ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

追跡者の変身

 「……ねぇ」とカスミ。
 「……なんだ?」と俺。

 「これって『ジョブ』とか『スキル』とか、そういう問題なのかな?」

 そう言ってカスミは追跡者を指差す。
 ズタズタに切り裂かれたはずの体は回復している。

 「いや、回復してるどころか、体がデカくなってないか?」

 「うんうん」とカスミは上下に素早く首を振って肯定してくれた。
 どうやら、俺の気のせいではないみたいだ————いや、気のせいどころか……

 「————ッ! 『ジョブ』や『スキル』じゃない。これは変身している!」

 追跡者の体がビルドアップされていく。皮膚の色も肌色から緑色に変色していく。
 その姿はまるでオークだ。
 俺のユニークスキル『比類なき同族殺し』が成長による変身とは次元が違っている。
 人間がオークに―———モンスターに変貌を遂げた。

 「よくも…よくもあの方から……ニンバリさまからいただいた肉体を!」

 オークに変貌した追跡者だった男の口から魔族の名前が漏れた。

 「ギルドじゃなくて、奴らから直接送られた刺客だったのか……」

 魔族の魂を人間に定着させる魔法を有した奴らだ。
 人間の魂をモンスターに定着させる技術があってもおかしくはない……かもしれない。
 オークの巨大化が止まったのは、その体が周囲の建物の3階辺りまで達した頃だった。
 ……いや、いくらなんでも……オークのサイズじゃないっ!
 流石にその巨大さは人々の目に止まった。 

 「オークだ! なぜ、こんな町中に?」
 「冒険者を! 彼らを呼べ!」
 「あれがオークだと? 馬鹿なデカすぎるぞ」
 「いや、周囲の避難勧告とギルドへの伝達を!」

 パニックだ。
 オークは、そんな騒動を「うるさい」と言わんばかりに周囲の建物を破壊し始めた。
 もはや、理性を失い。目的である俺とカスミすら脳裏から抜け落ちてしまったかのようだった。
 しかし―――

 「いつまでも自由にやらせはしない!」

 俺の不可視の触手がオークの脚―――膝を中心に切り裂いた。
 下半身のダメージからオークはバランスを大きく崩して倒れた。

 「これで少しは時間稼ぎが―――むっ!」

 俺は驚いた。
 さっき切りつけた部分から白い煙が立ち昇っていき……

 「ミミックくんの攻撃から、もう回復している!」

 俺よりも早くカスミが驚きの声を上げた。

 「いや、もう一度だ!」

 今度は回復の暇を与えない。その脚自体を切断するつもりで触手を走らせる。
 しかし―———

 「ダメだ。ヤツの回復の方が早い!」

 オークは俺の攻撃を膝に受け続けながらも立ち上がった。
 ギロリと俺を睨む。痛みのためか、消滅していた理性の光が目に戻っていた。

 「ミミック……聖騎士団……潰す!」

 風切音。
 反射的に距離を取った。
 どこかで破裂音が聞こえる。

 (最初にしかけてきた不可視の攻撃か。しかし、どういう攻撃だ? オークにこんな攻撃法はないはず……)

 その思考も一瞬のみ。
 オークは不可視の攻撃を連続で放ってくる。
 俺とカスミはその攻撃を回避する。
 単調化した予備動作と視線の動きを読んで避けたのだ。
 しかし―――時間切れだ。

 「やばい、カスミ」
 「どうしたのミミックくん」
 「スキルの効果時間が切れそうだ」
 「ええぇ!?」

 俺のユニークスキル『比類なき同族殺し』は、特定の条件下で自身の戦闘力を強制的に成長させて変身するスキル(他にも効果はいろいろある)だ。
 そして、このスキルには使用時間に制限がある。体感で10分くらいか?
 効果が切れると凄まじい疲労感に襲われ、酷い時には行動不能になってしまう。

 「乗ってミミックくん」
 「すまない!」

 俺は変身が解ける前にカスミの背中に飛び乗った。
 「にげるよ!」とオークに背を向けてカスミは駆け出した。
 その背後にはオークの声が―――

 「逃がさぬ……逃がさぬぞ聖騎士団ども」

 怨嗟の声が、圧を持って聞こえてきた。
  

「ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く