言って、知らない間に涙が流れてるじゃないか』
『うれし涙だよ、さっさと行ってこい、伝説になる予定の勇者さんよ!』
笑顔で見送った―――そのはずなのに、帰ってくるって言ったはずなのに。
伝説にはなった。彼の名前は誰だって知っている伝説だ。ボクと知名度を競うくらいには有名な名となっている。
彼は不死身。
よっぽどなことがないかぎり、消えることは無いのだが―――。
「バグの、存在」
「どうしたの? テーラ様?」
「ううん。何でもない。ちょっと昔のことを思い出しちゃったみたいでさ」
ぎゅ、と知らない間にフィリアの手を強くつかんでいたようだ。
加えてフィリアに意味が解らないつぶやきは、少し疑われてしまったようだ。
伝説に勝るバグが生まれた原因で、 が消えてしまった可能性は―――?
先程から の名前を思い出すたび打ち消されてしまう原因は―――?
運命体ならわかるはずだ。必死に記憶を呼び起こす。
名前を打ち消される―――これは、その名が存在しない物に変わっているから。
(しかしそれは存在していないだけだ、居ればいい)
存在が消えていても、誰にも見えないだけで『いる』可能性はある。
ボクはそう考えるしかなかった。あまり残酷な結果は考えたくなかった。
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