ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

レギオンへの勧誘

 
「……俺の負けだ」

 俺は降伏の証として、触手を体内に収納。残した2本の触手だけ上げて、無抵抗を表した。
 一方、勝者になったマイクロフトは剣を納めると同時に「すいません」と深々と頭を下げた。 
 その姿に「え?何が?」と俺も動揺してしまった。

 「僕も熱くなり過ぎたみたいです。あの触手とか切っちゃったんですけど、痛くなかったですか?」
 「痛いのは痛いけど、1日くらいで再生するから気にするなよ。それにしても、あの抜刀術はなんだ?物理法則じゃ成し得ないほどの剣速だったが、魔法で肉体にブーストさせたのはわかるが……だめだ。俺のスキル『異世界の知識』でも処理能力がまだ追い付いていない」
 「方法自体は単純ですよ。光属性の閃光魔術を過剰使用して肉体そのものを魔力変換させる事で光速化する事ができるのです」
 「いや、そんなはずは……肉体を魔力化させる?擬似的に体を高濃度の魔力に……維持できるのか?見当すらつかない」
 「これ以上は貴方の世界でいう所の企業秘密ってやつですよ。僕としては、『異世界の知識』ってのに興味があるんですが?」
 「そうだな。『異世界の知識』の効果は~」

 俺たちは意気投合していた。しかし―――

 「 そ の ま え に ! ! 」

 マリアが大声でブチ切れてた!

 「2人とも正座です。ここまで近寄って正座して座りなさい」
 「え?」「え?」
 「いいから正座しなさい!」
 「「はい……」」
 「いいですか?互いに冒険者同士、諍いごとは日常茶飯事です。そこは否定しません。だから、私も止めませんでした。しかし、しかしですね。相手を殺しかねない武器や技、スキルに魔法まで使っておいて、なんで仲良くなっているのですか!」
 「いや、それは……」「なんでと言われましても……」

 それは、悪い事ではないのではないか?
 俺のそんな疑問を感知したのか、マリアの怒りは増していった。

 「だまらっしゃい!私が言いたいのはですね。相手を殺しかねない戦い方をした直後に、相手と仲良くなるって所は、どこか殺し合いを楽しんでいる。つまり、自分の命を軽視してるって事なんですよ!」

 「……」 「……」

 「戦いを通して、互いに分かり合えちゃった。それは否定しません。でもね……
 それは結果であって、自分や相手が死んじゃったらお終いなのです。
 だから、戦いは真剣であるべきであり、娯楽として戦うべきではありません」

 「……はい」 「……すいませんでした」


 そんな、こんなで――― 
 マリアのご説教から解放された。
 俺たちは当初の目的である依頼は果たしている。
 そこで、世間話に花を咲かせながら3人で地上に帰る事になった。

 「それでマイクは、なんで俺に戦いを挑む事にしたんだ?」

 俺はマイクに経緯を訪ねた。
 ちなみに俺はマイクロフトの事をマイクと呼び、マイクロフトは俺の事をミッさんと呼ぶほどの親友になっていた。

 「そうですね。僕も特殊職業エクストラジョブ持ちなんですが―――それは秘密でお願いします」

 俺は頷いた。

 『ユニークスキル』 『特殊魔法』 『特殊職業』 『チート武器』

 これらの異形とも言える力を得た人間はカルマのようなモノを背負うと言われている。
 単純に、強すぎる力はハブられるという事なのだろう。
 それを理由に能力を隠したがる人間は、多くいる。

 「僕は、そのスキルのおかげで、ミッさんが『転生冒険者』だと分かったので、最初は勧誘目的だったのです」
 「勧誘?俺を?」
 「はい、ミッさんとマリアさん。もし、よろしければ、我がシーラ女王の軍団レギオンへの入団を考えてくれませんか?」

 俺は予想外の誘いに驚いた。それは、マリアも同じだったらしく―――

 「え?私もですか?でも、私の力量をマイクロフトさんは知らないのでは?」
 「いえ、あの誉れ高い聖騎士の一員だったマリアさんなら文句の付けどころはありません。我が女王クイーンもマリアさんを高く評価されておられました」

 「……でも」とマリアは助けを求めるように俺に視線を送ってくる。
 何か言うべきだろう。しかし、何を言えば良いのか、考えがまとまらない。
 すると―――

 「いえ、今に決断を迫るつもりはいささかもありません。マリアさんとミッさんには、我が女王クイーンから屋敷への招待状が届く予定になっています。その時、女王の話を聞いてから、判断してください」

 深々と頭を下げるマイクに俺は何も言えなかった。
 それはマリアも同じようだった。


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