ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

復活の毒触手流拳法

 俺は若返ったパンタ師匠の姿を確認する。
 変身前は禿げ上がった頭部。
 白く長い髭。小柄な肉体を杖で体を支えている。
 しかし、今はどうだろうか?

 髪は流れるようにフサフサで長髪。若干、青色が混じっているのか?
 スラッとした長め四肢。細身に見えるのは持久力を有する競技選手のように鍛えられた肉体だからだろう。 よくよく、見れば薄っすらと傷のようなものが見える。どこに?体中に絶えなく傷があった。
 むしろ、ない部分を探すのは難しいだろう。
 しかし、この姿が本来の姿だとしても疑問が浮かんでくる。

 「どうして衣服まで変わってるの?」

 「あっ、気になるのはそこですか」とパンタ師匠は、はにかむような表情だった。
 パンタ師匠の服は仙人のように白い服だった。
 いや、白いのは変わっていないが、体全身を覆うような服。それに加えてマントまで……

 「変身直後に全裸はまずいですからねぇ。少し工夫をしました。それは置いといて―――」

 パンタ師匠の体が視界から消滅した。
 速い!気が付くとパンタ師匠が放った掌底が俺の目の前に―――

 「この奇襲を避けますか」

 パンタ師匠の言う通り、掌底は空振り。俺は背後に飛んでいた。

 (やはり、この体は反応が良すぎる)

 さっきの攻撃。変身前なら避けることのできなかった。
 それが十分な余裕をもって避けて距離をとる事が出来た。
 しかし、この体には弱点があって、それは―――

 「では、これはどうですか?」

 パンタ師匠の声に、俺はさっきまで思考を破棄。
 攻撃に備えて集中力を高める。
 そしてパンタ師匠は俺に向かい前進してくる。
 その動きは―――

 (速い!下がっても追いつかれる!)

 一瞬で間合いを詰まられた。だが、間合いを詰めてもなおパンタ師匠は速度を緩めない。

 (減速しないだと?体当たりか!)

 その俺の予想は外れた。パンタ師匠の肉体が地面から浮き上がる。
 パンタ師匠が放った技は超低空の真空飛び膝蹴りだ!
 後ろは追いつかれる。ならば、右か左。
 判断は一瞬のみ。俺は右に旋回してパンタ師匠の膝蹴りを避ける。
 しかし、衝撃と浮遊感。
 俺が避けた方向に合わせてパンタ師匠は足を伸ばし、空中で反転。

 「と、飛び膝蹴りの態勢から左回し蹴りに変化だと……」

 口から言葉を発せられたのが奇跡みたいだ。
 後方へ吹き飛ばされながら、蹴りのダメージで俺は全身がバラバラになるかのような衝撃を受ける。

 「がっ……はっ…」

 それでも俺が立ち上がる事ができたのはユニークスキル『比類なき同族殺し』によって変身強化された肉体があるからか。
 追撃は?こないな。反撃を警戒しているのか?

 「警戒なんてしてませんよ。これは貴方の実力を測る査定試合なのを忘れてませんか?」

 !?
 空から声が降ってきた―――否。降ってくるのは声だけではなかった。
 飛びあがったパンタ師匠の肉体もまた落下してくる。

 (踏みつぶす気か!だが、そうはさせん)

 俺は地面を滑るように前進してパンタ師匠の踏みつぶしを避ける。
 それと同時に森へ潜るように姿を消す。
 それはパンタ師匠が言った言葉を思い出したからだ。
 森という限定的な場所ステージなら聖騎士団最強はカスミ。

 (だったら、アンタは森の中ならカスミより弱いって事だよな?)

 『擬態』と『気配遮断』の2つのスキルを駆使して、森へ―――自然へ―――植物に溶け込んでいく。
 深く―――深く――― 意識の手綱さえ神羅万象へ委ねさせて――― 無機物の宝箱を演じてきた人生の俺だから、俺だからこそ―――この舞台ステージを掌握できるはず―――

 「ようやく、スキルの次の段階に到達したみたいですね」

 パンタ師匠は森の中心を無防備に歩く。まるで気軽な散歩のように見える。

 「ならば使えるはずです。あなたの失われた攻撃手段。貴方だけの武器オリジナルを」

 あぁ、気付いていたのか。そりゃ、そうだよな。
 この姿に変わって、俺は一度も攻撃をしていない。いや、攻撃ができなくなっているのだ。
 変身すると触手が使用不可能になる。体の感覚としては、確かにそこに触手は存在しているはずなのに―――まるで幻影のように触手は消滅していたのだ。
 だが、今ならわかる。理解できる。
 世界を掌握した今なら―――

 「極度に強化され鋭く研磨されたソレは、何人たりとも知覚する事すら叶わない」

 俺は全てを放った。
 不可視の領域までたどり着いた108の触手の全てを―――

 「おめでとう……成ったか」

 その不可視の触手を―――不可視のはずの触手をパンタ師匠は避ける。
 何時までも、どこまでも避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。
 まるで森の中、神の遣いが祈りの舞を捧げているかのように―――

 「……凄い」と俺は思わず呟いた。
 沈めていたはずの意識を、存在を、揺さぶり起こすほどにその光景は神秘的であり神々しかったからだ。
 そして、パンタ師匠の舞は、俺が力尽きるまで続いた。


 


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