ミミック転生 ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~
ギルドからの門番
「メシは食べれなかったな」
この町は死んでいる。俺は悪態を続けた。
不思議な町だ。誰もが危険性を認識している。それなのに誰も脱出しないのだ。
町外れに、核ミサイルがシンボルとして掲げられても、誰も距離を取ろうとしないようなもの。
ある種の諦めか? それとも何かが引力として、町民を引き付けているのか?
だとしたら、それは――――
「じゃ、結局、どうするの?」
カスミの疑問に俺は「……うむ」と考える。
ニンバリたちが住処としている館を見る。
周囲にはギルドから雇われている冒険者たちが監視している。
館を取り囲むように……10人ほどか?
念のため、この町のギルドにも行ったが、予想通りに非協力的。
個々の情報はもちろん、監視たちの人数すら教えてくれない。
仕方なく、俺とカスミは監視の冒険者を離れた位置で監視している。二重監視ってやつだ。
彼らは、決して館に近寄らず、かと言って離れず。一定の距離を保ちつつ――――
いや、止めよう。要するに何もしていないのだ。 ただ、待機しているだけ。
ギルドと魔族が裏で繋がっているのだ。
冒険者には何もさせず、それでいて何かをさせている事で体裁を整えているだけだ。
それを確認した俺は――――
「もういいんじゃないか?」
「え?」
「可能な限り、館を取り囲む冒険者の無効化。その後、館に突入だ」
「騎士団本体の到着は待たなくてもいいの?」
「この町じゃ宿も食事もできない。これじゃ長期戦は無理だな。俺たちは兵糧攻めを受けているみたいなものだ。……だとしたら俺たちができるのは速攻。事前情報だと館内の敵対戦力は1人のみ。その1人は厄介な相手だが、周囲を囲む冒険者たちの方がより厄介だ」
皮肉だけどな。と俺は付け加えた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「まるで野戦病院だ。懐かしい戦場の匂いだ」
白衣の男が言った。
背後には複数の男たちが一箇所に集められている。
一見すると無傷のように見えるが、口からはうめき声が漏れている。
無傷に見える理由。それは俺とカスミが、戦闘力をそぎ落とすだけのダメージを与えたからだ。
残ったのは白衣の男のみ。彼がこの冒険者の司令塔だ。
奇襲時に他の冒険者から得た情報だと、彼は回復要員らしい。
戦闘要員向けの職業ではないが、冒険者たちの司令塔に選ばれるほどには、戦闘に長けているのだそうだ。
そんな彼に向かって俺は――――
「しかし、皮肉なもんだな」
と姿を見せた。
俺の姿を見ると同時に「なっ! ミミックだと」と動揺を見せる。
だが、すぐに――――「いや、転生者か」と俺の正体を暴いた。
「なるほど、司令塔に選ばれるわけだ」
俺は賞賛のつもりだったが、彼は侮辱と受け取ったららしく顔を歪めた。
「あなたの戦闘能力は理解しました。だが、ここから先は通しません」
彼は白衣の身に似合わない長剣を俺に向ける。
その姿は背後の部下を守るように見え、同時に館の扉を守る門番のように見えた。
だから――――
「なぜだ?」
俺は純粋な疑問を口にした。しかし、彼には意味が通じなかったようだ。
「なにが!」と怒気を孕んだ返事だった。
「君が部下を守る理由はわかる。しかし、この扉を守る必要性……むしろ、扉を守る事は世界にとっての害悪だと、わかっているのだろ?」
「だが、けど、それでも――――」
彼は思いつく限り、言葉を繋げようとした。
しかし、彼にはわかっていたのだろう。
そこに理由はない……と。
俺は彼の横を通り抜け、扉の門を開いた。
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