ミミック転生 ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~
探索者 マイクロフト
俺は自室に戻った。
部屋には先に帰っていたマリアが待っていた。
「マイクロフトさん、どうだった?」とマリア。
「回復要因さんが言うには、命には別条はないみたいだ」
「そうなんだ。よかった」
そう安堵の笑みを浮かべるマリアに続きを話すのに躊躇したけど―――
マリアも冒険者だ。俺は続きを話した。
「ただ回復魔法でも傷が残るそうで、冒険者の復帰は難しいらしい」
はっと息を呑むマリア。俺は一瞬の後悔。
マリアの瞳は薄っすらと涙で滲んでいたからだ。
「マリア、マイクは大丈夫だ。一度、戦った俺にはわかる。アイツは爽やかで優雅に見えるが……その根源には、芯の強さがあり、決して屈せない」
だから、奴は必ず復帰する。俺はマリアの瞳を見つめて言った。
マリアは安心させるための言葉であるが、同時に俺の本心でもある。
うん、わかった」とマリアはこう続けた。
「私よりもマイクロフトさんと仲が良かったミッくんが気丈に務めているのに私がクヨクヨしてたらダメだよね。頑張らなきゃ!」
「ん?……そうだな」
何か、マリアの言い回しに違和感を覚えたが、今は掘り下げて聞き返す場面でもないか。
「それじゃ、もう寝ると……うわぁっ!?」
俺はベットに入り込もうとした。しかし、先客がいた事に気づかず、驚きの声を上げた。
もぞもぞと動く小さい影。まさか、敵襲か?
「あっ、ごめん。さっきまでカスミちゃんがミッくんを待っていたんだけど、うたた寝しちゃったみたいだからベットに寝かせていたんだ」
マリアの言う通り、俺のベットにはカスミが眠っていた。
そして、俺が出した驚きの声が彼女を起こしてしまったのか……
「あっミミックくんだ!」と勢いよく抱き着かれた。
まるでぬいぐるみ扱いだ。そのまま抱きしめられてカスミはゆっくりと寝息を立て始めた。
「うむ……動けなくなってしまった。さて、どうしたものか?」
「動けないないなら、そのまま眠るしかないね。お休み!」
「ちょ!おい!」
マリアはそのまま、横になって俺の体に頭を預けた。
カスミは俺を抱き枕扱いして寝ているが、マリアは俺を本格的に枕扱いにした。
別にマリアが俺を枕扱いしているのは今に始まったことでもないが……
「……よく眠れるな」
俺の体は木箱だ。
柔らかさなんてなく、枕には不向きなはずだ。
しかし、マリアは寝息を立てながら幸せそうな笑みを浮かべている。
きっと幸せな夢でもみているのだろう。
俺も瞳を閉じる。
眠るためではない。傷だらけになりながらも告げたマイクの言葉を脳内で反芻させるためだ。
俺はマイクの―――マイクロフトの言葉をイメージする。
より鮮明に立体的に―――そして、マイクロフトの経験を疑似的に再構築させた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ここがミッさんとマリアさんが魔族と戦った場所か」
僕、マイクロフトは民家に到着した。ただの民家ではない。半壊した民家だ。
なんでも、ここで魔族が現れたそうだ。それも、普通の少年に魔族の魂を入れるなんて前代未聞の大事件だ。
僕はさっそく、民家の中に入り調査を開始する。
ミッさんたちの事を疑っているわけではない。けれども、巧妙な人間がミッさんたちを欺いた可能性だってある。
「確か、少年の名前はコウ。ニンバリと名乗る男が家主に気づかれず夜な夜な魔法陣を制作していたとか……」
僕はコウの部屋に入った。そこで戦闘が行われたのは一目瞭然だ。
「凄い。ミッさんがどうやって魔族と戦ったのか手を取るように伝わってくる」
興味深く、戦いの傷跡を堪能するが、すぐ我に返り、任務を遂行する。
僕の目的。どの優先は―――
それはあった。
隠匿のために魔法陣は、発覚と共に燃え上がったと聞いていたが―――
「証拠隠滅目的だったのでしょうが、魔族の紋章なんて特殊な物を残した段階で本末転倒です」
僕はしゃがみこんだ。床の焦げた跡が魔族の紋章になっている。
背中に手を回す。マントで見えない部分に僕は小物入れを隠し持っている。
僕にとっては必要不可欠な小道具だ。
そこからナイフを取り出し、床から一部を削り取る。
それをピンセットでつまみ、試験管に入れる。そして魔力を分解する液体を注いで封をした。
「分解速度から……証拠隠滅の魔法が作動したのは昨日……ミッさんの証言と一致。それから……」
魔力の分解反応から、魔法陣の種類。発動日時と制作日時。使用された道具と制作者の癖が見えてきた。
「道具は流通されているものではなく、天然産。自分で植物まで栽培したのかなぁ?制作者は古代魔法に偏屈なほど強いこだわりが残っている。これは本物の魔族か、魔族に陶酔しきった教信者ですね」
僕は外に出た。
ミッさんとコウの最終決着地点。
そこでミッさんが吐き出した武器の山々。
多くは彼の胃袋に再保管されたらしいが、それでも一部の武器は残っている。
どうやら、食べきれなかったらしい。
僕はクスリと笑う。別にミッさんが嫌々食べてる光景を思い描いたわけじゃない。
ただ、僕は―――コウともマリアとも違う……ましてやミッさんのモノとも絶対に違う足跡を見つけたからだ。
大人の足跡。もしかしたら、騒動が終わった後にやってきた周囲に住む者の足跡かもしれない。
だが、足跡からわかる。その立ち位置は、確実にミッさんやコウと対峙するような場所。
だから歩幅からわかる。 その男が落ち着いて、予定調和の如く現れたということが……
「まずは、一手。ニンバリさん、魔術の方針と違って貴方は、衣服は無頓着ですね。靴の種類から、どこで購入したのか、わかりましたよ」
僕はニンバリの行き先を推測した。
部屋には先に帰っていたマリアが待っていた。
「マイクロフトさん、どうだった?」とマリア。
「回復要因さんが言うには、命には別条はないみたいだ」
「そうなんだ。よかった」
そう安堵の笑みを浮かべるマリアに続きを話すのに躊躇したけど―――
マリアも冒険者だ。俺は続きを話した。
「ただ回復魔法でも傷が残るそうで、冒険者の復帰は難しいらしい」
はっと息を呑むマリア。俺は一瞬の後悔。
マリアの瞳は薄っすらと涙で滲んでいたからだ。
「マリア、マイクは大丈夫だ。一度、戦った俺にはわかる。アイツは爽やかで優雅に見えるが……その根源には、芯の強さがあり、決して屈せない」
だから、奴は必ず復帰する。俺はマリアの瞳を見つめて言った。
マリアは安心させるための言葉であるが、同時に俺の本心でもある。
うん、わかった」とマリアはこう続けた。
「私よりもマイクロフトさんと仲が良かったミッくんが気丈に務めているのに私がクヨクヨしてたらダメだよね。頑張らなきゃ!」
「ん?……そうだな」
何か、マリアの言い回しに違和感を覚えたが、今は掘り下げて聞き返す場面でもないか。
「それじゃ、もう寝ると……うわぁっ!?」
俺はベットに入り込もうとした。しかし、先客がいた事に気づかず、驚きの声を上げた。
もぞもぞと動く小さい影。まさか、敵襲か?
「あっ、ごめん。さっきまでカスミちゃんがミッくんを待っていたんだけど、うたた寝しちゃったみたいだからベットに寝かせていたんだ」
マリアの言う通り、俺のベットにはカスミが眠っていた。
そして、俺が出した驚きの声が彼女を起こしてしまったのか……
「あっミミックくんだ!」と勢いよく抱き着かれた。
まるでぬいぐるみ扱いだ。そのまま抱きしめられてカスミはゆっくりと寝息を立て始めた。
「うむ……動けなくなってしまった。さて、どうしたものか?」
「動けないないなら、そのまま眠るしかないね。お休み!」
「ちょ!おい!」
マリアはそのまま、横になって俺の体に頭を預けた。
カスミは俺を抱き枕扱いして寝ているが、マリアは俺を本格的に枕扱いにした。
別にマリアが俺を枕扱いしているのは今に始まったことでもないが……
「……よく眠れるな」
俺の体は木箱だ。
柔らかさなんてなく、枕には不向きなはずだ。
しかし、マリアは寝息を立てながら幸せそうな笑みを浮かべている。
きっと幸せな夢でもみているのだろう。
俺も瞳を閉じる。
眠るためではない。傷だらけになりながらも告げたマイクの言葉を脳内で反芻させるためだ。
俺はマイクの―――マイクロフトの言葉をイメージする。
より鮮明に立体的に―――そして、マイクロフトの経験を疑似的に再構築させた。
・・・
・・・・・・
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「ここがミッさんとマリアさんが魔族と戦った場所か」
僕、マイクロフトは民家に到着した。ただの民家ではない。半壊した民家だ。
なんでも、ここで魔族が現れたそうだ。それも、普通の少年に魔族の魂を入れるなんて前代未聞の大事件だ。
僕はさっそく、民家の中に入り調査を開始する。
ミッさんたちの事を疑っているわけではない。けれども、巧妙な人間がミッさんたちを欺いた可能性だってある。
「確か、少年の名前はコウ。ニンバリと名乗る男が家主に気づかれず夜な夜な魔法陣を制作していたとか……」
僕はコウの部屋に入った。そこで戦闘が行われたのは一目瞭然だ。
「凄い。ミッさんがどうやって魔族と戦ったのか手を取るように伝わってくる」
興味深く、戦いの傷跡を堪能するが、すぐ我に返り、任務を遂行する。
僕の目的。どの優先は―――
それはあった。
隠匿のために魔法陣は、発覚と共に燃え上がったと聞いていたが―――
「証拠隠滅目的だったのでしょうが、魔族の紋章なんて特殊な物を残した段階で本末転倒です」
僕はしゃがみこんだ。床の焦げた跡が魔族の紋章になっている。
背中に手を回す。マントで見えない部分に僕は小物入れを隠し持っている。
僕にとっては必要不可欠な小道具だ。
そこからナイフを取り出し、床から一部を削り取る。
それをピンセットでつまみ、試験管に入れる。そして魔力を分解する液体を注いで封をした。
「分解速度から……証拠隠滅の魔法が作動したのは昨日……ミッさんの証言と一致。それから……」
魔力の分解反応から、魔法陣の種類。発動日時と制作日時。使用された道具と制作者の癖が見えてきた。
「道具は流通されているものではなく、天然産。自分で植物まで栽培したのかなぁ?制作者は古代魔法に偏屈なほど強いこだわりが残っている。これは本物の魔族か、魔族に陶酔しきった教信者ですね」
僕は外に出た。
ミッさんとコウの最終決着地点。
そこでミッさんが吐き出した武器の山々。
多くは彼の胃袋に再保管されたらしいが、それでも一部の武器は残っている。
どうやら、食べきれなかったらしい。
僕はクスリと笑う。別にミッさんが嫌々食べてる光景を思い描いたわけじゃない。
ただ、僕は―――コウともマリアとも違う……ましてやミッさんのモノとも絶対に違う足跡を見つけたからだ。
大人の足跡。もしかしたら、騒動が終わった後にやってきた周囲に住む者の足跡かもしれない。
だが、足跡からわかる。その立ち位置は、確実にミッさんやコウと対峙するような場所。
だから歩幅からわかる。 その男が落ち着いて、予定調和の如く現れたということが……
「まずは、一手。ニンバリさん、魔術の方針と違って貴方は、衣服は無頓着ですね。靴の種類から、どこで購入したのか、わかりましたよ」
僕はニンバリの行き先を推測した。
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